昏睡および意識障害の概要

執筆者:Kenneth Maiese, MD, Rutgers University
レビュー/改訂 2020年 9月
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昏睡(coma)とは,覚醒させることができず,閉眼した状態が続く無反応状態である。意識障害(impaired consciousness)は,同様であるが比較的軽度の意識低下を指し,そのような意識低下は昏睡とはみなされない。昏睡または意識障害の機序には,両側大脳半球または網様体賦活系(上行性覚醒系とも呼ばれる)の機能障害が関わっている。原因は器質性のこともあれば,非器質性(例,中毒または代謝障害)のこともある。障害部位は局所性の場合とびまん性の場合がある。診断は臨床的に行い,原因の同定には臨床検査および脳画像検査が必要である。治療は,迅速な安定化と原因に応じた管理である。長期の昏睡には,補助的治療として,他動的関節可動域訓練,経腸栄養法,褥瘡予防などを行う。

意識レベルの低下,意識障害,または意識変容は,外的刺激に対する反応性の低下を意味する。重度の障害としては以下のものがある:

  • 昏睡(coma):覚醒させることができず,閉眼したままで,いかなる刺激を加えても開眼がみられない。

  • 昏迷(stupor):強い物理的刺激を加えることでのみ覚醒させることができる。

より軽度の意識レベルの低下は,しばしば嗜眠(lethargy)と呼ばれ,比較的重度のものは昏蒙(obtundation)と呼ばれる。しかしながら,より軽度の意識障害の鑑別はしばしば不正確であり,呼称よりも正確な臨床像を記載することの方が重要である(例,「最大レベルの反応は爪床圧迫に対して部分的に四肢を引くことである」)。

せん妄(delirium)は,認知機能障害(注意,認識,および意識レベル)がより変動するという点で異なるほか,せん妄は通常は可逆的である。せん妄患者では,注意および認知機能が正常な期間と注意および認知機能が障害された期間が交互に現れることがある。

病態生理

覚醒状態を保つには,大脳半球の正常機能と網様体賦活系(RAS―上行性覚醒系とも呼ばれ,橋上部,中脳,および後部間脳に分布する神経核と連絡線維から構成される広範なネットワーク)の維持を必要とする。したがって,意識障害の機序には,両側大脳半球またはRASの機能障害が関与しているはずである。

意識障害が生じるには,脳機能障害は両側性である必要があり,片側大脳半球の障害のみでは,重度の神経脱落症状を引き起こす可能性はあるものの,意識障害を引き起こすには不十分である。しかしながら,まれに,片側大脳半球の大きな局所病変(例,左中大脳動脈由来の脳卒中)でも,対側半球がすでに障害されている場合,または対側半球が圧迫(例,浮腫による)された場合には,意識障害を起こすことがある。

通常,RASの機能障害は,中毒や代謝障害のように,びまん性に影響が生じる疾患に起因する(例,低血糖,低酸素症,尿毒症,薬剤の過量投与)。RASの機能障害はまた,局所的虚血(例,一部の上部脳幹梗塞),出血,または直接的な物理的損傷によって生じることもある。

頭蓋内圧を上昇させるあらゆる疾患は,脳灌流圧を低下させて,続発性脳虚血を生じる可能性がある。続発性脳虚血はRASまたは両側大脳半球を侵すことで,意識障害を引き起こす可能性がある。

脳損傷が広範囲に及ぶと,脳ヘルニア脳ヘルニアの図とヘルニアの影響の表も参照)により以下の変化が起きるために神経機能が悪化する:

  • 脳組織が直接圧迫される

  • 脳の各領域への血液供給が遮断される

  • 頭蓋内圧が上昇する

  • 脳室系の閉塞により水頭症が生じることがある

  • 結果として神経および血管細胞の機能障害が起きる

頭蓋内圧の上昇が神経および血管細胞に直接及ぼす影響に加えて,細胞のアポトーシスおよびオートファジー経路(プログラム細胞死または細胞破壊の形態)が活性化される可能性がある。アポトーシスには初期段階と後期段階があり,最終的には細胞内のデオキシリボ核酸(DNA)の破壊へと至る。オートファジーでは,機能していない細胞内小器官を除去しようとする過程で,細胞質の構成成分が再利用される(1)。

意識障害が進行すると,昏睡,やがては脳死に至ることがある。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Maiese K, Chong ZZ, Shang YC, Wang S: Targeting disease through novel pathways of apoptosis and autophagy.Expert Opin Ther Targets 16 (12):1203–1214, 2012.doi: 10.1517/14728222.2012.719499.Epub 2012 Aug 27.

病因

昏睡または意識障害は,器質的疾患によることもあれば,非器質的疾患によることもあり,前者は典型的には局所性損傷を引き起こすのに対し,後者はびまん性損傷を引き起こす(昏睡または意識障害の一般的な原因の表を参照)。

加齢は意識障害のリスクを高める(老年医学的重要事項:昏睡および意識障害を参照)。

表&コラム

精神障害(例,心因性無反応)は意識障害に類似することがあるが,随意的であり,真の意識障害とは神経学的診察で鑑別可能である。

症状と徴候

意識低下のレベルは様々である。刺激を繰り返しても患者は短時間しか覚醒しないか,全く覚醒しない。

原因に応じて,その他の症状を呈する(病変の部位に応じた所見の表を参照):

  • 眼の異常:瞳孔散大,針穴瞳孔,または瞳孔不同を認めることがある。一側または両側の瞳孔が正中位で固定することがある。眼球運動は非共同性のこともあれば,認めないことも(動眼神経麻痺),異常なパターン(例,ocular bobbing[眼球浮き運動],ocular dipping,眼球クローヌス)を呈することもある。同名半盲を認めることがある。その他の異常には,視覚的威嚇(ほぼ眼にかするもの)に対する瞬目反射の消失,頭位変換眼球反射の消失(眼球が頭の回転に応じて回転しない),前庭眼反射(眼球が温刺激に反応して動かない),角膜反射の消失などがある。

  • 自律神経機能障害:呼吸パターンの異常(チェーン-ストークス呼吸またはビオー呼吸)を認めることがあり,ときに高血圧および徐脈を伴う(クッシング反射)。突然の呼吸停止または心停止が起こることがある。しかしながら,意識障害の原因が重症感染症,重度の脱水,大量失血,または心停止であれば,低血圧を来すことがある。

  • 運動機能障害:運動の異常には,筋弛緩,不全片麻痺,羽ばたき振戦,多焦点性ミオクローヌス,除皮質硬直(肘関節を屈曲,肩関節を内転,下肢を伸展させる),除脳硬直(四肢を伸展,肩関節を内旋させる)などがある。

  • その他の症状:脳幹が障害されれば,悪心,嘔吐,髄膜症,後頭部痛,運動失調,および悪化する傾眠が起こりうる。

表&コラム

診断

  • 病歴

  • 一般身体診察

  • 神経学的診察,眼科診察を含む

  • 臨床検査(例,パルスオキシメトリー,ベッドサイド血糖測定,血液および尿検査)

  • 直ちに脳画像検査

  • ときに頭蓋内圧の測定

  • 診断が不明確な場合は,腰椎穿刺または脳波検査

刺激を繰り返しても短時間しか覚醒しないか全く覚醒しない場合は,意識障害と診断する。刺激により原始反射運動(例,除脳または除皮質硬直)が誘発される場合は,意識障害が昏睡へ進行している可能性がある。

診断と初期の安定化(気道,呼吸,および循環)を同時に行うべきである。体温を測定して低体温または高体温がないか確認し,いずれかがあれば,直ちに治療を開始する。血糖値をベッドサイドで測定しなければならず,低血糖があれば,これも直ちに是正すべきである。外傷であれば,頸部を固定して,病歴聴取,身体診察,または画像検査で不安定外傷と頸椎損傷を除外できるまで動かさない。

病歴

医療情報を記したブレスレットや財布または鞄の中身(例,病院のIDカード,薬剤)が原因の手がかりとなることがある。近親者,救急隊員,警察官,および目撃者に,患者が発見された状況を尋ねるべきであり,また食べ物,アルコール,薬剤,または毒物が入っていた可能性のある容器を調べて,内容物の同定(例,薬物同定のためpoison centerに相談する)および化学的分析のために保管しておくべきである。

近親者には以下の項目に関する問診を行うべきである:

  • 症状の発現と経過(例,痙攣発作,頭痛,嘔吐,頭部外傷,または薬物摂取はあったか,症状の出現の早さ,経過は進行性か増悪と軽快を繰り返しているか)

  • ベースラインの精神状態

  • 最近の感染または感染曝露の可能性

  • 最近の旅行

  • 普段と異なる食事

  • 精神医学的な問題や症状

  • 処方薬の使用歴

  • アルコールおよびその他のレクリエーショナルドラッグ(例,麻酔薬,刺激薬,中枢抑制薬)の使用

  • 新たに発症した心不全,不整脈,呼吸器疾患,感染症,代謝性疾患,肝疾患,腎疾患などの全身疾患の既往歴または現病歴

  • 患者が最後に正常であった時期

  • 原因の可能性について思い当たること(例,明らかになっていない過剰摂取や最近の中毒による頭部外傷の可能性)

入手可能であれば,医療記録を参照すべきである。

一般身体診察

身体診察は焦点を絞って効率的に行うべきであり,頭部および顔面,皮膚,ならびに四肢の徹底的な診察を含めるべきである。

頭部外傷の徴候には,眼窩周囲斑状出血(パンダの目徴候),耳介後部の斑状出血(Battle徴候),鼓室内出血,上顎不安定,鼻および耳への髄液漏などがある。頭皮の挫傷や小さな銃創は,注意深く頭部を視診しなければ見逃す可能性がある。

不安定外傷および頸椎損傷が除外されれば,他動的に頸部を屈曲させる;その際の硬直は,くも膜下出血または髄膜炎を示唆する。

所見から原因が示唆されることがある:

  • 低体温:環境性曝露,溺水,鎮静薬の過剰摂取,重度の甲状腺機能低下症,ウェルニッケ脳症,または高齢者では敗血症

  • 高体温:熱中症,感染症,刺激薬の過剰摂取,または神経遮断薬による悪性症候群

  • 発熱,点状出血もしくは紫斑,低血圧,または重症四肢感染症(例,1趾または複数趾の壊疽):敗血症または中枢神経系感染症

  • 針痕:薬剤の過量投与(例,オピオイドまたはインスリン)

  • 舌の咬傷:痙攣

  • 口臭:アルコール,その他の薬物中毒,または糖尿病性ケトアシドーシス

  • 低血圧または脈拍の異常:血流低下を伴う心機能不全

神経学的診察

神経学的診察により,脳幹が正常かどうかと,病変が中枢神経系内にあるかどうかを明らかにする。以下の項目に焦点を置いて評価する:

  • 意識レベル

  • 運動機能

  • 深部腱反射

意識レベルの評価では,まず言語による指示,続いて非侵害刺激,最終的には侵害刺激(例,眼窩上隆起,爪床,または胸骨の圧迫)を用いて患者の覚醒を試みる。

グラスゴーコーマスケール(グラスゴーコーマスケールの表を参照)は頭部外傷患者の評価用に開発されたものである。頭部外傷では,この尺度により割り当てられるスコアが予後予測に有用である。無反応状態の重症度に対する比較的信頼性の高い客観的な測定指標であるため,あらゆる原因による昏睡または意識障害に対して用いられており,モニタリングのために継続的に使用することができる。この尺度は刺激に対する反応に基づいて採点される。

侵害刺激に対して開眼,しかめ面,意図的に四肢を引くという反応は,意識障害の深度が比較的浅いことを示唆する。疼痛に対する運動反応の非対称性および深部腱反射の非対称性は,局所的な大脳半球病変を示唆している可能性がある。

表&コラム

意識障害が昏睡へ進行していくと,侵害刺激で常同的な姿勢反射が誘発されるようになる。

  • 除皮質硬直は,器質的疾患または代謝性疾患でみられることがあり,上部脳幹(例,赤核脊髄路)の運動中枢が温存された大脳半球の障害を示唆する。

  • 除脳硬直は,屈曲を促進する上部脳幹の運動中枢が器質的損傷を受けたこと,ならびに伸展を促進する下部脳幹中枢(例,前庭脊髄路,網様体路)のみが感覚刺激に反応していることを意味する。

頻度は低くなるが,除脳硬直は低酸素性脳症などのびまん性疾患でも起こりうる。

運動を伴わない筋弛緩は,脊髄に損傷があるか否かにかかわらず,下部脳幹が運動に影響を与えていないことを意味する。これは考えられる中で最悪の運動反応である。

羽ばたき振戦および多焦点性ミオクローヌスは,尿毒症,肝性脳症,薬物毒性などの代謝性疾患を示唆する。

心因性無反応では,典型的には自発的運動反応がないものの,筋緊張および深部腱反射が正常で,全ての脳幹反射が保たれていることで鑑別できる。バイタルサインには通常異常はない。

眼科診察

以下の項目を評価する:

  • 瞳孔反射

  • 外眼筋運動

  • 眼底

  • その他の神経眼反射

瞳孔反射外眼筋運動から脳幹機能に関する情報が得られる(瞳孔反応および眼球運動の解釈の表を参照)。器質的病変では,通常一側または両側の瞳孔が初期に固定するが,昏睡の原因がびまん性代謝性疾患(中毒・代謝性脳症と呼ばれる)である場合は,瞳孔反応は遅延するものの,しばしば後期まで保たれる。一側の瞳孔散大では,瞳孔不同のその他の原因を考慮すべきであり,具体的には過去の眼外傷,特定の頭痛,スコポラミンパッチの使用(薬剤が眼に接触する場合)などが考えられる。

表&コラム

眼底を検査すべきである。乳頭浮腫により頭蓋内圧の上昇が示唆されることがあるが,出現するまでに数時間かかることもある。頭蓋内圧の上昇は,網膜静脈の拍動消失,視神経乳頭の充血,毛細血管の拡張,乳頭内縁の不明瞭化や,ときに出血など,より早期から眼底変化を引き起こす可能性がある。硝子体下出血は,くも膜下出血を示す可能性がある。

反応のない患者では,人形の目現象を利用して頭位変換眼球反射を検査する:患者の頭部を他動的に左右に回旋または屈曲・伸展させながら,両眼を観察する。頸椎の不安定性が疑われる場合は,この手技を試みてはならない。

  • 反射があれば,この手技により眼球が頭部の回旋,屈曲,または伸展の向きとは逆方向に動き,脳幹の前庭眼反射の経路が保たれていることを意味する。このため,仰臥位の患者では,頭をどの向きに動かしても眼はまっすぐ天井を向き続ける。

  • 反射が欠如していれば,眼が動かないため,頭を動かした向きに視線がついてゆき,前庭眼反射の経路が障害されていることがわかる。心因性無反応の患者の多くでもこの反射がみられないが,これは患者が意識的に視線を固定しているためである。

意識がなく,頭位変換眼球反射が欠如しているか頸部を固定している場合は,前庭眼反射の検査(冷水による温度刺激検査)を行う。鼓膜に異常がないことを確認後,患者の頭を30°挙上させ,軟性カテーテルに接続した注射器を使って50mLの氷水を30秒間かけて外耳道に注入する。

  • 両側の眼球が水を注入した耳の方へ向けば,脳幹反射は正常に機能しており,軽度の意識障害を示唆する。

  • それに加えて水を注入した耳から遠ざかる向きへの眼振がみられれば,患者は意識があり,心因性無反応の可能性が高くなる。意識のある患者では,しばしば冷水1mLで十分眼球偏位および眼振を引き起こすことができる。そのため,心因性無反応が疑われる場合,用いる水を少量にする(または温度刺激検査自体を行わない)べきであり,というのも意識のある患者では冷水による温度刺激検査により重度の回転性めまい,悪心,および嘔吐が生じる恐れがあるためである。

  • 水を注入後,眼球が動かない,または眼球運動が非共同性である場合,脳幹の機能が疑わしく,昏睡がより深い。予後はより不良である可能性がある。

パール&ピットフォール

  • 筋緊張,深部腱反射,および人形の目現象が正常な場合は,心因性無反応を疑う。

眼球異常とその他の所見の特定の組合せは,脳ヘルニアを示唆している場合がある(脳ヘルニアの図と脳ヘルニアの影響の表も参照)。

呼吸パターン

緊急気道確保が必要である場合を除いて,自発呼吸の回数およびパターンを記録すべきである。この記録が原因を示唆することがある。

  • 周期的な呼吸サイクル(チェーン-ストークス呼吸またはビオー呼吸)から両側大脳半球または間脳の機能障害が示唆されることがある。

  • 呼吸数25/分を超える過換気(中枢神経性過換気)は,中脳または橋上部の機能障害を示す可能性がある。

  • 完全吸気の後約3秒間の呼吸停止を伴う吸気性あえぎ(持続性吸息呼吸)は,典型的には橋または延髄の病変を示す;この型の呼吸はしばしば呼吸停止に至る。

検査

初期には,パルスオキシメトリー,指先採血による血糖値測定,および心臓のモニタリングを行う。

血液検査では,包括的な生化学検査(最低でも血清電解質,血中尿素窒素[BUN],クレアチニン,およびカルシウムを含む),白血球分画および血小板数を含む血算,肝機能検査,およびアンモニア値を測定すべきである。

動脈血ガス検査を行い,一酸化炭素中毒が疑われれば,一酸化炭素ヘモグロビン値を測定する。

血液および尿を採取して培養およびルーチンの薬毒物スクリーニング検査を行うべきであり,血清エタノール濃度も測定する。臨床的な疑いに応じて,その他の薬毒物スクリーニングパネルと追加の中毒検査(例,血清中薬物濃度)を行う。

心筋梗塞や新たな不整脈がないか確認するために心電図検査(12誘導)も行う。

脳の酸素化に影響を及ぼす新たな肺疾患がないか確認するために,胸部X線検査を行うべきである。

原因がすぐに明らかにならなければ,頭部単純CTを可及的速やかに施行し,腫瘤性病変,出血,浮腫,頭部外傷の証拠,および水頭症がないか確認すべきである。初期は,脳出血を除外するのに造影CTよりも単純CTが望ましい。MRIがすぐに使用できれば代わりに使用してもよいが,新世代のCTほど迅速ではなく,また頭部骨損傷(例,頭蓋骨骨折)に対する感度もより低い可能性がある。単純CTで診断がつかない場合は,MRIまたは造影CTを行う;等吸収の硬膜下血腫,多発転移,矢状静脈洞血栓,ヘルペス脳炎,または単純CTで見逃されたその他の原因を検出できる可能性がある。

頭部単純CT
硬膜外出血(CT冠状断像)
硬膜外出血(CT冠状断像)
縫合線を越える進展のない典型的なレンズ形の高吸収域。

© 2017 Elliot K.Fishman, MD.

硬膜外出血(CT水平断像)
硬膜外出血(CT水平断像)
縫合線を越える進展のない典型的なレンズ形の高吸収域。

© 2017 Elliot K.Fishman, MD.

硬膜下出血(CT)
硬膜下出血(CT)
縫合線を越えて進展している古典的な三日月形の高吸収域。

© 2017 Elliot K.Fishman, MD.

大脳鎌下ヘルニア
大脳鎌下ヘルニア
大脳鎌下ヘルニアは,最も頻度の高い脳ヘルニアの一種である。この画像では,左脳が大脳鎌の自由縁下に脱出しており(矢印),これは中大脳動脈の梗塞に起因する出血により脳内圧が上昇したことによる。

© 2017 Elliot K.Fishman, MD.

MRIまたはCTとその他の検査を行った後も昏睡の原因が不明の場合は,腰椎穿刺を行い,初圧を確認し,感染症,くも膜下出血,その他の異常を除外する。しかしながら,まずはMRIまたはCT画像を見直し,頭蓋内腫瘤,閉塞性水頭症,および髄液流または脳室系を閉塞して頭蓋内圧を有意に亢進させうるその他の異常がないか確認すべきである。そのような異常があれば,腰椎穿刺は禁忌である。頭蓋内圧が亢進した患者では,腰椎穿刺などによって髄液圧が突然低下すると,脳ヘルニアを誘発する恐れがあるが,このような転帰はまれである。

髄液検査には,細胞数および細胞分画,タンパク質,糖,グラム染色,培養,ならびにときに臨床的疑いに応じた特異的検査(例,クリプトコッカス抗原検査,細胞診,腫瘍マーカーの測定,VDRL[Venereal Disease Research Laboratory]試験,単純ヘルペスに対するPCR[ポリメラーゼ連鎖反応]検査,肉眼または分光測定による分析でキサントクロミーの有無を確認する)を含める。

頭蓋内圧の上昇が疑われる場合,髄液圧を測定する。頭蓋内圧が上昇している場合は,頭蓋内圧のモニタリングを継続的に行い,頭蓋内圧を下げる対策を行う。

てんかん発作が昏睡の原因である可能性がある場合,特に非痙攣性てんかん重積状態(顕著な運動症状を伴わない繰り返す発作)が考慮されている場合,または確実な診断に至らない場合は,脳波検査を行うことがある。ほとんどの昏睡患者において,脳波検査では,非特異的であるが中毒・代謝性脳症でしばしばみられる徐波化と振幅低下を認める。非痙攣性てんかん重積状態の患者では,脳波に棘波,鋭波,または棘徐波複合を認めることがある。心因性無反応または行動障害に起因する発作活動(偽発作)の可能性がある場合は,ビデオ脳波モニタリングが必要となる。

最近の旅行歴があれば,旅行先によっては,昏睡につながりうる細菌,ウイルス,および寄生虫感染症の検査を速やかに行うべきである。

脳幹機能を評価するための聴性脳幹誘発電位や,皮質,視床,脳幹,および脊髄路を評価するための体性感覚誘発電位などの誘発電位を検討できる(例,心停止後)。

予後

意識障害のある患者の予後は意識障害の原因,持続期間,および深度に依存する。例えば,心停止後の脳幹反射の消失は予後不良を示すが,鎮静物質の過剰摂取後の同所見は常に予後不良を示すとは限らない。一般に,無反応の持続時間が6時間未満であれば,予後はより良好である。

昏睡後に以下の徴候がみられる場合は,予後良好と考えられる:

  • 早期の発話の回復(理解不能の場合も含む)

  • 物体を追視できる自発的眼球運動

  • 正常な安静時筋緊張

  • 指示に従うことができる

原因が可逆的な障害(例,鎮静薬の過量投与,尿毒症などの代謝性疾患)であれば,全ての脳幹反射と全ての運動反応が消失することがあるが,それでも患者は完全に回復しうる。外傷後にグラスゴーコーマスケール(Glasgow Coma Scale)が3~5点と判定された場合は,致死的な脳損傷が示唆され,特に瞳孔が固定しているか前庭眼反射がみられない場合には,その可能性が高くなる。

心停止後は,昏睡の主要な交絡因子(鎮静薬,神経筋接合部遮断薬,低体温症,代謝性障害,重度の肝不全または腎不全など)を除外しなければならない。脳幹反射が1日目から認められないか,それ以降に消失すれば,脳死判定の適応となる。以下の所見を1つでも認める場合は予後不良である:

  • 心停止後24~48時間以内のミオクローヌスてんかん重積状態(両側性かつ同期性の体軸のねじれ,しばしば開眼状態で眼球の上方偏位を伴う)

  • 心停止後24~72時間経過後の対光反射消失

  • 心停止後72時間経過後の角膜反射消失

  • 心停止72時間経過後の伸展肢位または疼痛刺激に対する反応欠如

  • 体性感覚誘発電位(SEP)の刺激後20msecの反応欠如(N20)

  • 血清神経特異エノラーゼ値 > 33µg/L

  • 冠動脈疾患,高血圧,糖尿病などの既存の疾患

患者が低体温療法を受けている場合は,低体温により回復が遅れるため,上記の時間にそれぞれ72時間を加算すべきである。上記の基準をいずれかでも満たす場合は,通常は予後不良であるが,常にそうとは限らないため,救命処置を中止するかどうかの決断が困難となりうる。

意識障害の原因および持続時間に応じて,その他の神経系合併症や神経系以外の合併症がある可能性もある。例えば,代謝性昏睡を生じる薬剤または疾患は,低血圧,不整脈,心筋梗塞,または肺水腫も引き起こしうる。長期のICU管理も多発神経障害,ミオパチー,その他の合併症(例,肺塞栓,褥瘡,尿路感染症)の発生につながる可能性がある。

治療

  • 迅速な状態の安定化(気道,呼吸,循環,すなわちABC)

  • 集中治療室(ICU)への入室

  • 支持療法,必要な場合は頭蓋内圧のコントロールなど

  • 基礎疾患の治療

気道,呼吸,および循環は直ちに確保しなければならない。低血圧は是正しなければならない。意識障害のある患者は,呼吸器および神経系の状態をモニタリングできるよう,ICUに入室させる。高血圧がある場合は血圧を慎重に下げる必要があり,患者の普段の水準を超えて低下させると,脳虚血に至る可能性がある。

昏睡患者の一部は低栄養状態にあり,ウェルニッケ脳症が生じやすいため,チアミン100mgを静注または筋注でルーチンに投与すべきである。血漿血糖値が低ければ,50%ブドウ糖を静注で50mL投与すべきであるが,この処置は必ずチアミンを投与した後に行う。

外傷であれば,CTで頸椎損傷が除外されるまで頸部を固定しておく。頭部外傷後の昏迷または昏睡がある患者の一部では,神経細胞の機能を改善しうる薬剤(例,アマンタジン)による治療が有益である。このような治療は神経学的反応の改善をもたらし,その効果は薬剤を使用し続ける限り持続する。しかしながら,このような治療を行っても長期的な改善に差がみられない可能性はある。

オピオイド過剰摂取が疑われる場合,ナロキソン2mgを静注で投与し,必要に応じて繰り返す。

最近(約1時間以内)の薬剤過量投与の可能性があれば,気管挿管後に太い経口胃管(例,32Fr以上)による胃洗浄を行うことできる。必要に応じ経口胃管を介して活性炭を投与することがある。

併存する疾患および異常は必要に応じて治療する。例えば,代謝異常は是正する。深部体温の是正が必要になる場合がある(例,重度の高体温では冷却する,低体温では温める)。

気管挿管

以下のいずれかに当てはまる患者では,誤嚥の予防および十分な換気の確保のため気管挿管を要する:

  • 不十分な,浅い,または狭窄を伴う呼吸

  • 酸素飽和度が低い(パルスオキシメトリーまたは動脈血ガス測定による)

  • 気道反射障害

  • 重度の無反応状態(グラスゴーコーマスケールが8点以下の患者の大半を含む)

頭蓋内圧の上昇が疑われる場合には,経鼻気管挿管よりも迅速導入経口気管挿管(筋弛緩薬を使用する)を行うべきであり,自発呼吸のある患者で経鼻気管挿管を行うと,さらなる咳嗽や咽頭反射を誘発して,頭蓋内の異常によりすでに上昇している頭蓋内圧をさらに亢進させることになる。

気道操作を行う際には,起こりうる頭蓋内圧亢進を最小限にとどめるため,一部の臨床医は筋弛緩薬の投与前にリドカイン1.5mg/kgを1~2分かけて静注することを推奨している。筋弛緩薬を投与する前に患者に鎮静をかける。エトミデート(etomidate)は,血圧に与える影響が最小限であるため,低血圧または外傷患者に適している;静注での用量は成人で0.3mg/kg(または平均的な体格の成人では20mg),小児で0.2~0.3mg/kgである。あるいは,低血圧が認められずその可能性も低く,プロポフォールが容易に入手できる場合は,プロポフォール0.2~1.5mg/kgを使用することもある。

典型的には,筋弛緩薬としてスキサメトニウム1.5mg/kgまたはロクロニウム1mg/kgを静注で投与する。筋弛緩薬の投与は,挿管に必要と考えられ,さらなる頭蓋内圧の上昇を回避するのに必要な場合にのみ行うべきである。そうでない場合は,まれにスキサメトニウムなどの薬剤が悪性高熱症を引き起こしたり,神経学的な所見や変化を覆い隠してしまったりする可能性があるため,筋弛緩薬の使用は避けるべきである。

パルスオキシメトリーと動脈血ガス分析(可能であれば呼気終末CO2)により,酸素化および換気が十分であるかを評価すべきである。

頭蓋内圧のコントロール

頭蓋内圧が亢進している場合は,頭蓋内圧および脳灌流圧をモニタリングし,コントロールすべきである。目標は,頭蓋内圧を20mmHg以下,脳灌流圧を50~70mmHgに維持することである。頭蓋内圧は通常,小児の方が成人よりも低い。新生児では,頭蓋内圧が大気圧を下回る可能性がある。そのため,小児は成人のガイドラインとは別個に評価される。

上昇した頭蓋内圧をコントロールするには,いくつかの戦略がある:

  • 鎮静薬:頭蓋内圧を亢進させうる興奮,過剰な筋の活動(例,せん妄による),または疼痛をコントロールするために,鎮静薬を要することがある。作用の発現が早く持続時間も短いことから,成人には(小児では禁忌)しばしばプロポフォールが使用される;用量は0.3mg/kg/時で持続静注し,必要に応じて3mg/kg/時まで漸増する。初回ボーラス投与は行わない。最も頻度の高い有害作用は低血圧である。高用量で長期使用すると膵炎を引き起こす可能性がある。ベンゾジアゼピン系薬剤(例,ミダゾラム,ロラゼパム)も使用できる。鎮静薬は神経学的所見および変化を覆い隠す可能性があるため,使用は最低限にとどめ,可能であれば常に避けるべきである。抗精神病薬は回復を遅らせることがあるため,可能であれば避けるべきである。興奮および低酸素症によるせん妄の治療には鎮静薬は使用せず,代わりに酸素を投与する。

  • 過換気:過換気は低炭酸ガス血症を引き起こし,その結果,血管収縮による全体的な脳血流量の減少を招く。PCO2を40mmHgから30mmHgに下げることで,頭蓋内圧を約30%低下させることができる。PCO2を28~33mmHgに下げる過換気は,約30分間のみ頭蓋内圧を低下させるため,他の治療の効果が出るまでの一時的処置としてこれを用いる医師もいる。25mmHg未満への積極的な過換気は,脳血流を過度に減少させて脳虚血を招く可能性があるため,避けるべきである。上昇した頭蓋内圧をコントロールするための他の対策を講じてもよい。

  • 補液:等張液が用いられる。静注で液体(例,5%ブドウ糖,0.45%食塩水)を投与すると,自由水が供給され,脳浮腫を悪化させる可能性があるため,避けるべきである。補液はある程度制限されることがあるが,患者の循環血液量は正常に保つべきである。脱水または体液過剰の徴候がなければ,生理食塩水による輸液を50~75mL/時から開始できる。血清ナトリウム,浸透圧,尿量,および体液貯留の徴候(例,浮腫)に応じて,投与速度を増減させることができる。

  • 利尿薬:血清浸透圧は295~320mOsm/kgに保つべきである。頭蓋内圧を下げ,血清浸透圧を保つために,浸透圧利尿薬(例,マンニトール)を静注することがある。これらの薬剤は血液脳関門を通過しない。浸透圧勾配を介して脳組織から血漿中に水を引き込み,最終的には均衡に導く。これらの薬剤の有効性は数時間後には減弱する。そのため,これらの薬剤は状態が悪化している患者(例,急性脳ヘルニアの患者)を対象とするか,血腫のある患者に対して手術前に使用すべきである。20%マンニトール溶液0.5~1g/kg(2.5~5mL/kg)を静注で15~30分かけて投与したその後,必要に応じて(通常は6~8時間毎に)0.25~0.5g/kg(1.25~2.5mL/kg)を投与する。マンニトールは血管内容量を急速に増大させるため,重度の冠動脈疾患,心不全,腎機能不全,または肺血管にうっ血のある患者における使用には注意が必要である。浸透圧利尿薬は腎臓での水の排泄量をナトリウムに比して増加させるため,マンニトールを長期間使用すると,脱水と高ナトリウム血症を来す可能性がある。フロセミド1mg/kgの静注でも体内総水分量を減少させることができ,特にマンニトール投与に伴う一過性の循環血液量増加を回避する必要がある場合に役立つ。浸透圧利尿薬を使用する間は,水・電解質バランスを注意深くモニタリングすべきである。頭蓋内圧をコントロールできる可能性のある別の浸透圧物質として,3%食塩水がある。

  • 血圧のコントロール:降圧薬の全身投与を要するのは,高血圧が重症(> 180/95mmHg)である場合のみである。血圧をどれだけ下げるかは,臨床状況に依存する。たとえ頭蓋内圧が亢進していても,全身の血圧は脳灌流圧を維持するのに十分な高さを保つ必要がある。高血圧はニカルジピンの点滴静注(5mg/時,5分毎に2.5mgずつ,最大15mg/時まで増量する)またはラベタロールの急速静注(1~2分かけて10mgを静注,10分毎に最大150mgまで繰り返す)により管理することができる。

  • コルチコステロイド:コルチコステロイドは血管原性脳浮腫の治療に有用である。血管原性浮腫は血液脳関門の破綻により生じ,脳腫瘍患者で発生することがある。細胞障害性浮腫は細胞死と細胞の崩壊により生じ,脳卒中,脳出血,または外傷の患者で発生することがあるほか,心停止に起因する低酸素による脳損傷後に発生することもある。コルチコステロイドによる治療は,基本的に腫瘍にのみ効果を示すが,血管原性浮腫が存在する場合には脳膿瘍に効果を示すこともある。コルチコステロイドは細胞障害性浮腫には無効であり,血漿血糖値を上昇させることで,脳虚血を悪化させ,糖尿病管理をより困難にする可能性がある。脳虚血がない患者には,デキサメタゾン20~100mgの初回投与後,4mgを1日1回投与することで,有害作用を最低限に抑えつつ効果が得られるようである。デキサメタゾンは静注と経口で投与できる。

  • 髄液の除去:上昇した頭蓋内圧を下げるため,脳室に挿入したシャントを介して髄液を緩徐に除去することができる。髄液は1~2mL/分の速度で2~3分にわたり除去する。髄液の持続的な排液(例,腰椎ドレーン[lumbar drain]を介して)は,脳ヘルニアを引き起こす可能性があるため,避けるべきである。

  • 体位:頭部からの静脈流出が最大になる体位にすることが,頭蓋内圧の上昇を最小限に抑えるのに役立つ可能性がある。脳灌流圧が望ましい範囲に維持されている場合に限り,ベッドの頭側を30°挙上させることができる(頭を心臓より上に置く)。患者の頭部は正中位に保ち,頸部の回旋および屈曲は最小限に抑えるべきである。気管吸引は頭蓋内圧を上昇させる可能性があるため,制限すべきである。

頭蓋内圧をコントロールするための他の対策にもかかわらず,頭蓋内圧が上昇し続ける場合は,以下の手段を用いてもよい:

  • 低体温療法(titrated hypothermia):頭部外傷または心停止の後に頭蓋内圧亢進がみられた場合には,頭蓋内圧を20mmHg未満に低下させるために体温を32~35°Cにする低体温療法が用いられてきた。しかしながら,頭蓋内圧を下げるための低体温療法については議論があり,この治療では成人・小児を問わず頭蓋内圧を効果的に低下させることはできず,一方で悪影響をもたらす可能性があることを示唆するエビデンスもある(1)。

  • ペントバルビタールによる昏睡:ペントバルビタールは脳血流および代謝要求を減少させる。しかしながら,臨床アウトカムに対する影響が常に有益なものとは限らず,一方で合併症(例,低血圧)の発生につながる可能性があるため,その使用については議論がある。標準の過換気療法および高浸透圧療法に反応しない一部の難治性頭蓋内圧亢進症の患者では,ペントバルビタールが機能予後を改善する可能性がある。ペントバルビタール10mg/kgを30分かけて静注後,5mg/kg/時を3時間,その後は1mg/kg/時で投与することにより,昏睡を誘導する。脳波活動のバーストを抑えるために,用量を調節し,脳波を継続的にモニタリングする。低血圧はよくみられ,補液と必要に応じた昇圧薬により管理する。その他に可能性のある有害作用としては,不整脈,心筋抑制,グルタミン酸の取込みまたは放出障害などがある。

  • 減圧開頭術:腫大した脳にスペースを与えるため,硬膜形成術を併用する開頭術を行うことがある。この手技により死を回避できるが,総合的な機能的転帰はあまり改善せず,患者によっては水頭症などの合併症につながる可能性がある(2)。脳ヘルニアが切迫する大きな脳梗塞に最も有用となる可能性がある(特に50歳未満の患者)。

長期ケア

患者は細心の長期ケアを必要とする。刺激物,鎮静薬,およびオピオイドは避けるべきである。

経腸栄養を開始するとともに,誤嚥の予防策(例,ベッドの頭側の拳上)を講じる;必要に応じて経皮的内視鏡下に空腸瘻を造設する。

特に圧迫点における皮膚損傷の確認を含め,早期からスキンケアに絶えず注意を払うことが褥瘡の予防に必要である。褥瘡を予防するために,頻回の体位変換が必要である。褥瘡管理のために,ときに特殊なエアマットレスが必要になる。

眼球の乾燥を防ぐための軟膏の外用が有益である。

理学療法士による他動的関節可動域訓練,四肢のテーピングまたは動的な屈曲進展により拘縮を予防できる可能性がある。多発神経障害やミオパチーの患者では,理学療法の早期開始により機能的転帰を改善できる。

尿路感染症の予防策深部静脈血栓症の予防策も講じる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Moler FW, Silverstein FS, Holubkov R, et al: Therapeutic hypothermia after in-hospital cardiac arrest in children.N Engl J Med 376 (4):318-329, 2017.doi: 10.1056/NEJMoa1610493.

  2. 2.Su TM, Lan CM, Lee TH, et al: Risk factors for the development of posttraumatic hydrocephalus after unilateral decompressive craniectomy in patients with traumatic brain injury.J Clin Neurosci 63:62–67, 2019.doi: 10.1016/j.jocn.2019.02.006.Epub 2019 Mar 1.

老年医学的重要事項:昏睡および意識障害

高齢患者では,以下を含む多くの因子のために,昏睡,意識変容,せん妄が起きやすくなっている可能性がある:

  • 加齢に伴う脳への影響や既存の脳疾患による認知予備力の低下

  • ポリファーマシーに起因する,脳に影響を及ぼす薬物相互作用のリスク

  • 薬物代謝および薬物排泄に関わる臓器機能が加齢に伴い低下することに起因する,薬物の蓄積や脳への影響のリスク

  • 複雑な投与計画に伴うポリファーマシーに起因する,不適切な用量での薬剤使用のリスク

  • 併存疾患(例,糖尿病,高血圧,腎疾患など)の存在

高齢者では,脱水や尿路感染症といった比較的軽微な問題によって意識変容が生じる可能性がある。

高齢患者では,精神状態とコミュニケーション技能が障害される可能性があり,嗜眠や意識障害により認識がより難しくなる。

加齢に伴う認知予備力および神経可塑性の低下によって,脳損傷からの回復が妨げられる可能性がある。

要点

  • 昏睡および意識障害を生じるには,両側大脳半球または網様体賦活系のいずれかに機能障害が生じる必要がある。

  • 臨床像としては,眼球の異常(例,共同注視の異常,瞳孔反応,頭位変換眼球反射または前庭眼反射),バイタルサインの異常(例,呼吸異常),運動機能の異常(例,筋弛緩,不全片麻痺,羽ばたき振戦,多焦点性ミオクローヌス,除皮質硬直または除脳硬直)などがある。

  • 先行する出来事に関する情報を完全に聴取することが極めて重要であり,目撃者および近親者に,患者の精神状態の経時的変化と可能性のある原因(例,最近の旅行,普段と異なる食事,感染症への曝露の可能性,薬剤またはアルコール摂取,外傷の可能性)について尋ねる。

  • 頭部顔面,皮膚,および四肢の完全な診察を含む一般身体診察,ならびに完全な神経学的診察(意識レベル,眼,運動機能,および深部腱反射に焦点を当てる)を行い,続いて適切な血液検査および尿検査,薬毒物スクリーニング,ならびに指先採血での血糖値測定を行う。

  • 患者の状態を安定化させたら,直ちに単純CTを施行する。

  • 気道,呼吸,および循環を十分に確保する。

  • 血糖値が低ければ,静注または筋中によりチアミンを,静注によりグルコースを投与し,オピオイドの過量投与が疑われる場合はナロキソンを静注する。

  • 様々な手段により頭蓋内圧をコントロールし,興奮を抑えるための鎮静薬(必要に応じて),一時的な過換気,循環血液量を正常に保つための輸液および利尿薬,血圧を管理するための降圧薬などを用いる。

  • 原因を治療する。

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