爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症 爪真菌症 爪真菌症は爪甲,爪床,またはその両方に生じた真菌感染症である。典型的には,爪が変形し,白色または黄色に変色する。診断は病変の外観,KOH直接鏡検,培養,ポリメラーゼ連鎖反応検査,またはこれらの併用による。適応がある場合の治療は,テルビナフィンまたはイトラコナゾールの内服による。 ( 爪疾患の概要も参照のこと。) 人口の約10%(範囲2~14%)が爪真菌症に罹患している。 爪真菌症の危険因子としては以下のものがある:... さらに読む )。
爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む , 扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬は,そう痒を伴う再発性の炎症性発疹が生じる疾患で,平坦に隆起した多角形で紫色のはっきりした小丘疹を特徴とし,それらが融合して表面のざらざらした鱗屑を伴う局面を形成することがあり,しばしば口腔病変や性器病変を伴う。診断は通常臨床的に行い,皮膚生検で裏付けが得られる。一般に,治療にはコルチコステロイドの外用または病変内注射が必要となる。重症例では光線療法,またはコルチコステロイド,レチノイド,もしくは免疫抑制薬の全身投与が必要になる... さらに読む ,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。
爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とPAS(過ヨウ素酸シッフ)染色,培養,または最近ではポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による分析を行う場合も多い(1 総論の参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む , 2 総論の参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
真菌以外による異栄養症には,診断のために爪甲または爪母の組織生検が必要になる場合がある。爪異栄養症は原因の治療により消失する場合もあるが,消失しない場合は,ネイリストによる適切なトリミングと研磨によって爪変形を隠せる場合がある。
(爪疾患の概要 爪疾患の概要 爪には, 変形, 感染症, 爪囲炎, 陥入爪など,様々な疾患が生じる。爪の変化は,多くの全身性疾患および遺伝性症候群で生じ,また外傷により生じることがある。 爪の感染症の大半は真菌によるもの( 爪真菌症)であるが,細菌またはウイルス感染症も起こりうる(例, 緑色爪症候群[Pseudomonas],... さらに読む も参照のこと。)
総論の参考文献
1.Hafirassou AZ, Valero C, Gassem N, et al: Usefulness of techniques based on real time PCR for the identification of onychomycosis-causing species.Mycoses 60(10):638–644, 2017.doi: 10.1111/myc.12629.
2.Gupta AK, Nakrieko KA: Onychomycosis infections: Do polymerase chain reaction and culture reports agree?J Am Podiatr Med Assoc 107(4):280–286, 2017.doi: 10.7547/15-136.
先天性の爪変形
一部の先天性外胚葉異形成症では,爪が欠損する(無爪症)。先天性爪甲厚硬症では,爪床が肥厚して変色し,横方向に過度に弯曲する(巻き爪)。 爪膝蓋骨症候群 爪膝蓋骨症候群 爪膝蓋骨症候群は,骨,関節,指爪,趾爪,および腎の異常を特徴とする,間葉組織のまれな遺伝性疾患である。診断は臨床的に行う。特異的な治療法はないが,タンパク尿および高血圧に対してアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与することがあり,またときに腎移植が行われる。 爪膝蓋骨症候群は,脊椎動物の四肢および腎臓の発達に重要な役割を担う転写因子 さらに読む では,爪半月が三角形になり,母指の爪が部分的に欠損する。ダリエ病の患者では,爪に赤色および白色の線条と遠位部のV字状の切痕がみられることがある。
全身性疾患に合併する爪変形および爪異栄養症
プラマー-ビンソン症候群 食道ウェブ 食道ウェブは,食道内腔を横切るように成長した薄い粘膜であり,嚥下困難を引き起こすことがある。 ( 食道疾患および嚥下障害の概要も参照のこと。) この画像には,食道内腔を横切るように成長した薄い粘膜である食道ウェブが写っている。これは未治療の重症鉄欠乏性貧血患者でみられることがある。 ウェブはまれに未治療の重症 鉄欠乏性貧血患者に発生し,貧血を呈していない患者での発生はさらにまれである。ウェブは通常上部食道に発生し,固形物の... さらに読む (未治療の重度の鉄欠乏症により生じる食道ウェブ)では,50%の患者で匙状爪(スプーン状に陥凹した爪)がみられる。
黄色爪症候群は,成長が遅く肥厚して過度に弯曲した黄色の爪を特徴とする,まれな疾患である。この疾患は典型的には,四肢のリンパ浮腫や慢性呼吸器疾患がある患者に生じる。報告症例の約半数で慢性気管支感染症がみられる。
Half-and-half nail(Lindsay nail)は,通常は 腎不全 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 患者でみられ,爪甲の近位半分が白くなり,遠位半分はピンク色または赤褐色になる。Half-and-half nailは慢性腎臓病患者の20~50%に生じるが,この爪異常はほかにもクローン病,肝硬変,ペラグラ,川崎病などの様々な慢性疾患で報告されている。この異常は健常者にも生じる(1 全身性疾患に合併する爪変形および異栄養症に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
テリー爪(Terry nail)は,爪床の約80%が白色化し,遠位部が0.5~3.0mmの帯状に褐色からピンク色になることを特徴とする。テリー爪には,しばしば肝硬変,慢性心不全,および成人型糖尿病が合併する。Half-and-half nailとの鑑別が困難になることがある(1 全身性疾患に合併する爪変形および異栄養症に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
白色爪は 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む で生じるが,遠位3分の1にピンク色の色調が残ることがある。強く白色化した爪はテリー爪(Terry nail)とも呼ばれ,慢性肝不全または腎不全,心不全,もしくは糖尿病の患者に認められることがある。テリー爪は爪甲白斑の一種であり,異常は爪自体ではなく爪床にあり,それにより爪が白色に見える。テリー爪では,爪のほぼ全体が不透明な白色を呈し,爪半月が視認できない。遠位端の爪床に正常な細いピンク色の領域がみられる。テリー爪は,ときに正常な老化の一部として生じることもある(1 全身性疾患に合併する爪変形および異栄養症に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
Beau線は爪甲の横溝であり,爪甲の成長が一時的に緩徐になることで生じ,感染症,外傷,または全身性疾患の発症後のほか,化学療法の施行中に生じる可能性がある。爪甲脱落症も同様に,爪母の一時的な成長停止によって生じるが,この場合は爪の全層が侵され,近位部において爪甲が爪床から分離するという点でBeau線と異なる。 手足口病 手足口病 手足口病は,通常はコクサッキーウイルスA16,エンテロウイルス71型,その他のエンテロウイルスによって引き起こされる発熱性疾患である。感染により手足と口腔粘膜に水疱性発疹が生じる。コクサッキーウイルスA6による非定型的な手足口病は,しばしば高熱を引き起こし,小水疱主体の水疱性丘疹から,大小の水疱性病変が全身に広く分布する状態に進行する。 この疾患は幼児で最も多くみられる。経過は... さらに読む の数カ月後に好発するが,他のウイルス感染症の後にも生じることがある。Beau線または爪甲脱落症が生じた爪は,時間の経過とともに正常な成長を再開する。
全身性疾患に合併する爪変形および異栄養症に関する参考文献
1.Pitukweerakul S, Pilla S: Terry's nails and Lindsay's nails: Two nail abnormalities in chronic systemic diseases.J Gen Intern Med 31(8):970, 2016.doi: 10.1007/s11606-016-3628-z.
皮膚疾患に合併する爪変形
乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む では,爪にいくつかの変化がみられるが,具体的には,不整な点状陥凹,oil spot(限局的に淡黄褐色に変色した領域),爪床からの爪甲の部分的剥離(爪甲剥離症 爪甲剥離症 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む ),爪甲の肥厚および崩壊などがある。爪乾癬は,治療抵抗性の乾癬性疾患との間に独立した関連がみられ, 乾癬性関節炎 乾癬性関節炎 乾癬性関節炎は 脊椎関節症の1つであり,皮膚または爪に乾癬のある人に生じる慢性の炎症性関節炎である。乾癬性関節炎は非対称性であることが多く,病態によっては遠位指節間関節が侵される。診断は臨床的に行う。治療には疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と生物学的製剤を使用する。 乾癬性関節炎は 乾癬患者の約30%に発生する。AIDS患者では有病率が高い。ヒト白血球抗原B27(HLA-B27)アレルまたは他の特異的な一部のアレルを有する患者,およ... さらに読む 発症の危険因子である。爪乾癬の治療は容易ではないが,免疫調節薬が最も効果的である(1 皮膚疾患に合併する爪変形に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む , 2 皮膚疾患に合併する爪変形に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。外用療法が若干の改善につながる可能性がある。デバイスを用いた治療(例,レーザー,光)には,その有効性を判断するためにさらなる研究が必要である。
爪母の 扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬は,そう痒を伴う再発性の炎症性発疹が生じる疾患で,平坦に隆起した多角形で紫色のはっきりした小丘疹を特徴とし,それらが融合して表面のざらざらした鱗屑を伴う局面を形成することがあり,しばしば口腔病変や性器病変を伴う。診断は通常臨床的に行い,皮膚生検で裏付けが得られる。一般に,治療にはコルチコステロイドの外用または病変内注射が必要となる。重症例では光線療法,またはコルチコステロイド,レチノイド,もしくは免疫抑制薬の全身投与が必要になる... さらに読む は初期,縦方向の隆起,亀裂,爪半月の紅斑,爪甲遠位部の分離など,可逆的な爪変化を引き起こす。時間が経過すると,瘢痕のほか,爪甲萎縮,翼状爪,完全な爪甲の喪失などの不可逆的変化が生じることがある。爪部の扁平苔癬には,永続的な醜形を予防するために早期からの管理が必要である。治療選択肢としては,コルチコステロイドの外用,病変内注射,全身投与などがある。しかしながら,一部の患者では治療後に再発することがある。翼状爪は,扁平苔癬によって生じる病態であり,爪甲の近位部から外方に向かうV字状の瘢痕形成を特徴とし,最終的には爪の喪失に至る。
円形脱毛症 円形脱毛症 円形脱毛症は,明らかな皮膚疾患や全身性疾患のない患者に典型的には突如として瘢痕形成を伴わない脱毛斑が生じる病態である。 ( 脱毛症も参照のこと。) この写真には,円形脱毛症における頭部脱毛斑が写っている。 頭皮と須毛部に好発するが,有毛部ならどこにでも生じうる。脱毛が体の大部分または全身に及ぶことがある(汎発性脱毛症)。円形脱毛症は,遺伝的素因をもつ個人が環境誘因に曝露することで生じる自己免疫疾患と考えられているが,環境誘因については十... さらに読む では,一定の幾何学的パターンを示す規則的な点状陥凹を伴うことがある。点状陥凹は小さく微細である。円形脱毛症では重度の爪甲縦裂症(爪甲が脆くなり破綻する病態)もみられる場合がある。治療選択肢としては,コルチコステロイドの病変内投与および外用や,スクアリン酸ジブチルエステルなどの感作物質の外用などがある。トファシチニブやアプレミラストなどの新しい治療法については,ある程度有望な成績が示されている。
皮膚疾患に合併する爪変形に関する参考文献
1.van de Kerkhof P, Guenther L, Gottlieb AB, et al: Ixekizumab treatment improves fingernail psoriasis in patients with moderate-to-severe psoriasis: Results from the randomized, controlled and open-label phases of UNCOVER-3.J Eur Acad Dermatol Venereol 31(3):477–482, 2017.doi: 10.1111/jdv.14033.
2.Merola JF, Elewski B, Tatulych S, et al: Efficacy of tofacitinib for the treatment of nail psoriasis: Two 52-week, randomized, controlled phase 3 studies in patients with moderate-to-severe plaque psoriasis.J Am Acad Dermatol 77(1):79–87, 2017.doi: 10.1016/j.jaad.2017.01.053.
変色
がん化学療法薬(特にタキサン系)は黒色爪(爪甲の色素沈着)を引き起こすことがあり,それはびまん性の場合もあれば,横方向に帯状に生じる場合もある。一部の薬剤は爪の色に特徴的な変化を引き起こすことがある:
キナクリン:紫外線下で爪が緑黄色または白色に見える。
シクロホスファミド:Onychodermal band(爪甲先端部で爪甲と爪床遠位部を接着している部分)が暗い灰色または青色調に変色する。
ヒ素:爪がびまん性に褐色化することがある。
テトラサイクリン系,ケトコナゾール,フェノチアジン系,スルホンアミド系,フェニンジオン(phenindione):爪が褐色調または青色に変色することがある。
金療法:爪が明褐色または暗褐色になることがある。
銀塩(銀皮症):爪がびまん性に青灰色になることがある。
喫煙またはマニキュアの使用は,爪および指尖部の黄色ないし褐色調の変色につながることがある。
爪甲に出現する白い横線(Mees線)は,化学療法,急性ヒ素中毒,悪性腫瘍,心筋梗塞,タリウムおよびアンチモン中毒,ならびにフッ素症で生じるほか,エトレチナート療法中にも生じることがある。それらの線は爪床の変化によるものではなく,本当に爪甲が白色化したものであり,原因が排除されれば,正常な爪の成長とともに消失する。Mees線は指の外傷でも生じるが,通常は外傷性の白色線条が爪全体に生じることはない。
真菌の一種であるTrichophyton mentagrophytesは,爪甲の表面をチョーク様に白く変色させる。
緑色爪症候群はPseudomonas属細菌の感染により生じる。一般に無害の感染症であり,1指または2指の爪に生じるのが通常で,目立つ青緑色が特徴である。爪が刺激物質に曝露するか水に過度に曝露した 爪甲剥離症 爪甲剥離症 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む または 慢性爪囲炎 慢性爪囲炎 慢性爪囲炎は,再発性または持続性の爪郭の炎症であり,典型的には手指に生じる。 ( 爪疾患の概要も参照のこと。) 慢性爪囲炎は,爪郭の皮膚の炎症性疾患である。水仕事の多い人々(例,皿洗い担当者,バーテンダー,ハウスキーパー)に好発し,特に手湿疹がある場合と糖尿病または易感染性患者である場合に多くみられる。しばしばCandidaが検出されるが,病因におけるその役割は不明であり,真菌を根絶しても病状が解消されるとは限らない。この... さらに読む 患者に生じることが多い。爪甲剥離症または慢性爪囲炎を効果的に治療すれば,Pseudomonas感染症は消失する。患者は刺激物質への曝露や過度の湿気を回避すべきである。頻繁に爪切りを行うことで,治療に対する反応が向上する。
正中爪変形(median nail dystrophy,median canaliform dystrophy)
正中爪変形(median nail dystrophy)は,爪甲の小さな亀裂が側方に伸び,常緑樹(例,クリスマスツリーなどのモミの木)の枝のように見えるのが特徴である。亀裂および隆起が嗜癖性爪変形(habit-tic nail deformity―爪中央部の異栄養症で,別の指で擦る,つつくなどの動作で生じる爪母の反復的外傷を原因とする)でみられるものに類似する。正中爪変形は原因不明の場合もあるが,外傷が何らかの役割を果たしていると考えられる。少数の症例では,爪を反復的に打ちつけるデジタル機器を頻繁に使用することが原因として示唆されている。患者が反復的な軽度の外傷につながりうる行為を全てやめれば,就寝時に0.1%タクロリムスを非密封下で外用する治療が有効となる。
爪甲色素線条
爪甲色素線条は,後爪郭および爪上皮から爪甲の遊離端まで縦方向に伸びる色素沈着帯である。爪母のメラノサイトによりメラニンの沈着が起きることで,色素沈着が生じる。メラニンの沈着は,メラノサイトの活性化(爪細胞におけるメラニン産生の増加)またはメラノサイトの過剰増殖(爪母におけるメラノサイト産生の増加)により増強する。
メラノサイトの活性化は,皮膚の色が濃い人々では正常な生理的異型である場合もある。この異型はしばしばethnic melanonychiaと呼ばれ,治療は不要である。メラノサイト活性化のその他の原因としては,外傷,妊娠,アジソン病などの内分泌疾患,感染,炎症後色素沈着,特定の薬剤(ドキソルビシン,フルオロウラシル,ジドブジン,ソラレン類など)の使用などがある。
メラノサイトの過形成は,爪母の色素性母斑や爪の黒子などの良性の病態,または悪性黒色腫によって生じる。爪母の悪性黒色腫に関連する頻度の高い因子としては,中年期以降の新規発症,利き手の母指または利き足の母趾の色素沈着,急速な増殖または濃色化,3mmを超える幅,爪甲異栄養症の合併,Hutchinson徴候(色素沈着の後爪郭および/または側爪郭への進展)などがある。 黒色腫 治療 悪性黒色腫は,色素のある部位(例,皮膚,粘膜,眼,中枢神経系)のメラノサイトから発生する。転移は真皮浸潤の深さと相関する。進展した場合の予後は不良である。診断は生検による。手術可能な腫瘍には広範な外科的切除を行うのが原則である。転移例には全身療法が必要であるが,治癒は困難である。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) 2020年には,米国で約100,350例の黒色腫症例が新たに発生し,約6850人が死亡していると推定される... さらに読む が疑われる症例では,迅速な生検および治療が不可欠である(1 爪甲色素線条に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
爪甲色素線条に関する参考文献
1.Leung AKC, Lam JM, Leong KF, Sergi CM: Melanonychia striata: Clarifying behind the black curtain.A review on clinical evaluation and management of the 21st century.Int J Dermatol Apr 21, 2019.doi: 10.1111/ijd.14464.
爪甲鉤弯症
爪甲鉤弯症は,爪甲が肥厚して弯曲する爪異栄養症の一種であり,母趾に好発する。足に合わない靴の着用により生じる。高齢者に多い。治療は変形した爪を切って形を整えることである。
爪甲剥離症
爪甲剥離症は,爪甲が爪床から分離または完全に脱落する病態である。テトラサイクリン系薬剤(光線性爪甲剥離症),ドキソルビシン,フルオロウラシル,心血管治療薬(特にプラクトロールおよびカプトプリル),クロキサシリンおよびセファロリジン(まれ),トリメトプリム/スルファメトキサゾール合剤,ジフルニサル,エトレチナート,インドメタシン,イソニアジド,グリセオフルビン,またはイソトレチノインによる治療を受けている患者において,薬物反応として生じることがある。単純性(すなわち,別の爪疾患や皮膚疾患を合併していない)の爪甲剥離症は,水,柑橘類果汁,化学物質への頻繁な曝露など,刺激物質への曝露によっても生じる。手および指の 刺激性接触皮膚炎 刺激性接触皮膚炎(ICD) 接触皮膚炎は,刺激物(刺激性接触皮膚炎)またはアレルゲン(アレルギー性接触皮膚炎)との直接接触によって皮膚の炎症が生じる疾患である。症状としては,そう痒のほか,ときに灼熱痛などがみられる。皮膚の変化としては,紅斑,鱗屑,皮膚の腫脹のほか,ときに水疱形成や潰瘍形成などがみられる。局在は接触部位に依存する。診断には曝露歴と診察所見のほか,ときにパッチテストの結果も用いられる。治療法としては,コルチコステロイドの外用,止痒薬,刺激物およびアレ... さらに読む が爪甲剥離症に至ることがある(1 爪甲剥離症に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。爪床へのCandida albicansの定着が起こる可能性があるが,基礎にある刺激物質への曝露に対処すれば,Candidaに対する治療の如何にかかわらず,爪甲剥離症は治癒に至る。
乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む または 甲状腺中毒症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む の患者でも,部分的な爪甲剥離症が生じることがある。
爪甲剥離症に関する参考文献
1.Vélez NF, Jellinek NJ: Simple onycholysis: A diagnosis of exclusion.J Am Acad Dermatol 70(4):793–794, 2014.doi: 10.1016/j.jaad.2013.09.061.
爪甲損傷癖
この疾患では,患者が自分の爪をいじって自傷行為を行う結果,横方向に平行する複数の溝および隆起(洗濯板状の変形または嗜癖性爪変形[habit-tic nail deformity])が生じることがある。1指の爪上皮を押し戻す行為を習慣的に行う患者で最も多くみられ,この行為により爪甲が成長する過程で異栄養症が生じる。爪甲損傷癖では 爪下出血 爪下血腫および爪床外傷 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む も生じることがある。
巻き爪
巻き爪は,爪甲が横方向に過度に弯曲した変形である。最も頻度の高い原因は 爪真菌症 爪真菌症 爪真菌症は爪甲,爪床,またはその両方に生じた真菌感染症である。典型的には,爪が変形し,白色または黄色に変色する。診断は病変の外観,KOH直接鏡検,培養,ポリメラーゼ連鎖反応検査,またはこれらの併用による。適応がある場合の治療は,テルビナフィンまたはイトラコナゾールの内服による。 ( 爪疾患の概要も参照のこと。) 人口の約10%(範囲2~14%)が爪真菌症に罹患している。 爪真菌症の危険因子としては以下のものがある:... さらに読む , 乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む ,爪部の腫瘍,および足に合わない靴である。 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む , 川崎病 川崎病 川崎病は 血管炎の1つであり,乳児および1~8歳の小児に発生しやすく,ときに冠動脈を侵す。遷延する発熱,発疹,結膜炎,粘膜炎症,リンパ節腫脹を特徴とする。冠動脈瘤が発生し,破裂する,あるいは心筋梗塞を引き起こす可能性がある。診断は臨床基準により行われ,本疾患と診断されれば,心エコー検査が行われる。治療はアスピリンと免疫グロブリン静注療法である。冠動脈血栓には,線溶療法または経皮的インターベンションが必要となることがある。... さらに読む , 末期腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む ,および一部の遺伝性症候群(例,先天性爪囲炎)の患者でも報告されている。弯曲した爪甲が爪の境界部で指尖部に食い込み,しばしば疼痛を来す。第1選択の治療法は確立されていないが,いくつかの外科的手技が成功を収めている(1 巻き爪に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む , 2 巻き爪に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む , 3 巻き爪に関する参考文献 爪の変形は,しばしば異栄養症と併せて考えられるが,両者は若干異なる概念である;変形は一般に爪の形状の肉眼的変化とみなされるのに対し,異栄養症は爪の質感や組成の変化である(例, 爪真菌症)。 爪異栄養症の約50%は真菌感染によって生じる。残りは外傷,先天異常, 乾癬, 扁平苔癬,良性腫瘍,ときにがんなどの様々な原因で生じる。 爪異栄養症の原因としての爪真菌症は診察で明らかになる場合もあるが,爪甲と爪下の組織片を採取して病理組織学的検査とP... さらに読む )。
巻き爪に関する参考文献
1.Demirkıran ND: Suture treatment for pincer nail deformity: An inexpensive and simple technique.Dermatol Surg Feb 6, 2019.doi: 10.1097/DSS.0000000000001818.
2.Shin WJ, Chang BK, Shim JW, et al: Nail plate and bed reconstruction for pincer nail deformity.Clin Orthop Surg 10(3):385–388, 2018.doi: 10.4055/cios.2018.10.3.385.
3.Won JH, Chun JS, Park YH, et al: Treatment of pincer nail deformity using dental correction principles.J Am Acad Dermatol 78(5):1002–1004, 2018.doi: 10.1016/j.jaad.2017.08.014.
爪下血腫および爪床外傷
爪下血腫は,通常は外傷の結果として,血液が爪甲と爪床の間に貯留することで生じる。爪下血腫は拍動性の有意な疼痛と青黒色への変色を引き起こし,小さくない限り,最終的には爪甲の剥離や一時的な脱落を来す可能性がある。原因が挫滅損傷の場合,爪下の骨折および爪床または爪母の損傷が生じることがある。爪床または爪母の損傷は永続的な爪変形につながることがある。
損傷が急性の場合,爪甲穿孔術(例,焼灼機器,18G針,または赤熱したペーパークリップにより爪甲に穴を開ける)を行って貯留した血液を排出することで,疼痛の緩和に役立つことがあるが,24時間以上経過すると,血液が凝固するため,爪甲穿孔術は有益とならない。抜爪して爪床の損傷を修復する治療により永続的な爪変形のリスクを低減できるかどうかは不明である。
粗造爪
粗造爪(trachyonychia)(表面が粗く混濁した爪)は, 円形脱毛症 円形脱毛症 円形脱毛症は,明らかな皮膚疾患や全身性疾患のない患者に典型的には突如として瘢痕形成を伴わない脱毛斑が生じる病態である。 ( 脱毛症も参照のこと。) この写真には,円形脱毛症における頭部脱毛斑が写っている。 頭皮と須毛部に好発するが,有毛部ならどこにでも生じうる。脱毛が体の大部分または全身に及ぶことがある(汎発性脱毛症)。円形脱毛症は,遺伝的素因をもつ個人が環境誘因に曝露することで生じる自己免疫疾患と考えられているが,環境誘因については十... さらに読む , 扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬は,そう痒を伴う再発性の炎症性発疹が生じる疾患で,平坦に隆起した多角形で紫色のはっきりした小丘疹を特徴とし,それらが融合して表面のざらざらした鱗屑を伴う局面を形成することがあり,しばしば口腔病変や性器病変を伴う。診断は通常臨床的に行い,皮膚生検で裏付けが得られる。一般に,治療にはコルチコステロイドの外用または病変内注射が必要となる。重症例では光線療法,またはコルチコステロイド,レチノイド,もしくは免疫抑制薬の全身投与が必要になる... さらに読む , アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む ,および 乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む とともに生じることがある。小児に好発する。全ての爪に粗造爪が認められる場合,しばしば20-nail dystrophyと呼ばれる。小児に生じた場合は,自然に治癒する傾向がある。成人に生じた場合は,基礎疾患に対する治療を行う。
爪の腫瘍
良性および悪性腫瘍が爪部を侵し,変形を引き起こすことがある。良性腫瘍としては,粘液嚢腫, 化膿性肉芽腫 化膿性肉芽腫 化膿性肉芽腫は,湿潤しているか痂皮を付着する,肉芽様で通常は鮮紅色の血管性の結節であり,浮腫を起こした間質内で増殖する毛細血管で構成される。 化膿性肉芽腫は,鮮紅色の結節として現れ,浮腫を起こした間質内で増殖する毛細血管で構成される。病変は脆弱である傾向があり,容易に出血する。この病態はおそらく,損傷に対する血管および線維組織の反応である。 病変は血管組織で構成され,細菌によるものでもなければ,真の肉芽腫でもない。病変は急速に発生し,し... さらに読む ,グロムス腫瘍などがある。悪性腫瘍としては, ボーエン病 ボーエン病 ボーエン病は,表在性の表皮内有棘細胞癌である。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) ボーエン病は露光部に好発するが,あらゆる部位で発生する可能性がある。 病変は単発性の場合も多発性の場合もある。病変は赤褐色で鱗屑または痂皮を伴い,硬結はほとんどなく,乾癬または皮膚炎や皮膚糸状菌感染症による限局性の薄い局面に類似することが多い。 この写真には,ボーエン病に一致する赤褐色の鱗屑性病変が写っている。 さらに読む , 有棘細胞癌 有棘細胞癌 有棘細胞癌は,真皮に浸潤する表皮角化細胞の悪性腫瘍であり,通常は露光部に生じる。局所破壊が強いことがあり,進行期には転移を生じる。診断は生検による。治療法は腫瘍の特徴に応じて異なり,具体的には掻爬・電気乾固術,外科的切除,凍結療法,ときに放射線療法などを行う。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) 有棘細胞癌は 基底細胞癌に次いで2番目に頻度の高い皮膚悪性腫瘍であり,米国では毎年100万例以上が発生し,2500人が死亡している。正常組... さらに読む , 悪性黒色腫 黒色腫 悪性黒色腫は,色素のある部位(例,皮膚,粘膜,眼,中枢神経系)のメラノサイトから発生する。転移は真皮浸潤の深さと相関する。進展した場合の予後は不良である。診断は生検による。手術可能な腫瘍には広範な外科的切除を行うのが原則である。転移例には全身療法が必要であるが,治癒は困難である。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) 2020年には,米国で約100,350例の黒色腫症例が新たに発生し,約6850人が死亡していると推定される... さらに読む などがある。悪性腫瘍が疑われる場合は,迅速に生検を行って外科医に紹介することが強く推奨される。