メルクマニュアル家庭版
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セクション

はじめに

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これまでの医学は、症状を診て、その症状の原因となっている病気を明らかにして、病気を治療することに焦点をあててきました。一方、予防医学が目的としているのは最初の発病を防ぐこと、あるいは症状もなく、最も回復が期待できる早期のうちに診断することです。予防は医学と医療の領域に含まれ、病気、障害、早死にを防ぐための具体策を講じて健康を増進し、リスクを減らすことを目的としています。

予防医学は個人のリスクプロフィールに大きく左右されます。リスクプロフィールとは、その人の年齢、性別、家族の病歴、ライフスタイル、物理的、社会的環境などの要因に基づいた、病気にかかるリスクのことです。リスクプロフィールに基づいて、自身の病気にかかる危険性を知れば、それを最小限にするための対策を打つことができます。

人は幸運や不運といった偶然に左右されるものですから、予想外のけがなどで健康を損なうこともあります。しかし、遺伝子構造や家族の病歴といった要因から予想できるリスクもあります。これらの要因によるリスクをコントロールすることはできませんが、病気のかかりやすさに対する手がかりになります。たとえば、糖尿病の病歴が家族にある人は、そうでない人よりも糖尿病を発病するリスクが高いので、定期的に血糖値をチェックし、糖尿病の発病を防ぐ対策を医師に相談した方が賢明です。結腸直腸癌の病歴が家族にある人や、潰瘍性大腸炎のような、結腸直腸癌を発病する確率が高くなる病気にかかっている人は、S状結腸鏡や大腸内視鏡(消化器系の腫瘍: 診断を参照)によるスクリーニング検査を、平均的なリスクの人よりも頻繁に受けた方がよいでしょう。家族に乳癌の病歴がある女性は、若いときから乳房撮影のスクリーニング検査を受けた方がよいでしょう。

リスクプロフィールを検討する際には、その人のライフスタイルの選択も考慮されます。たとえば、ストレスへの対処の仕方は重要で、ストレスを減らせば血圧も低くなり、それに伴って脳卒中や心臓発作のリスクも低下します。喫煙や運動不足によって、多くの命にかかわる病気のリスクが上昇しますが、このような要因は明らかにコントロール可能なものです。喫煙する人や運動不足の人で、心臓疾患の病歴が家族にある人は、喫煙に伴うリスクや運動の効果について医師と相談した方がよいでしょう。脂っこいものをたくさん食べる人はアテローム動脈硬化(アテローム動脈硬化を参照)のリスクが高いので、食事を改善したり、血中コレステロール値を頻繁にチェックする方がよいでしょう(コレステロールの異常: はじめにを参照)。

暴力の多発する地域に住んでいたり、鉛を含んだ塗料が家に使われていたり、危険な環境で働いていたりといった、社会的・物理的環境も人の健康に影響を与えます。このような要因も、リスクプロフィールの検討の際に考慮されます。たとえば、アスベストを扱う環境で働く人は肺の病気にかかるリスクが高いので、定期的な胸部X線検査とともに禁煙が必要です。また、働くときにはフィルターつきマスクのような保護具を使うことも奨励されています。組立工場のラインやコンピューターのキーボード入力のような、手首の曲げ伸ばしを繰り返す仕事をしている人は、手根管症候群や、体の一部を繰り返し使うことと関係のある、神経、腱、靭帯(じんたい)の病気にかかるリスクが高くなります。医療専門家は、問題を起こす動作が持続する時間を短くし、仕事場所の家具や設備を見直して、障害が起こる部分への肉体的ストレスを減らすように勧めるでしょう。

健康リスクの評価

分類

主な危険因子

遺伝 心臓病、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、糖尿病、精神障害、薬物中毒などの病気に対する家系的な素因
人種と性別 白人:心臓発作のリスクが高い、黒人:高血圧のリスクが高い
体重 肥満(身長と体格から求めた理想体重よりも、20%以上体重が重い)
食事 バランスが悪く、不適切な食事
運動 運動不足(運動回数が、20〜30分の運動を週3回という推奨頻度以下)
喫煙 タバコ、葉巻、パイプ、かみタバコの使用
ストレス 新しい仕事、難しい仕事、愛する人の死、睡眠不足、結婚や離婚など、ストレスの多い状況
精神衛生 うつ、急速または頻繁な気分の変化、自殺の考え、睡眠障害、アルコールまたは薬物中毒
社会的環境 リスクの高い性行動(複数のパートナー、コンドームの不使用);人との付き合いが困難
物理的環境 次のような安全な環境を維持することが困難な場合:カギをかけての銃器の保管;自転車用ヘルメット、シートベルトの使用;家庭での火災報知器や消火器の作動;暖炉などの暖房器具の定期的な検査と清掃など。子供の場合:チャイルドシートの使用、自転車用ヘルメット、難燃性の寝間着、窓やいすのガード、家屋に鉛を含んだ塗料が使用されているかを評価し除去、薬物と毒物の安全な保管。高齢者の場合:転倒や火災など、けがや事故の予防
予防接種 年齢に応じて接種すべきワクチンを未接種

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