メルクマニュアル家庭版
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エクササイズの効果

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定期的にエクササイズをすると心臓が強くなり、肺の調子も良くなるので、心臓血管系が心拍とともに運ぶ酸素の量が増え、体が取り入れて使うことのできる最大酸素量も増えます。エクササイズにより血圧が低下し、総コレステロール値、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール(悪玉コレステロール)値も低下するので、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈疾患のリスクが減少します。定期的なエクササイズによって予防できる病気には、結腸癌や多くの糖尿病などもあります。

エクササイズにより筋肉が強化されるので、それまではできなかった作業ができるようになります。日常的作業のほとんどは筋力や関節の柔らかさを必要としますが、エクササイズによりこの両方を改善できます。

筋肉や関節を伸ばすエクササイズをすれば、体の柔軟性が増してけがをしにくくなります。ウエートを使ったエクササイズは骨を強くするので、骨粗しょう症の予防になります。エクササイズは変形性関節症患者の機能を改善し、痛みを和らげてくれますが、ランニングのような関節に過度の負担がかかるエクササイズは避けた方がよいでしょう。

エクササイズによりエンドルフィン濃度が上昇します。エンドルフィンは脳内に存在する化学物質で、痛みを和らげ、幸福感をもたらします。つまり、エクササイズには気分や活力を高め、うつを軽くする働きがあります。エクササイズによって健康状態が改善し、外見も良くなると、その人の自発性も高まります。

エクササイズはどの年代の人にも効果がありますが、高齢者が定期的な運動を行えば、機能的能力が改善し、転倒や骨折をしにくくなるので自立性を保つことができます。介護型老人ホームに暮らす体の弱い高齢者でも、筋肉を強化できます。エクササイズにより食欲が増し、便通が良くなり、睡眠も促進されます。

エクササイズをやめると、その効果は数カ月のうちに消えてしまいます。心臓の強さ、筋肉の強さ、高比重リポタンパク(HDL)コレステロール(善玉コレステロール)値が低下する一方で、血圧は上昇し、体脂肪が増えます。元運動選手であっても、エクササイズをやめてしまえば、その効果を長期間維持することはできません。激しい運動はできなくなり、心筋梗塞の危険因子の数は運動経験のない人と変わらなくなり、運動能力を回復するのに時間がかかるようになります。

スポーツ心臓症候群とは

スポーツ心臓症候群とは、トレーニングを積んだ運動選手など、定期的に有酸素運動を行っている人の心臓に生じる正常な心臓の変化のことです。

スポーツ心臓症候群の人の心臓は、普通の人の心臓に比べて大きく、その壁も厚くなっています。血液が流れる心臓内部の部屋も、いくらか大きくなっています。このように、心臓が大きく、壁が厚くなることにより、1回の拍動で送り出せる血液の量がかなり多くなるので、心拍数はそれほど増えません。心臓を通過する血液の量が多いと、脈は遅く強くなり、それが手首だけでなく体の至る所で感じられるようになります。また、心雑音が生じる場合もあります。この心雑音は、血液が心臓の弁を通過するときに出る独特の音ですが、運動選手ではこの音があってもまったく正常で、危険なものではありません。スポーツ心臓症候群の人の心拍は、安静時に不規則なことがありますが、運動が始まると規則的になります。血圧は、普通の健康な人とほとんど変わりません。

大きくなった心臓は、胸部X線検査で確認できます。また、心電図にはさまざまな変化が現れます。運動選手ではない人の場合、このような変化は異常とみなされますが、スポーツ心臓症候群の運動選手の場合はまったく正常です。

運動選手がトレーニングをやめると、スポーツ心臓症候群は徐々に消えていきます。つまり、心臓の大きさ、心拍数が、普通の人と同じぐらいにまで徐々に戻っていきます。

スポーツ心臓症候群が、健康に悪影響を与えることはありません。運動選手が突然死することがまれにありますが、スポーツ心臓症候群からくるリスクではなく、その人に以前からあるのに見つかっていなかった心臓疾患が原因です。

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