メルクマニュアル家庭版
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作業療法

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作業療法の目的は、基本的な自立活動、役に立つ仕事、レジャー活動を行う能力を高めることです。たとえ単純な作業でも、支障なく感覚を働かせ、動作する能力(感覚運動能力)、計画を立てて実行する能力(認知能力)、作業する意欲をもち、最後までやり遂げる能力(心理的能力)といった、たくさんの能力を協調させる必要があります。

これらの能力が1つでも低下すると、作業の成果に影響が出ます。感覚運動能力が低下すると、感覚、知覚、関節可動域、筋力、筋肉の緊張、持久力、バランス感覚、手先の器用さ、協調能力などに障害が出ます。認知能力の低下には、不注意、注意力散漫、集中力の低下、判断力の低下、優柔不断、記憶障害、問題解決能力の低下などがあります。心理的能力の低下には、無気力、うつ、不安、無力感、意気消沈、粘り強さの消失、対処能力の低下などがあります。作業療法士は、直接観察したり、ある種のテストをしたり、関係者から情報を得たりしてこれらの能力低下を見つけます。

作業療法士は、患者が自然な環境で作業する様子をみて、患者に必要な訓練を検討します。作業療法士は、社会的環境(患者の作業能力に対する家族の態度など)、物理的環境(暗い照明、通路の妨げになる電気コード、作業に影響する障害物など)に関する潜在的な問題についてもチェックします。

どのような訓練をするかは、障害の種類によります。患者は作業療法士と一緒に作業して訓練のゴールを決め、その優先順位をつけます。また、有意義と思われる治療的作業を選びます。たとえば、細かい動きを高める作業(両手を使う作業やくぎをペグボード[くぎ刺し盤]に差しこむ作業など)をすれば、協調能力が向上し、食事のときに食器をうまく扱えるようになります。記憶ゲームをすれば、認知能力や記憶を呼び出す能力が向上します。順応性を高める訓練をすれば、患者のもつ能力を使って機能障害を補えるようになります(たとえば、片腕が麻痺した人は、洋服を着たり、靴ひもを結んだり、ボタンを留めたりする新しい方法を覚えることができます)。患者の能力が向上するにしたがって、訓練のレベルも上げていきます。

作業療法士は、機能障害をもつ人が、より自立した活動を行えるように補助する器具について、豊富な知識をもっています。たとえば、変形を防ぐための添え木や、食器を持つのを助けるクリップのような、機能を補助するための器具を使います。よく使われる補助器具には、ステッキ、浴槽やトイレの横と背中側に取り付ける手すり、シャワーチェア、握り付きの食器や靴べら、床や棚からものをつまみ上げるのに使うマジックハンドなどがあります。握り付きの道具やばね式、電動式の道具を使えば、手の動きの悪さを補うことができます。背中や脚の動きが悪い人は、座面が昇降するトイレ、脚が伸縮するいすを使うと便利です。四肢麻痺の人や、障害で機能が大きく制限された人は、コンピューターを使った高性能な器具を使うことができます。

視覚、聴覚、記憶に障害がある人のための器具もあります。電話のダイヤルやボタンは大形のものを後づけすることができますし、呼び出し音はフラッシュライトと付け替えることができます。記憶を助ける器具には、自動ダイヤル電話、薬の整理箱や備忘表、好きなときにメッセージ(忘れてはいけないこと、医師の指示、各種リストなど)の記録、再生ができるポケット型装置などがあります。

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