メルクマニュアル家庭版
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医療を選ぶ

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病人とその家族は、致死的な病気と治療の波にもまれて、ものごとを自分ではコントロールできないと感じがちです。ただし、ときには何もコントロールできないという感覚が、何かできることがあったのではないかと罪悪感に悩むよりも好ましいこともあります。人によって情報量も違いますし、それぞれの場面で決断を下すときに考慮することがらも違います。患者の命を助けるために、そして死を迎えるときに尊厳を守るために、あらゆる手が尽くされたという気持ちに満たされることが、家族にとっては必要なのです。

終末期のケアに対する患者の希望を、患者と医師の間で、正直かつオープンに話し合えば、致死的な病気の患者としての生活の質を、可能な限り高めることができます。医師は、回復の見込み、さまざまな治療をさらに行った場合に生じる不自由について、率直な評価を伝えます。患者は、自分が望むことと望まないことを、医師と家族にはっきりと伝えます。患者が選択できるものには、医師とケアシステムの選択、希望する治療と、その治療に加えたい制限の意思表示、どこで死にたいか、死が近づいたときに何をしたいかといった希望、死んだ後に臓器を提供するか否かの意思表示などがあります。

医師を選ぶ: 医師を選ぶときは、以下に挙げるような終末期のケアに関する質問をしましょう。終末期ケアの経験は豊富か、病院、介護型老人ホーム、患者の自宅など、場所を問わず死ぬまでケアをしてくれるか、終末期の症状すべてをケアしてくれるのか(緩和ケア)、地域の在宅ケアサービス、理学療法や作業療法サービスに詳しいか、これらの関係者がどの資格をもっているか、彼らへの報酬はどこから支払われるのか、より集中的なサービスが必要となった患者や家族に彼らがどのように対応するか、などです。医師に終末期ケアの経験が不足していたとしても、医師と患者、患者の家族との間に長年にわたる関係があったり、医師に他の専門家に積極的に相談する意思があれば、その不足を補って信頼できるでしょう。

ケアシステムの選択: ケアシステムの選択には、医療保険や介護保険に加えて保険会社からの支払いなどを組み合わせる経済的な選択と(米国ではマネージドケアの選択など)、病院、介護型老人ホーム、在宅ケアサービスなどのケア施設の選択があります。医師、看護師、他の患者や家族、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどに次のような質問をすれば、良いケアシステムを見つけるのに役立ちます。そのシステムで受けられる治療は何か、治療のメリットに関する情報にはどのようなものがあるか、そこでケアを受けた患者や家族に話を聞くにはどうすればよいか、試験的な新しい治療を受けられるか、その試験的治療を受けた患者はどうなったか、また、その治療を受けるといくらかかるか。

治療オプションの選択: たいていの場合、快適な状態のうちに早く死ぬか、または痛みが増え自立性が減っても積極的な治療を受け、わずかでも寿命を延ばそうと試みるか、という2つの道から選ぶことになります。それでも、死にゆく患者とその家族は、延命の可能性が少しでもあるのなら、たとえ治る見込みに現実性がなかったとしても、どんな治療でも受けたいと思うものです。患者がこうした決断をするとき、あるいは患者のためにこうした決断が下されるときには、人生観、価値観、信仰といった問題がかかわってきます。こうした情報が決定的な意味をもつときが来る前に、終末期ケアについてよく話し合いましょう。

死期を迎えた人に、最後の治療が勧められることがあります。こうした治療は、患者の人生最後の数日を副作用で犠牲にし、実りある時間を奪ってしまう場合があります。患者と家族は、こうした治療の提案には疑いをもって対応しましょう。多くの場合、患者に死期が近づくにつれ、ケアの中心は患者の苦しみを取り除く処置へとシフトしていきます。

病院が自動的に提供する唯一の治療である(前もって明確に決められていた場合は除く)、蘇生を行うかどうかといった決断は、外部の人が考えるほど重大なものではありません。蘇生を行ってほしくないという希望は、死が予想されている人ならほとんどが納得できることで、家族が重圧を感じることはありません。心臓の拍動と呼吸が止まる(心肺停止)直前の患者には、蘇生を試みてもほとんど効果はありません。事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)(法的問題と倫理的問題: 事前指示書を参照)、あるいは患者と医師の話し合いの結果を文書化した書類で、蘇生を禁じておくことができます。チューブで栄養と水を送っても(人工栄養と輸液)、たいていの場合、死期が近づいた患者には効果がありません。この処置も前もって禁じておくことができます。

このほかにも、人生最後の日々をどのような環境で過ごすかという選択があります。たとえば、病院ではなく家で一緒に過ごしたいと家族が思う場合もあります。家庭は、親密さと患者を支える気持ちにあふれた環境です。家族は医師や介護人に主張して、こうした希望をかなえるための計画を立て、実現する手助けをしてもらいましょう。場合によっては、入院治療をはっきりと断りましょう。

臓器提供の選択: 死期が近づいた患者が、死後自分の臓器を提供したいと希望する場合があります。可能であれば、この決断は家族にも同意してもらいましょう。一般に、慢性疾患で死ぬ患者が提供できるのは、角膜、皮膚、骨だけです。突然亡くなった人なら、腎臓、肝臓、心臓、肺など、より多くの臓器を提供できます。通常は、標準ドナーカードに署名し、医師に自分の希望を伝えるだけで、臓器ドナーになることができます。臓器ドナーになるのを避ける原因になる、よくある懸念も問題ではありません。臓器を提供しても、葬儀のときの見た目に影響することはありませんし、患者や家族に費用がかかることもありません。また、死ぬ前に臓器を摘出することは絶対にありません。

知っておきたい各種サービス

  • 在宅ケア
    (訪問看護、訪問介護、訪問入浴)は、プロのケア提供者が医療的指導のもとに、患者の自宅で行うケアです。ケア提供者が薬の投与を手助けしたり、患者の状態を評価するほか、入浴などの個人的なサービスも行ってくれます。
  • ホスピスケア
    は、終末期患者の症状の緩和に重点をおいたケアで、死期を迎えた人とその家族の精神的、社会的支えとなってくれます。ケアは患者の自宅で行われる場合もありますが、ホスピス施設、病院で行われる場合もあります。ホスピスケアを受けるには、通常は余命6カ月未満であるという医師の診断が必要です。
  • ナーシングホーム・ケア
    (介護型老人ホーム)は、看護師やサポートワーカーのいる、認可を受けた施設で行われる居住型のケアです。
  • 短期入所ケア
    は、自宅、老人ホーム、ホスピス施設で一時的に行うケアで、家族やケア提供者が旅行したり、休息したり、行事に参加したりするときなどに利用できます。ケア提供システムや予算により、数日あるいは数週の期間で利用できます。
  • ボランティア団体
    は、病人やその家族に対し、さまざまな金銭的支援やサポートを提供してくれます。こうした団体は、特定の病気を対象としているのが普通です。

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