メルクマニュアル家庭版
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はじめに

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米国の法律では、薬とは「病気の診断や治癒、症状緩和、治療、予防の目的で使用する物質(食品や装置を除く)」または「体の構造や機能に作用することを目的とする物質」であると定めています。たとえば、経口避妊薬は病気を治す薬ではありませんが、体の機能に作用する薬の1例です。薬を包括的に定義することは法的には重要ですが、この定義は日常的に使用するにはいささか複雑すぎます。もっと簡単かつ具体的に定義するならば、薬とは「体と体のプロセスに作用する化学物質」とみることができます。

法律では、薬を処方薬と非処方薬の2つに大きく分類しています。処方薬とは、医師の管理下で使用する場合に限って安全であると考えられているもので、政府から処方を行う免許を与えられた公認の専門家(医師、歯科医師、獣医師など。米国にはこのほかに特定の分野の専門資格がいくつかある)が処方した場合に限って調剤される薬です。非処方薬とはアスピリンなど、医師の管理なしに使用しても安全であると考えられているもので、市販薬として店頭で販売されている薬(OTC)です(市販薬: はじめにを参照)。米国では、政府機関の食品医薬品局(FDA)が処方薬と市販薬に関する決定を行っています(訳注:日本の監督官庁は厚生労働省)。なお、代替医療に分類される機能性食品、サプリメントやハーブ(ハーブとサプリメント: はじめにを参照)はこの法律の対象外で、これらについては政府機関が要求する厳しい検査は行われません。

薬や薬物(ドラッグ)という言葉から、快楽を感じる方向へ脳の機能を変える物質、つまり精神状態を変化させる物質を連想する人もいます。こうした物質を、医学的には必要がないのに過剰かつ持続的に使用する行為を薬物の乱用といいます。医療に必要な薬物の適切な使用と、薬物の乱用との間には、歴史的には深いかかわりがあります。乱用のおそれがある薬の中には、正当な医療目的をもっているものと、そうでないものがあります(薬物の使用と乱用: はじめにを参照)。

薬の名前にはいくつかの種類があることを知っておくと、医薬品のラベルを理解するのに役立ちます。すべての薬には、(1)化学名、(2)一般名、(3)商品名(登録商標、銘柄名、ブランド名ともいう)の少なくとも3つの名前があります。

化学名は、薬の構成元素や分子構造を表します。化学名は日常的に使うにはあまりに複雑すぎるため、公的機関はそれぞれの薬に一般名をつけます。作用の面で同じグループに分類される薬には、共通の語尾をもつ一般名がつけられ、たとえば高血圧などの治療に使われるベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)の名前はいずれも最後が「〜ロール」となっています。

商品名は、薬を製造または販売する製薬会社が定めるものです。新薬は発売後の一定期間は特許で保護され、先発品(ブランド薬)として販売されます。特許期間の終了後は他の会社も同じ成分の薬を製造販売できるようになり、これらの後発品(ジェネリック薬)は一般名(イブプロフェンなど)で販売しても、後発品として新たにつけた商品名(たとえばアドビル)で販売してもかまいません。

薬の分類法を理解しておくことも役に立ちます。中でも一般的なのは、治療の目的別に薬を分ける薬効別の分類で、どんな病気や症状の治療に使うかによって、たとえば高血圧の治療に使用する薬は降圧薬、吐き気の治療に使用する薬は制吐薬といったグループにまとめます。こうした薬効別グループ内の薬は、体内で作用するしくみや薬の構造などに基づき、さらに細かくクラス分けされます。たとえば、降圧薬のうちカルシウム拮抗薬というクラスに属する薬は、カルシウムが特定の細胞に入らないように働いて血圧を下げるものです。カルシウムは動脈壁などの筋肉の収縮に必要な物質です。カルシウム拮抗薬の働きは、動脈壁の筋肉の収縮を妨げることによって動脈を広げ、血液を流れやすくすることです。この薬は心筋の収縮にはほとんど影響を与えず、また意識的に動かせる筋肉(骨格筋)の収縮を妨げることもありません。

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