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感染性心内膜炎

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感染性心内膜炎は、心臓の内側を覆う膜(心内膜)および心臓弁に生じる感染症です。

感染性心内膜炎は、男性が、すべての年齢層で女性の2倍、高齢者層では女性の8倍も多く発症します。この病気は高齢者では一般的で、全患者の4分の1以上は60歳以上です。

感染性心内膜炎を起こした心臓の内部

感染性心内膜炎を起こした心臓の内部

この断面図は、心臓の4つの弁にいぼ状のかたまり(細菌や血液のかたまりが蓄積したもの)が形成された状態を示しています。

感染性心内膜炎は、具体的に心内膜の感染症を指しますが、心臓弁や心筋もよく障害されます。感染性心内膜炎には2種類あります。1つは、急性感染性心内膜炎と呼ばれ、突然発症して数日のうちに命の危険にさらされます。もう1つは、亜急性感染性心内膜炎あるいは亜急性細菌性心内膜炎と呼ばれ、数週間から数カ月かけて知らない間にゆっくりと発症します。

細菌(または頻度は少ないが、真菌)は、血流中から侵入して心臓弁にとどまり、心内膜に感染します。異常もしくは損傷した心臓弁は、正常な心臓弁よりも感染症にかかりやすくなります。このような弁に感染した細菌はほぼすべて亜急性細菌性心内膜炎を起こします。正常な弁でも、病原性の強い細菌が、特に大量に存在している場合には、感染症を起こす可能性があります。

小児や若い成人における心内膜炎の危険因子は、先天異常、特に心臓の一部から血液の漏れが生じるような欠損です。高齢者における主な危険因子は、左心房から左心室内へ開く僧帽弁や、左心室から大動脈内へ開く大動脈弁へのカルシウムの沈着です。小児期にかかったリウマチ熱(リウマチ性心疾患)(細菌感染症: リウマチ熱を参照)による心臓障害も危険因子です。リウマチ熱は、抗生物質が広く使われている国では、一般的な危険因子ではなくなりつつありますが、そのような国でも、移民などによって、小児期に抗生物質の恩恵にあずからなかった人たちにとっては、いまだに感染性心内膜炎の危険因子です。

注射用の麻薬を使用している麻薬常習者は、不潔な針や注射器、薬液などを介して細菌が直接血流に注入されやすいことから、心内膜炎のハイリスク群です。人工心臓弁を移植した人も、心内膜炎のハイリスク群です。人工心臓弁を移植した場合、感染性心内膜炎の発症リスクは人工弁置換術後、最初の1年間が最も高く、その後リスクは低下しますが、それでも健康な人よりわずかに高くなります。理由は不明ですが、人工僧帽弁よりも人工大動脈弁の方が、またブタから移植した弁よりも機械弁の方が、リスクは常に高くなります。

原因

細菌は、正常な血液中には認められません。皮膚、口の中、歯ぐき(かむ、歯を磨くなどの日常的な行為による傷も含む)などに傷ができると、少量の細菌が血流に侵入できるようになります。感染症を伴う歯肉炎(歯ぐきの炎症)、軽度の皮膚感染症、全身性の感染症も、細菌を血流に侵入させる原因となります。

特定の外科的、歯科的、内科的処置も、細菌を血流に侵入させる原因となります。まれに、開胸術や人工弁置換術の際に、細菌が心臓に侵入することがあります。心臓弁が正常な人では普通は害はなく、体内の白血球が即座に細菌を破壊します。しかし、心臓弁に障害があると、そこで細菌が捕捉されて、心内膜にとどまり増殖しはじめます。重症の血液感染症である敗血症(菌血症、敗血症、敗血症性ショック: 菌血症と敗血症を参照)では、多数の細菌が血流に侵入します。血流中の細菌の数が非常に多くなると、たとえ心臓弁が正常であっても心内膜炎を発症します。

感染性心内膜炎の原因が、麻薬の注射などの薬物乱用や静脈ラインの長期使用による場合は、右心房から右心室内へ向けて開く三尖弁に最も多く感染が起こります。他のケースではほとんどの場合、僧帽弁か大動脈弁に感染が起こります。

症状

急性感染性心内膜炎は、38.9〜40℃の高熱、頻脈、疲労感、急速かつ広範囲の心臓弁の障害を伴って突然に発症します。

亜急性感染性心内膜炎は、疲労感、37.2〜38.3℃の軽度の熱、中等度の頻脈、体重減少、発汗、赤血球数の減少(貧血)などがみられます。これらの症状は、心内膜炎によって動脈の閉塞や心臓弁の障害が起こり、医師が心内膜炎と診断できるようになるまで、何カ月間もみられることがあります。

心臓弁上に細菌や血液のかたまり(血栓)が蓄積すると、崩れて塞栓となり、血流に乗って体のほかの部分に移動して動脈内を詰まらせます。ときに閉塞は重大な結果をもたらします。脳へ続く動脈が閉塞すると脳卒中が起こり、心臓へ続く動脈が閉塞すると心臓発作が起こります。また、塞栓は付着している部位に感染症を起こします。感染した心臓弁の底部、あるいは感染性の塞栓が付着しているところには、膿がたまります(膿瘍)。

数日のうちに、心臓弁に穴が開き、明らかな逆流(弁の狭窄と逆流とはを参照)を起こすような漏れが始まります。一部の人はショック状態になり、腎臓やその他の臓器の機能不全(敗血症性ショック(菌血症、敗血症、敗血症性ショック: 敗血症性ショックを参照))が起こります。動脈の感染症は、動脈壁をもろくして、膨隆や破裂を引き起こします。特に脳内や心臓の近くの動脈が破裂した場合は致死的です。

急性および亜急性感染性心内膜炎のほかの症状としては、寒け、関節痛、顔が青白くなる(蒼白)、痛みを伴う皮下結節、錯乱などがあります。そばかすのような小さな赤い斑点(点状出血)が皮膚と白眼に出現します。細い赤い線(線状出血)が爪の下に出現します。これらの点状あるいは線状の出血は、心臓弁がちぎれてできた小さな塞栓によって生じます。大きな塞栓は、心臓発作や脳卒中はもちろんのこと、胃痛、血尿、腕や脚の痛みやしびれなどを引き起こします。心雑音が生じたり、または以前から心雑音があった場合には、変化がみられます。脾臓が腫大することもあります。

人工心臓弁に生じる心内膜炎は、急性あるいは亜急性の感染症によります。通常の心臓弁への感染症に比べると、人工心臓弁への感染症は弁の底部の心筋に広がりやすく、心臓弁を伸ばして開いてしまいます。あるいは、心臓の電気刺激伝導系が阻害されて、心拍が遅くなり、その結果、突然に意識を失ったり、場合によっては死亡することさえあります。

診断

感染性心内膜炎の症状の多くが漠然として一般的なため、診断は困難です。普通、急性あるいは亜急性感染性心内膜炎が疑われる場合は、診断と治療のために即座に入院します。

明らかな感染源はみつからないのに、発熱している場合、特に感染性心内膜炎に特徴的な症状や、心臓弁障害、最近の外科的、歯科的、内科的処置、麻薬の注射などがみられる場合は、心内膜炎を疑います。心雑音の発生や以前との変化も、診断の役に立ちます。

細菌の存在を確認するために血液サンプルを採取します。血液から細菌が検出されれば、診断がつきます。

病原菌を同定し、適切な抗生物質を選ぶために、採取した血液を培養します。心臓弁にある、血液や細菌が凝集してできたいぼ状のかたまり(形状から疣贅[ゆうぜい]とも呼ばれる)から継続的に細菌が血流に放出されるため、異なる時間に3回以上の血液サンプルを採取し、血流から細菌が継続して検出されるかどうかを確認する必要があります。同定された細菌に対し、さまざまな抗生物質の有効性を調べ、最も適した抗生物質を選択します。人工弁置換術後に心内膜炎を発症した場合、細菌は抗生物質が効きにくい耐性である可能性があります。人工弁置換術を行う前に、感染症予防のために抗生物質が投与されます。抗生物質で感染症が予防できないならば、起こした感染症はおそらく耐性です。

ときに、血液を培養しても細菌を検出できないことがあります。その理由として、特定の細菌の培養には特殊な技術が必要なこと、抗生物質の服用により、感染症は治癒しなくても血液中の細菌数が検出不可能な程度にまで減少していることが挙げられます。ほかの可能性としては、心内膜炎ではなく、症状のよく似た心臓腫瘍(心臓の腫瘍: はじめにを参照)などの病気であることも考えられます。

心臓超音波検査(心エコー)(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)は、心臓弁にあるいぼ状のかたまりと心臓への障害を描出します。経食道心エコー検査(超音波プローブをのどから心臓の真後ろの食道にまで入れて行う検査法)は、90%以上の確率で心内膜炎を検出します。

予防

心臓弁に異常がある人、人工弁を移植した人、先天性心臓異常のある人は、特定の外科的、歯科的、内科的処置を受ける場合には、その前に抗生物質を服用して感染性心内膜炎を予防する必要があります。したがって、外科医、歯科医、その他の医療従事者は、患者に心臓弁障害があるかどうかをあらかじめ知っておく必要があります。その治療による心内膜炎の発症リスクがそれほど高くない場合や、抗生物質による予防が必ずしも効果的ではない場合でも、心内膜炎は非常に重い病気なので、処置の前に抗生物質を投与することは合理的な方法とされています。

予防的な抗生物質の投与を必要とする処置

処置によっては、その実施前に予防的な対策として、感染性心内膜炎を発症する危険性のある人に抗生物質が投与される。

外科的処置

歯科的処置

内科的処置

  • 心臓弁の置換
  • 開胸術
  • 扁桃腺またはアデノイドの切除
  • 肺の手術
  • 腸あるいは胆管の手術
  • 前立腺の手術
  • 抜歯
  • 歯周病のためのさまざまな処置(歯肉形成術、歯石除去、ルートプレーニング[歯根表面を滑らかにする処置]やプロービング[歯周ポケットの測定]のような歯周治療など)
  • 歯科インプラントの埋入処置
  • 抜歯後の歯牙の再植(換歯)
  • 歯根尖手術
  • 歯肉縁下への矯正用バンド装着
  • 歯根膜(歯周靭帯)への麻酔
  • 出血が予想される歯のクリーニング処置
  • 液体、栄養分、薬を供給するためのカテーテルや静脈ラインの使用
  • 気管支鏡検査
  • 膀胱鏡検査
  • 食道の拡張
  • 尿道の拡張
  • 内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(胆道内の胆石を除去するために、X線で確認できる造影剤を注入して行う内視鏡検査)
  • 食道の静脈瘤に対する硬化療法

治療と経過の見通し

治療は普通、最低でも2週間、たいてい6週間にわたって、高用量の抗生物質の静脈内への投与が行われます。このような治療は、ほとんど常に入院中に開始されますが、かかりつけ看護師の支援のもとで、家庭において終わりにすることができます。

特に心臓弁が人工弁の場合、抗生物質だけでは感染症はほぼ治りません。心臓手術で障害された心臓弁を修復あるいは置換し、いぼ状のかたまりを除去する必要があります。人工弁の感染症により、弁が伸びて広がった場合は、弁を置換する緊急手術が必要になります。なぜなら、重度の弁の漏れから致死的な心不全を起こすおそれがあるからです。

治療しなければ、感染性心内膜炎はほとんど致死的です。治療した場合の死亡リスクは、年齢、感染期間、人工弁の有無、病原菌の種類などの要因に依存しますが、積極的な抗生物質による治療によって、ほとんどの人は回復します。

非感染性心内膜炎について

心内膜炎のもう1つのタイプは、非感染性心内膜炎です。この心内膜炎は、障害のある心臓弁に血液のかたまり(血栓)が形成されると発症します。そのような心臓弁障害は、先天異常、リウマチ熱、抗体が心臓弁を攻撃するような自己免疫疾患などにより起こります。まれに、心臓にカテーテルを挿入した結果、心臓弁が障害を受けることがあります。非感染性心内膜炎のハイリスク群は、全身性エリテマトーデス(自己免疫疾患)、肺癌(はいがん)、胃癌、膵臓癌、結核、肺炎、敗血症(重症の血液感染症)、尿毒症(血液中への老廃物の蓄積)、やけどです。非感染性心内膜炎では、感染性心内膜炎と同様に、心臓弁から血液が漏出(逆流)したり、心臓弁が十分に開かなくなったりします。血栓が心臓から流れ出して塞栓になると、脳卒中や心臓発作を起こす危険性が高くなります。

非感染性と感染性の心内膜炎を鑑別するのは困難ですが、治療法が異なるため重要です。心エコーで心臓弁に疣贅が認められるものの、血液試料中に細菌がまったく検出されない場合は、非感染性心内膜炎と診断されます。血栓の形成を予防するために抗凝固薬を使用しますが、その有効性はまだ実証されていません。

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