メルクマニュアル家庭版
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酸素吸入療法

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酸素吸入療法は、急性の肺疾患から回復しつつある患者に対しては短期間、血液中の酸素濃度が常に低い慢性的な肺疾患の患者に対しては長期間にわたって行われます。病院で行われる酸素吸入療法は、慢性的な肺疾患に対してだけではなく、肺炎などの急性の肺疾患や、狭心症(冠動脈疾患: 狭心症を参照)(心筋が十分な酸素を受け取ることができなくなる病気)など、血液中の酸素濃度を高めに維持することで一時的な効果がみられる病気に対しても行われます。

酸素吸入療法を実施すると、酸素濃度が常に低い慢性的な肺疾患の患者はより長期に生存できるようになります。1日の中で、酸素吸入療法を行う時間が長ければ長いほど、より良い結果が得られます。たとえば、12時間酸素吸入を行うと、まったく酸素を吸入しなかった場合よりも長く生存でき、1日中通して酸素吸入を行うと、さらに長期間にわたって生きることができます。長期間の酸素吸入によって、ほかにも、肺疾患が原因の心臓の過労を軽減し、息切れを緩和するなどの効果があります。睡眠時間や運動能力も、ともに改善する傾向がみられます。

慢性的な肺疾患の患者の中には、体を動かしたときだけ酸素濃度が低下する人がいます。その場合、体を動かすときだけ酸素吸入をします。また、睡眠中だけ酸素濃度が低下する場合は、睡眠中だけ酸素吸入をします。

いったん患者の血液中の酸素濃度の危険値がわかれば、パルスオキシメーター(肺と気道の病気の症状と診断: 動脈血ガス分析を参照)を使い、時間ごとに必要な酸素の吸入量を調節します。パルスオキシメーターは無痛で、指先や耳に挟んで血液中の酸素濃度を測定できる簡便な装置です。

長期間にわたって自宅で酸素吸入療法を行うためには、電動の酸素濃縮器(空気中の酸素を濃縮する)、液化酸素装置、高圧酸素ボンベという、3種類の酸素供給システムがあります。液化酸素装置と高圧酸素ボンベは、自宅に酸素を保管するため、大きなタンクを使います。小さく、持ち運びしやすい携帯型の酸素ボンベは、数時間程度の外出の際に必要です。いずれのシステムにも長所と短所があります。酸素は、先が2つに分かれた鼻用チューブ(鼻カニューレ)から持続的に供給されますが、このシステムは非常に多くの酸素を無駄にします。酸素の消費を抑え、効率性を増すために、リザーバーカニューレ(カニューレ内に酸素をためておく)、呼吸同調式のデマンド型システム(息を吸うタイミングに合わせて空気を供給する)、経気管カテーテルなど、数種類の装置が使われています。たいてい、呼吸療法士や医師が、正しい酸素の取り扱い方を患者に指導します。

酸素吸入療法を自宅で行う場合、スタンドなどを使ってタンクを安定させ、人の通る場所を避けて倒れないように設置することが重要です。使わないときは、必ずタンクをしっかり閉じておきます。酸素は爆発を起こすことがあるため、マッチ、ヒーター、ドライヤーなどの火気からタンクを離しておくよう注意が必要です。酸素吸入をしているときは、家の中にいる人はタバコを吸ってはいけません。

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