メルクマニュアル家庭版
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はじめに

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職業性肺疾患は、作業中に有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸いこむことで発症します。吸入した粒子によって肺疾患を発症すると、塵肺(じんぱい)症といいます。吸いこんだ物質が気道と肺のどちらにとどまるか、そしてどのような肺疾患を発症するかは、吸いこんだ粒子の大きさや種類によって異なります。大きな粒子は鼻腔や太い気道の内部にとどまりますが、非常に小さな粒子は肺まで達します。肺で溶けて、血液中に吸収される粒子もあります。溶けない硬い粒子は、体の防御機構によって除去されます。

体には、吸いこんだ粒子を除去する方法がいくつかあります。気道では分泌された粘液が粒子を覆い、せきとともに吐き出しやすくします。その上、気道の表面を覆っている小さな線毛は、吸いこんだ粒子を上の方へ運び、肺の外へ押し出します。肺胞の内部では、マクロファージがほとんどの粒子を飲みこみ、無害化します。

さまざまな粒子が肺を傷つけます。この粒子には、炭素を含む物質や、穀物の粉、綿のほこり、動物の皮膚からはがれた鱗屑(りんせつ)などの生活環境由来の微粒子といった有機物があります。また、アスベストなどの金属塩といった無機物があります。

さまざまな粒子は体内でさまざまな反応を起こします。動物の鱗屑などの一部の粒子は、花粉症や喘息(ぜんそく)に似たアレルギー反応を起こします。他の粒子は、アレルギー反応ではなく、気道や肺胞の細胞に有毒なために障害を起こします。シリカ(石英)の粉やアスベストなどの粒子は慢性的な刺激となって肺組織の瘢痕化(肺線維症(浸潤性肺疾患: 特発性肺線維症を参照))を引き起こします。アスベストなどの有害な粒子は、患者の喫煙歴に関係なく、肺を包んでいる胸膜に中皮腫という癌(がん)を発症し、中でも喫煙者では肺癌を発症します。

職業性肺疾患にかかりやすい人

  • 珪肺症
    • 鉛、銅、銀、金などの鉱山労働者
    • 炭鉱の天井付近でふるいを使うような、一部の炭鉱労働者
    • 鋳物工場の労働者
    • 陶器職人
    • 砂岩や花こう岩の切り出し労働者
    • トンネルを掘る労働者
    • せっけん製造者
    • サンドブラスト使用者
    • 墓石製造者
  • 黒色肺
    • 炭鉱労働者
  • アスベスト肺
    • アスベストの採掘、選鉱、製造を行う労働者
    • 断熱材などアスベストが含まれる資材を扱う建設現場の作業員
    • 造船所の作業員
  • ベリリウム症
    • 航空宇宙産業に携わる人
    • 鋳造などの冶金労働者
  • 化繊肺
    • 合成繊維のフロッキング工程の作業員
  • 職業性喘息
    • 穀物、ベイスギの材木、ヒマの実、イソシアン酸塩(ウレタン)、染料、抗生物質、エポキシ樹脂、茶、洗剤の製造過程で使用する酵素、麦芽、革製品、ラテックス、宝石、自動車の車体修理で使用する研磨材および塗料、動物、貝類、刺激性のガス、蒸気、霧などを扱う労働者
  • 綿肺症
    • 綿、麻、ジュート(黄麻)、亜麻を扱う労働者
  • 良性塵肺症
    • 溶接工
    • 鉄の採掘を行う労働者
    • バリウムを扱う労働者
    • スズを扱う労働者
  • サイロフィラー病
    • 農場で働く人
  • 過敏性肺炎
    • 事務職員(空調装置が真菌や細菌などで汚染されているため)
    • プールおよび入浴施設などで働く人(汚染された水しぶきによる)
    • 農場で働く人、キノコを栽培する人、鳥類を飼育する人、イソシアネートにさらされる労働者

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