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特発性肺線維症

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特発性肺線維症は、発症原因の不明な、ある特殊な肺線維症です。

肺線維症の約半数は、その発症原因がわかりません。このような肺線維症を特発性肺線維症といいます。「特発性」とは「原因不明」という意味です。

特発性肺線維症では、肺が長期間にわたって繰り返し損傷されます。この損傷が慢性的な炎症を起こし、やがて肺線維症を引き起こします。

症状と診断

症状は肺の損傷の程度、病気の進行する速さ、肺感染症や肺性心(肺高血圧によって発症する肺性心についてを参照)などの合併症があるかどうかによって決まります。運動時の息切れ、せき、持久力の低下などの主な症状が、知らないうちに始まります。体重減少や疲労感もよくみられます。ほとんどの患者では、数年かけて症状は悪化していきます。

肺線維症が進行すると、血液中の酸素濃度が低下し、それに伴って皮膚の色が青っぽく変化するチアノーゼが生じたり、指先が太くばち状になる(「ばち指」の見分け方を参照)ことがあります。心臓に負担がかかるため右心室が肥大し、肺性心という心不全を起こします。聴診器をあてると、パチパチという水泡音が聞こえます。この音がマジックテープをはがすときの音に似ているため、マジックテープの製造会社名を取って、べルクロラ音などと呼ばれることもあります。

胸部X線検査では、主に両肺の下側に、広範囲にわたって小さな白い線が、しばしば網の目状でみられます。CT(コンピューター断層撮影)検査は、X線検査より精度が高いので、病気の早期発見ができ、診断もより的確です。一般的に、CT検査では肺の下方に斑点や白い線が現れます。病気が進行した部分では、厚い瘢痕化がハチの巣状になっているのが観察されます。肺機能検査(肺と気道の病気の症状と診断: 肺機能検査を参照)では、肺が吸いこめる空気の量が正常値よりも低下していることが示されます。血液中の酸素濃度は、普通の速度で歩く程度の最低限の運動でも低下が認められ、病気が進行すると、安静時でも低下します。

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特発性肺線維症

特発性肺線維症

診断を確定するために、気管支鏡(肺と気道の病気の症状と診断: 気管支鏡検査を参照)を使って肺組織の小片を採取し、顕微鏡で調べる肺生検を行います。より大きな組織のサンプルが必要になることも多く、その場合は手術か、胸腔鏡(肺と気道の病気の症状と診断: 胸腔鏡検査を参照)を使って採取します。

血液検査で診断は確定できませんが、同じような炎症や瘢痕化を生じる別の病気を見つけるため補助的に実施します。特定の自己免疫疾患を調べるため、血液検査を行うこともあります。

心電図や心臓超音波検査(心エコー)などの他の検査は、肺疾患によって心臓に変化が起きていないかどうかを確認するために行います。

治療と経過の見通し

胸部X線検査や肺生検で、瘢痕化が広範囲ではないことがわかれば、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬で治療します。患者への有効性は胸部X線検査、CT検査、肺機能検査で観察されます。大量のプレドニゾロンを約3カ月間投与します。続く3カ月間で投与量を徐々に減らし、さらに次の6カ月間はごく少量を投与します。プレドニゾロンで効果が認められない患者の少数は、アザチオプリンやシクロホスファミドで改善することがあります。残念なことに、ステロイド薬による治療は、ほとんどの患者に効果がありません。唯一の有効な治療は、インターフェロンガンマ1bで、肺の内部の瘢痕形成を抑えることが明らかになっています。

その他の治療は、症状の緩和が目的です。血液中の酸素濃度が低い場合には酸素吸入療法、感染症には抗生物質、肺性心を起こす心不全には薬物療法を行います。肺の移植は片肺移植が中心ですが、重症の特発性肺線維症の患者での成功例はあります。

経過の見通し(予後)はさまざまです。ほとんどの場合はさらに悪化します。診断後の平均生存期間は4〜6年です。数年以上生存することもあれば、数カ月以内に死亡することもあります。

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