メルクマニュアル家庭版
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セクション

症状

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痛み

痛みは、ほとんどの筋骨格系のけがや病気で出現する主要な症状です。傷害を受けた部位によって、痛みの程度は軽度から重度まであり、痛みを感じる範囲も局所から広範囲までさまざまです。けがによる痛みはほとんどの場合、急に出現して短期間で治まりますが、関節炎のような慢性の病気では長期にわたって続くこともあります。

骨の痛みは、深く刺しこむような痛みや鈍い痛みであることが多く、ほとんどはけがが原因で起こります。また、感染症や腫瘍(しゅよう)による場合もあります。

筋肉の痛みは、骨の痛みと比べて強さはそれほどでもありませんが、きわめて不快なこともあります。たとえば、ふくらはぎの筋肉のけいれん(痛みを伴う筋肉の収縮の持続)を「こむら返り」といいますが、このときにはかなり強い痛みを伴います。筋肉の痛みは、スポーツによる外傷、自己免疫反応(自己免疫疾患を参照)、筋肉への血流減少、感染症、腫瘍の浸潤などによって筋肉が損傷を受けた場合に起こります。

関節のけがや病気では、患部が硬直し、関節炎によくみられる「うずくような痛み」が生じます。関節の痛みはさまざまな原因で起こるため、診断の確定は通常、他の症状の有無や臨床検査の結果に基づいて行われます。たとえば、ライム病は関節痛と同心円状の発疹が特徴で、血液検査ではライム病の病原菌に対する抗体が陽性になります。痛風は、足の親指の付け根の関節が痛むのが特徴で、血液検査では一般に尿酸値が高くなっています。

痛みはときに、手のひらの腱にも起こることがあります(ばね指(ばね指とはを参照))。

炎症

炎症は、腫れ、熱感、圧痛、疼痛、機能障害を引き起こします。筋骨格系に広範囲の炎症が生じると、微熱が出ることがあります。炎症は、感染症や自己免疫疾患などさまざまな病気でよくみられる関節の反応です。関節リウマチは、自己免疫疾患の1つで、関節の炎症を引き起こします。関節の腫れは、関節内に液体がたまることでよく起こります。そうなると関節の可動域が制限され、機能の低下が起こります。

筋肉の炎症(筋炎)は、ウイルス感染などさまざまな病気で起こります。他の炎症と同様、筋肉の炎症でも、痛みや腫れ、熱感、圧痛、機能障害が起こり、筋力が低下します。

筋力低下

筋力低下は、筋骨格系のいずれの部位が損傷を受けても起こることがあります。筋肉そのものが収縮できなければ、筋力は低下します。神経が適切に筋肉を刺激しなければ、筋肉の収縮は弱くなります。また、関節が硬くなって正常に動かすことができなければ、筋肉も適切には動きません。炎症による痛みが原因で筋肉が適切に動かず、筋力低下が起こる場合もあります。神経や関節、筋肉のいずれか1カ所が損傷を受けた場合は、筋力低下は通常、1つの関節または片方の腕か脚に起こります。広範囲にわたる神経や筋肉の病気では、筋力低下は全身的になります。また、筋肉、腱、骨、関節の痛みによって力が入らないため、筋力低下を起こしているようにみえるケースもあります。

筋力低下は、筋肉のけがや病気でよくみられる症状で、全身性の病気で起こる場合もあります。人は、疲れたときや体が弱ったときなどに筋力低下を訴えますが、医学的な意味での筋力低下とは、本人が最大限に力を入れても正常な筋力が出せない状態をいいます。つまり、(1)筋肉そのものに問題がある場合(たとえば、筋ジストロフィ(筋ジストロフィとその関連疾患: はじめにを参照)や多発性筋炎(結合組織の自己免疫疾患: 多発性筋炎と皮膚筋炎を参照))、(2)筋肉の動きをコントロールしている神経系に問題がある場合(たとえば、脳卒中や脊椎損傷後の麻痺[まひ])、(3)神経筋接合部と呼ばれる神経と筋肉の結合部分の障害(たとえば、重症筋無力症)などで起こります。人はだれでも年をとると筋力が低下することがあります。これは、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)によるものです(筋骨格系のしくみと働き: 加齢による影響を参照)。医師が筋力低下を表す際に「無力症」という言葉を使用することがありますが、単なる筋力低下というよりは衰弱や消耗という意味で使われます。

筋力低下の分類

原因

解説

筋肉の病気 筋ジストロフィ 一群の遺伝性筋疾患で、筋力低下の程度はさまざま
  感染症または炎症性疾患(急性ウイルス性筋炎、多発性筋炎) 筋肉の圧痛、疼痛、筋力低下
神経筋接合部の病気 重症筋無力症、クラーレ中毒、イートン‐ランバート症候群、殺虫剤中毒、ボツリヌス中毒、ジフテリア感染症 複数の筋肉の筋力低下や麻痺
脊髄の損傷 首や背中の外傷、脊髄腫瘍、脊柱管狭窄症、多発性硬化症、横断性脊髄炎、ビタミンB12の欠乏 背中の痛みと、脊髄の損傷レベル以下の領域における腕や脚の筋力低下、進行性の感覚麻痺が発生。ときに排便・排尿障害、性機能への影響
脊髄の神経細胞の変性 筋萎縮性側索硬化症 進行性の筋萎縮と筋力低下、ただし感覚低下を伴わない
脊髄神経根の損傷 頸部または腰椎の椎間板ヘルニア 首の痛み、腕の筋力低下としびれ、腰から脚にかけての痛み(座骨神経痛)、脚の筋力低下としびれ
単一神経の障害(単神経障害) 糖尿病性神経障害、局所的圧迫 筋力低下、筋肉の麻痺、感覚低下が損傷の生じた神経の支配領域に発生
複数の神経の障害(多発神経障害) 糖尿病、ギラン‐バレー症候群、葉酸の欠乏、その他の代謝性疾患 筋力低下、筋肉の麻痺、感覚低下が損傷の生じた神経の支配領域に発生
コルチコステロイド薬の使用 コルチコステロイド薬による筋障害 通常は殿部から始まり、徐々に全身の筋肉へ広がる筋力低下
血中カリウム値の低値 低カリウム血症による筋障害 全身の脱力感が急激に出現
甲状腺ホルモン値の異常 甲状腺ホルモン高値(甲状腺機能亢進)または甲状腺ホルモン低値(甲状腺機能低下) 甲状腺ホルモンが高値の場合は脚よりも肩の筋力低下が顕著に出現。甲状腺ホルモンが低値の場合は脚の筋力低下の方が顕著となる
ビタミンDの欠乏 骨軟化症 脚の筋力低下を伴う背中の痛み、まれに全身の痛み
心理的問題 抑うつ、架空の症状、ヒステリー(転換反応) 全身の筋力低下の訴え、神経損傷の認められない麻痺

関節のこわばり

関節のこわばりは、関節炎でよくみられる症状です。関節の病気になると、関節の動きが悪くなってこわばりが出てきます。たとえば関節リウマチでは、朝に関節がこわばりがちです。関節のこわばり感は起床時に強く、起床後1〜2時間体を動かしていると徐々に軽くなります。靭帯の伸びや断裂があると、関節のゆるみが増大して過度の屈曲や異常な屈曲を起こし、関節部が不安定になります。関節のゆるみは、皮膚弛緩症(ひふしかんしょう)(遺伝性結合組織疾患: 弛緩性皮膚症を参照)と呼ばれる結合組織の障害によっても起こります。

関節音

たとえば、関節のきしむ音やポキポキという音は、多くの人が経験していますが、関節に何らかの障害が生じたときにも起こります。たとえば、変形性関節症では、膝蓋骨の下部が損傷を受け、きしみ音がします。顎関節症の人は、口を開閉させるとあごがカクカクと音をたてます。

関節可動域

痛みのため関節を動かすのがつらくなると、関節可動域は狭くなります(関節が炎症を起こした場合など)。関節自体が病気によって損傷を受けたり、長時間動かさずにいたため関節が固まってしまったときに、このような状態になります。たとえば、脳卒中によって腕が麻痺して動かせなくなった人では、定期的に腕の曲げ伸ばしを行わないと、肩やひじの関節が固まってしまうことがあります。

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