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線維筋痛

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線維筋痛はいくつかの病気の総称ですが、いずれも筋肉、腱、靭帯などの軟部組織にうずくような痛みとこわばりを伴います。

線維筋痛という名称は、いくつかの関連疾患を表す際に使用されます。これらの病気には、全身性線維筋痛、原発性線維筋痛症候群、続発性線維筋痛症候群、限局性線維筋痛、顔面筋疼痛症候群などがあり、それぞれ異なる意味がこめられています。以前は、これらの病気はまとめて結合組織炎や線維筋炎症候群などと呼ばれていましたが、炎症は起こっていないので組織炎、筋炎といった呼び方は現在では使われなくなりました。

全身性線維筋痛は、女性が男性よりも約7倍多く発症し、痛みとこわばりが広がり、全身が痛む病気です。原発性線維筋痛症候群は、全身性線維筋痛のバリエーションの中では最も多く、若いまたは中年期の女性に起こり、基礎疾患がありません。

続発性線維筋痛症候群は全身性線維筋痛の1種で、甲状腺機能低下症などの基礎疾患によって起こります。全身性エリテマトーデスや関節リウマチといった病気が線維筋痛を合併することもありますが、これらの病気は線維筋痛の原因となる基礎疾患ではありません。

限局性線維筋痛は、特にあご、首、肩の筋肉など数カ所の特定の領域で疼痛とこわばりを生じます。この病気は男性に幾分多く発症します。おそらく、職業やスポーツなどで、男性の方がより肉体的に激しい活動に従事することが多いためと考えられています。ときには、限局していた痛みが徐々に広がって、全身性線維筋痛になることもあります。顔面筋疼痛症候群は限局性線維筋痛の1種で、疼痛はさまざまな部分に起こります。このうち、側頭下顎部(顎関節の障害を参照)に起こるタイプでは、顔面の両側にある咀嚼(そしゃく)筋が侵されて、痛みと圧痛を生じます。

線維筋痛は、生命にかかわる病気ではありませんが、持続する痛みは、生活に支障を来します。

原因

全身性線維筋痛の原因は通常は不明です。原発性線維筋痛症候群も原因は不明です。全身性線維筋痛は、肉体的または精神的ストレス、睡眠不足、反復する疲労、外傷、慢性的に湿気や寒冷にさらされる気候、などによって悪化します。続発性線維筋痛症候群では、原因となる基礎疾患がわかっています。この症候群は、ある感染症(ライム病など)や甲状腺機能低下などに合併して起こります。そのほか、関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった自己免疫疾患と同時に発症したり、これらの病気が線維筋痛の症状を増強することがあります。

限局性線維筋痛は、しばしば仕事やレジャーで筋肉を酷使した結果として起こります。顔面筋疼痛症候群のうち側頭下顎部に疼痛が起こるタイプは、特に就寝時に歯を食いしばったり歯ぎしりをすることが原因で起こります。

症状

全身性線維筋痛の場合、うずきを伴うこわばりや痛みは徐々に現れます。限局性線維筋痛では、痛みは筋肉に負荷がかかった後に突然起こり、鋭く痛みます。どちらも痛みは疲労、負荷、酷使によって悪化します。指先で押すと圧痛を感じる独立した特定の筋肉の領域があります。このような部位を圧痛点または発痛点といいます。どちらも圧痛がありますが、発痛点では痛みが遠くへ放散します。発作の間は、筋肉は硬くなりけいれんを起こすこともあります。筋肉、腱、靭帯といった軟部組織が侵されます。首、肩、胸郭、腰、太ももは、特に関節も痛みを起こしやすい部分です。

原発性線維筋痛症候群は、広範囲の痛みを起こすのが典型的で、睡眠不足、不安感、うつ状態、疲労、過敏性腸症候群(便通障害: 過敏性腸症候群を参照)などの症状をしばしば伴います。

顔面筋疼痛症候群で側頭下顎部が痛むタイプでは、口が完全には開けられなくなったり、また、口を開けると痛むようになります。就寝中に歯を食いしばったり歯ぎしりをしていると、起床時に頭痛を引き起こすこともありますが、昼間に活動しているうちに治まります。ときには、歯の食いしばりや歯ぎしりは1日中続きます。

診断と治療

線維筋痛は、痛みの位置と発症パターン、圧痛点の存在に基づいて診断します。医師は、圧痛点で痛みを感じるか、発痛点から痛みが他の部位に広がるかどうか、体の指定された領域をしっかり押してみます。全身に18カ所ある圧痛点のうち11カ所以上に圧痛があれば線維筋痛と診断します。

線維筋痛の圧痛点

線維筋痛の圧痛点

線維筋痛では圧痛がみられる圧痛点があります。図に示す18カ所のうち少なくとも11カ所以上に圧痛があれば線維筋痛と診断されます。

通常は非薬物療法が最も有効です。軽度であれば、ストレスを減らすことで症状は軽くなります。筋肉のストレッチや徐々に強度を上げるコンディショニング運動、睡眠の質の改善、患部を温めること、軽いマッサージ、暖かい服装を保つなども有用です。

アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、有効性が限られます。ときには局所麻酔薬(リドカインを単独、またはヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド薬と併用して)を直接圧痛点や発痛点に注射する方法もありますが、繰り返し注射に頼るべきではありません。うつ状態の改善というよりも睡眠の質を改善するために、低用量の三環系抗うつ薬(うつ病と躁病: うつ病の主な治療薬を参照)を就寝の1〜2時間前に服用するよう処方されることがあります。

側頭下顎部タイプの顔面筋疼痛症候群には、プラスチック製のマウスガードを使用して歯がかみ合わないようにします。これによって歯の食いしばりや歯ぎしりを予防します。マウスガードができあがるまでの間、痛みを緩和するためにベンゾジアゼピン系や三環系抗うつ薬が就寝前に投与されることもあります。非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンも有用です。病状は持続することが多いので、短期間の使用を例外として、オピオイドは使うべきではありません。夜間の歯の食いしばりや歯ぎしりをしていることは本人に教えてあげるようにしましょう。硬い食べものや、ガムをかむことは控えます。理学療法、バイオフィードバックを応用したリラクセーション、心理カウンセリングが役に立つ人もいます。ほとんどの場合、治療をしなくても2〜3年で顕著な症状は治まります。

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