メルクマニュアル家庭版
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滑液包炎

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滑液包は、関節にある少量の液体(滑液)を含んだ平らな袋で、皮膚、筋肉、腱、靭帯などと骨がすれる部分に位置し、まさつを減らす働きがあります。滑液包炎は滑液包の痛みを伴う炎症です。

滑液包は、正常なら内部に非常に少量の液体を含んでいます。しかし、けがをしたり酷使されると、炎症を起こして中の滑液が増加します。

滑液包炎では、無理な力が加わったり使い過ぎによって滑膜が刺激されて炎症が起こります。外傷、痛風、偽痛風、関節リウマチ、黄色ブドウ球菌による感染症などが原因でも起こりますが、原因はしばしば不明です。肩が最も起こりやすい部位ですが、ひじ、股関節(転子包炎)、骨盤、膝(ひざ)、つま先、かかと(アキレス腱滑液包炎(足の障害: アキレス腱滑液包炎を参照))にもよく炎症が起こります。

症状

滑液包炎は痛みと動作制限を起こしますが、特異的な症状は炎症を起こした滑液包の位置によって異なります。たとえば肩の滑液包が炎症を起こすと、体の横から腕を上げる(ジャケットを着るときのような動作)と痛みがあり、腕を上げにくくなります。

急性滑液包炎は突然発症します。炎症部位を動かしたりさわったりすると痛みます。膝やひじなど、滑液包が皮膚表面に近い所にある場合は、赤く腫れて見えます。感染症や痛風(痛風と偽痛風: 痛風を参照)が原因で起こった急性滑液包炎は、特に痛みが激しく発赤が生じ、さわると熱感があります。

慢性滑液包炎は、以前の急性滑液包炎の発作や、けがの繰り返しによって起こることがあります。一部では、滑膜の内側の壁が肥厚して、異常な物質が固形化し、白亜質のカルシウムの沈殿物がたまります。損傷を受けた滑液包は、無理な運動や負荷がかかると、炎症を起こしやすくなります。痛みや腫れが長期間続くと関節を動かしにくくなり、筋肉が萎縮して筋力が低下します。慢性滑液包炎の発作は2〜3日から数週間続き、しばしば再発します。

診断と治療

滑液包の周囲をさわると痛みがあり、その関節を動かすと痛む場合は滑液包炎を疑います。滑液包が明らかに腫れていれば、針と注射器で滑液を抜いて炎症(感染症や痛風)の原因を調べます。通常、X線検査は役立ちません。しかし、慢性滑液包炎の場合、これでカルシウムの沈着を発見できます。

非感染性の急性滑液包炎では、治療は、(1)安静、(2)炎症を起こした関節の一時的な固定、(3)患部を氷で冷やす、(4)非ステロイド性抗炎症薬(痛み: 非ステロイド性抗炎症薬を参照)の投与などです。ときには、オピオイドなどの強い鎮痛薬が必要なこともあります。滑液包が感染していなければ、しばしば局所麻酔薬とステロイド薬の混合液を直接滑液包に注射します。この治療で痛みはすぐに、または数時間から数日以内に症状が軽減します。注射は数カ月後に繰り返す必要があります。

重度の急性滑液包炎では、プレドニゾロンなどのステロイド薬を数日間経口で投与します。その後痛みが治まれば、関節の可動域を増すための運動を行います。

感染がなければ慢性滑液包炎でも同様の治療が行われますが、この場合、安静と患部の固定はそれほど有用ではありません。まれに肩の滑液包内に多量のカルシウムが沈着することがあります。この場合は、結晶を崩してから口径の太い注射針で抜きます。この処置は外来で行われます。大きな沈着物は、手術での切除が必要な場合もあります。

肩の滑液包炎の障害は、ステロイド薬の注射を何度か繰り返して緩和し、肩の機能を保つための理学療法を集中的に行います。運動は弱くなった筋力を強化するのにも、関節の可動域を正常まで回復させるのにも有用です。滑液包炎は、痛風や関節リウマチなどの基礎疾患や、慢性的な酷使を修正しなければ、しばしば再発します。

感染している滑液包は排液して、適切な抗生物質を投与しますが、しばしば黄色ブドウ球菌に有効なものが使われます。

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