メルクマニュアル家庭版
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アキレス腱炎

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アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとを結ぶ丈夫な腱であるアキレス腱が、炎症を起こした状態です。

ふくらはぎの筋肉とアキレス腱はランニング中の動作のうち、かかとの着地後に足の前部を地面につける動きや、反対側の足が着地する直前に、つま先をけり出すと同時にかかとを上げる動きを担っています。

アキレス腱炎は、この腱にかかる負荷が腱の強さを上回ったときに生じます。下り坂では、足の前部を地面につけるまでの動かす距離が長くなるため、アキレス腱により多くの負荷がかかります。上り坂では、けり出しの際にかかとを上げるために、ふくらはぎの筋肉は平地での運動時より大きな力を出す必要があるため、やはりこの腱に負荷がかかります。ヒールカウンター(靴の後部のかかとを包む部分)が柔らかい靴をはくと、靴の中でかかとが必要以上に動いてしまうため、アキレス腱に不均衡な負荷がかかって断裂を起こしやすくなります。底が硬い靴をはくと、足指の付け根が曲がらないため、つま先がけり出す直前にアキレス腱にかかる負荷が大きくなります。

機能的・構造的な各種の異常があると、アキレス腱の損傷が起こりやすくなります。足の小指側に体重がかかりすぎる(回内)、着地の際の接地部位がかかとの後方すぎる(ランニングシューズの底を調べ、かかとのどの部分が最もすり減っているかでわかる)、O脚である、太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)やふくらはぎの筋肉が硬い、土踏まずのアーチが高い、アキレス腱が硬い、かかとの変形がある―といった異常がこれに該当します。アキレス腱は、周囲をさやで包まれて保護されています。さやと腱の間には脂肪の薄い層があり、これによってアキレス腱は円滑に動くことができます。アキレス腱が傷つくと、腱とさやの間に瘢痕(はんこん)が形成され、腱が動くたびにさやが引っぱられるようになります。

痛みが主な症状で、じっとしていた後に動きを始めるときに最もひどく痛みます。痛みやこわばりがあっても、歩いたり走ったりしているうちに痛みは軽減します。これは、動きとともにアキレス腱を包むさやの温度が上昇して柔軟になり、腱が動きやすくなるためです。

痛みを無視して走り続けていると、しなやかだったアキレス腱はやがて硬い瘢痕組織で占められ、運動している間も絶えず痛むようになります。こうなってしまえば、回復の見込みはほぼありません。治療にあたって重要なのは、痛みが続く間はランニングや自転車こぎを控えることです。その他の治療は、考えられる原因や損傷の素地となった状態によって異なります。底が柔軟な靴を選び、かかとの部分が厚くなった装具を挿入し、腱の張力を減らしてかかとを安定させます。足が上に反っているとアキレス腱への血流量が減りますが、これはかかとにウェッジの入った靴をはくことで解消されます。ハムストリングのストレッチ運動は、痛みがなくなったらすぐに開始できます。足指を上に反らせるといった、アキレス腱を強化する運動も有用です。ランニングを再開しても、アキレス腱が完治するまでの期間(数週間から数年間)は、上り坂や下り坂を速いペースで走ってはなりません。外科手術が必要となる場合もあります。また手術の代わりに、結石の破砕などに使われるのと同様の体外衝撃波療法が行われることもあります。

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