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脳腫瘍

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脳腫瘍は非癌性(良性)または癌性(悪性)の増殖組織で、脳で発生したものと、体の別の部分から脳へ広がった(転移した)ものがあります。

脳腫瘍は男女ともに発生しますが、男性あるいは女性のどちらかにより多く発生するものもあります。また、高齢になるほど発生しやすくなります。

脳腫瘍には、原発性と続発性があります。原発性脳腫瘍は、脳の内部や脳に隣接する細胞に由来する腫瘍で、悪性のものも良性のものもあります。続発性脳腫瘍は、体の別の部分で発生して脳へ転移した腫瘍で、常に悪性です。

良性の腫瘍は、発生した場所の細胞または組織の名前をつけて呼ばれます。たとえば、「血管芽細胞腫」は血管で発生した腫瘍を指します。非癌性腫瘍の一部は、胎児細胞に由来しており、出生時から存在していたものもあります。

悪性の脳腫瘍は、体の別の部分で発生した癌が脳へ転移することが最も多く、転移は1カ所のことも複数の異なる部位のこともあります。乳癌、肺癌、消化器癌、悪性黒色腫、白血病、リンパ腫など、多くの癌が脳へ転移します。脳のリンパ腫は、エイズ患者に多く発生します。理由は不明ですが、正常な免疫システムをもつ人にも脳リンパ腫が増えています。悪性の原発性脳腫瘍のうち最も多いのが、神経膠腫(グリオーマ)です。

脳内や脳の近くに由来する腫瘍

腫瘍の種類

発生場所

悪性度

原発性脳腫瘍に占める割合*

罹患する人

腺腫(アデノーマ) 下垂体の細胞 大部分が非癌性 10% 成人
脊索腫 脊柱の胎児細胞 非癌性だが、侵襲性 1%未満 成人(出生時から存在する)
頭蓋咽頭腫 下垂体の胎児細胞 大部分が非癌性 1%未満 成人(出生時から存在する)
類皮嚢胞と類表皮腫 皮膚の胎児細胞 非癌性 1%未満 小児と成人(類皮嚢胞は出生時にすでに存在)
上衣細胞腫 脳室の内面を覆う組織の細胞 大部分が非癌性 約1%(小児期脳腫瘍の約9%) 小児
生殖細胞腫瘍(胚細胞腫を含む) 松果体の近くの胎児細胞 癌性または非癌性 1% 小児(胚細胞腫は出生時に存在)
神経膠腫     65%  
星状細胞腫
神経細胞を支える組織の細胞(グリア細胞) 癌性または非癌性(初期には非癌性の星状細胞腫の一部が、3〜5年後に癌性の未分化星状細胞腫になる)   小児と成人
希突起グリオーマ
脳神経線維を取り巻く髄鞘をつくる細胞(希突起グリオーマ細胞) 通常は非癌性だが、癌性の未分化希突起グリオーマになることがある   小児と成人
多形グリア細胞腫
低分化のグリア細胞と希突起膠細胞 癌性   成人
血管芽腫 血管のもとになる胎児細胞 非癌性 1〜2% 小児と成人
髄芽腫 小脳の胎児細胞 癌性 (小児期脳腫瘍の25%) 小児(通常は思春期前)と、まれに成人
髄膜腫 脳を覆う髄膜の細胞 非癌性だが、再発の可能性あり 20% 成人
骨腫 頭蓋骨 非癌性 2% 小児と成人
骨肉腫 頭蓋骨 癌性 1%未満 小児と成人
松果体腫 松果体の細胞 非癌性 1%未満 小児
下垂体腺腫 下垂体の細胞 非癌性 2% 小児と成人
肉腫 結合組織 癌性 1% 小児と成人

*他に特別な事情のない場合。

症状

脳腫瘍の症状は、良性か悪性かにかかわらず現れ、多くの異なるものがあり、突然発症するものも、徐々に進行するものもあります。どの症状が最初に現れ、どのように進行するかは、腫瘍の大きさ、増殖速度、発生部位によって異なります。脳の部位によっては、たとえ小さな腫瘍でも壊滅的な影響をもたらすこともあれば、腫瘍が比較的大きくなるまで症状が現れないこともあります。当初は、腫瘍によって神経組織が圧迫されたり、引っぱられたりしても、これらの変化をうまく代償できるので、症状は現れません。脳組織が破壊されたり、頭蓋内圧が上昇して脳を圧迫しはじめると症状が現れてきます。腫瘍が拡大するにしたがって頭蓋内圧が上昇します。どんな脳腫瘍でも、最終的には頭蓋内圧が上昇します。

体の別の部分で発生した癌が脳へ転移した場合は、元の癌による症状も現れます。たとえば肺癌が転移した場合は、脳腫瘍による症状に加えて、血の混じったたんを伴うせきが出ます。

頭痛(頭痛: はじめにを参照)のほとんどは脳腫瘍によるものではありませんが、脳腫瘍の最初の症状が頭痛であることはしばしばあります。脳腫瘍による頭痛は時間とともにより頻繁に起こるようになり、最終的には痛みが常に持続するようになります。横になっているときに悪化することが多く、眠っていたのに眼が覚めることもあります。徐々に成長する腫瘍では、患者が目覚めたときに悪化するのが典型的です。このような特徴的な頭痛が、それまで頭痛がなかった人に起きた場合は、脳腫瘍が考えられます。

脳腫瘍は、人格の変化を起こします。たとえば、内向的で気分が変わりやすく、しばしば仕事がうまくいかなくなります。患者は眠気や混乱を感じ、ものごとを考えられなくなったりします。このような症状は、しばしば本人よりも家族や同僚が気づきます。特にうつ状態と不安感のどちらかが突然現れたような場合には、脳腫瘍の初期症状である可能性があります。奇妙な行動が起こることは、まれです。高齢者では、ある種の脳腫瘍による症状が、痴呆の症状と誤解されることがあります(せん妄と痴呆: 痴呆を参照)。

脳腫瘍のその他の一般的な症状には、めまい、平衡感覚喪失、協調運動障害などがあります。後日、頭蓋内圧の上昇に伴って吐き気、嘔吐、眠気、嗜眠(しみん)、間欠熱、昏睡が起こります。また一部の脳腫瘍は、けいれん発作を引き起こします。

腫瘍に障害された脳領域に応じて(脳の機能障害: 部位別の機能障害を参照)、腕、脚、体の片側の筋力低下や麻痺(まひ)が起こり、熱感、冷感、圧力、軽い接触やとがったものに触れたときに感じる皮膚の感覚能力が損なわれます。言葉を理解して表現する能力を失うこともあります。腫瘍は聴覚、嗅覚、視覚にも影響を与え、複視や失明などの症状が現れます。たとえば下垂体腫瘍は、そばにある視神経(第2脳神経)を圧迫するため、周辺視力が損なわれます。腫瘍が脳幹を圧迫すると、脈と呼吸が異常に速くなったり遅くなったりします。これらの症状がどれか1つでもあれば、重大な病気が考えられるので、ただちに医師の診察を受けてください。

腫瘍によって脳室を通る脳脊髄液の流れが遮られると、脳脊髄液がたまって脳室が拡大し水頭症を引き起こして、頭蓋内圧が増大します。水頭症になると、頭蓋内圧上昇などに加えて、眼球が上方に動きにくくなる症状が現れます。また乳幼児では、頭部が拡大します。

頭蓋内圧が非常に高まっても、頭蓋骨は広がることができないため、脳が下方へ押されて脳ヘルニア(ヘルニア:脳の圧迫を参照)を生じます。脳ヘルニアは、大きく分けて2種類あります。テント切痕ヘルニアでは、脳の上部(大脳)が、脳の下部(小脳と脳幹)と仕切られている比較的硬い組織の小さな開口部(テント切痕)から押し出されます。このタイプのヘルニアでは意識が低下し、腫瘍と左右反対側の体に麻痺が起こります。

小脳扁桃ヘルニアでは、脳の下部に発生した腫瘍が、小脳の最下部(小脳扁桃)を頭蓋の底にある開口部(大後頭孔)へ押し出します。その結果、呼吸、心拍、血圧をコントロールしている脳幹が圧迫されて機能不全を起こします。すぐに診断して治療しなければ、小脳扁桃ヘルニアは急速な昏睡と死亡をもたらします。

いくつかの脳腫瘍に一般的な症状

  • 星状細胞腫と希突起膠腫
    星状細胞腫と希突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ)には、ゆっくりと増殖して初期にはけいれんしか起こらないものもあれば、低形成星状細胞腫や低形成希突起膠腫などのように、急速に増殖する癌性のものもあります。これらは、さまざまな脳機能不全の症状を引き起こします。多形膠芽腫は星状細胞腫の1種で増殖が速いため、脳圧が上昇して頭痛や思考力の低下をもたらします。脳圧が非常に高くなると、眠気からやがて昏睡に至ります。
    腫瘍の発生場所によって、症状はさまざまです。前頭葉(額の後ろ)の腫瘍は、筋力低下と人格変化を引き起こします。もし優位な方の大脳半球(大部分の人は左半球、左利きの人には右半球が優位の人もいる)の前頭葉に発生した場合は、言語障害が起こります。頭頂葉(前頭葉の後ろ)に腫瘍ができると、感覚の変化や喪失が起きたり、あるいは腫瘍と反対側の眼の視力が失われることもあります。側頭葉(耳の上)の腫瘍はけいれん発作を起こし、優位な大脳半球にできた場合は言語の理解と表現の能力が失われます。後頭葉(頭の後ろ側)の腫瘍では、両眼の視力が部分的に失われます。
    小脳(首の後ろ側の上)の近くにできる腫瘍のうち、特に小児の髄芽腫は眼球運動の異常、協調運動の障害、不安定な歩行を引き起こし、難聴やめまいをもたらすこともあります。腫瘍が脳脊髄液の出口をふさぐために、脳室内に液がたまって脳室が拡大し(水頭症と呼ばれる状態)、頭蓋内圧が増大します。その結果、頭痛、嘔吐、吐き気、眼球を上方向に動かせなくなる障害、嗜眠、脳ヘルニアによる昏睡などが起こります。乳児では、頭部が拡大します。
  • 髄膜腫
    髄膜腫は普通は癌性ではありませんが、摘出後に再発する可能性があります。女性に多い腫瘍で通常は40〜60歳で発症しますが、小児期や晩年に発症することもあります。この腫瘍により脱力やしびれ、けいれん発作、嗅覚障害、視力異常が起こります。腫瘍が非常に大きくなると記憶喪失を含む精神の衰退を来し、痴呆のようになります。
  • 松果体腫瘍
    松果体腫瘍は小児期に発症するのが普通で、しばしば性的早熟を起こします。腫瘍が脳の周囲の脳脊髄液の排出を妨げるために、水頭症が起こります。松果体腫瘍のうち最も多いのが、胚細胞腫です。
  • 下垂体腫瘍
    頭蓋骨の基底部にある下垂体は、体内の多くの内分泌系をコントロールしています。下垂体の腫瘍(下垂体腺腫)は通常は非癌性です。腫瘍は異常に大量の下垂体ホルモンを分泌します。影響は大量に分泌されるホルモンの種類によります。
    • 成長ホルモン:背が伸びすぎる巨人症や、頭部、顔、手足、胸が不均衡に大きくなる先端巨大症
    • 副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン):クッシング症候群
    • 甲状腺刺激ホルモン(TSH):甲状腺機能亢進
    • 黄体刺激ホルモン(プロラクチン):女性では月経が止まったり(無月経)、授乳中でない女性に母乳が出たり(乳汁漏出)、男性では勃起不全や胸がふくらむ(女性化乳房)など
    下垂体腫瘍はまた、ホルモンを分泌している下垂体組織をも破壊するため、最終的に体内の下垂体ホルモン量が不足してしまいます。また、多くの人に頭痛が起こり、腫瘍が拡大すると両眼の周辺視力が失われます。

偽脳腫瘍とは

偽脳腫瘍は良性頭蓋内圧亢進とも呼ばれ、腫瘍、感染症、脳を囲む脳脊髄液の出口の閉塞など、明らかな原因がないにもかかわらず頭蓋内圧が上昇します。20〜50歳の、特に肥満の女性に最も多くみられます。

ほとんどの偽脳腫瘍は、その発生時点でも最終的な消滅時点でも、原因となる特定の出来事を見つけ出すことができません。患者の約3分の1は、脳から血液を運ぶ大きな静脈(静脈洞)の閉塞が原因で起きています。小児ではコルチコステロイドの使用中止後、あるいはビタミンAや抗生物質のテトラサイクリンの過剰摂取後に偽脳腫瘍が発生することがあります。

偽脳腫瘍は頭痛で始まり、最初は軽く次第にひどくなります。この病気の後期には、約5%の人が片眼あるいは両眼の視力を部分的または完全に失います。頭蓋内圧の上昇によって、眼球の近くにある視神経が腫れる乳頭浮腫と呼ばれる症状が現れ、医師が検眼鏡で診察すると眼球の奥が腫れているのがわかります。

偽脳腫瘍を診断するために、医師はまず頭蓋内圧を上昇させる原因のうち治療可能なものをすべて除外します。CT検査の所見は正常ですが、脳内スペースにわずかな圧縮がみとめられます。脊椎穿刺(腰椎穿刺)を行って脳脊髄液の圧力を測定すると圧の上昇はみとめられますが、成分を分析しても正常です。

偽脳腫瘍の多くは治療をしなくても6カ月以内に消滅しますが、肥満の人は体重を減らすべきです。アスピリンやアセトアミノフェンは、頭痛を軽減する効果があります。数週間以内に頭蓋内圧が下がらない場合は、降圧作用のあるアセタゾラミドが使用されます。

偽脳腫瘍の約10%は、再発します。慢性化すると、次第に症状が悪化して最終的に失明する人もいます。いったん失われた視力は、たとえ脳圧が下がっても元には戻りません。症状が慢性化した場合は、視力を失わないために毎日小さな文字を読んで視力をチェックし、視力に変化があればすぐに主治医に連絡するか、あるいは救急病院に行ってください。視力を失いそうな徴候があれば、頭蓋内圧を下げるための処置が取られます。

脳脊髄液を排液するために、脊椎穿刺を毎日もしくは毎週行ったり、あるいは視神経鞘の手術(開窓術)を行ったりします。この手術は、眼球の奥にある視神経を覆う膜に切れ目を入れて、脳脊髄液を眼の周辺の組織に逃がして、そこから静脈に入れるというものです。これらの方法でも症状が改善されない場合は、永久的な排液チューブ(シャント)を設置して、過剰な髄液を除去します。

診断

初めてのけいれん発作や、脳腫瘍の特徴的な症状が起きた場合は、脳腫瘍の可能性が考えられます。脳の機能不全は診察でも発見できますが、脳腫瘍の診断には別の検査が必要です。

頭蓋の標準的なX線検査でも、髄膜腫や下垂体腺腫などの骨に浸潤する腫瘍は発見できますが、MRI検査やCT検査ならすべてのタイプの脳腫瘍に有効です。MRI検査やCT検査では、腫瘍の大きさと正確な位置に関する詳細がわかります。脳腫瘍が見つかった場合は、腫瘍の種類を判定するためにさらに診断検査が行われます。

脊椎穿刺(脊椎穿刺の実施方法を参照)で脳脊髄液を採取し、顕微鏡で調べる検査が行われることがあります。脊椎穿刺は、腫瘍が髄膜に達して脳神経を圧迫し、脳脊髄液の流れを妨げていると考えられるときに行われます。癌細胞は脳脊髄液中に含まれるようになるため、検査は腫瘍の種類が不明瞭なときにも役立ちます。ただし大きな腫瘍によって頭蓋内圧が上昇しているときには、脊椎穿刺は実施できません。脊椎穿刺による脳脊髄液の除去が引き金となって腫瘍が移動し、脳ヘルニアを起こす危険性があるからです。

生検は顕微鏡で検査するための腫瘍の標本を採取するために行われる検査で、通常は癌性かどうかも含めて腫瘍の種類を確定するために必要です。生検は、腫瘍の全摘出あるいは部分摘出の手術中に行われることもあります。腫瘍が生検針が届きにくい部位にある場合には、CT画像を見ながら腫瘍の位置まで穿刺針を進めていきます(定位生検)。

治療と経過の見通し

脳腫瘍の治療は、腫瘍の位置と種類に応じて行われます。可能な場合は、腫瘍は手術で摘出されます。一部の脳腫瘍は、脳にほとんどかまったくダメージを与えずに摘出できます。しかし、脳腫瘍の多くは、重要な脳の構造を破壊せずに摘出することが困難あるいは不可能です。手術によって脳が損傷を受け、部分麻痺、感覚異常、脱力、知的障害を生じることもあります。とはいうものの、腫瘍が増殖して脳の重要な構造を破壊するおそれがある場合には、癌性か非癌性かにかかわらず、腫瘍の摘出は必須です。治癒が不可能なケースでも、手術によって腫瘍を小さくして症状を抑え、放射線療法や化学療法などの治療の判定に役立つため、手術すべき理由があります。

非癌性腫瘍の切除は、しばしば安全で、患者は治癒します。しかし腫瘍が非常に小さい場合や患者が高齢の場合は、症状が現れてこない限り腫瘍を摘出せずにそのまま様子をみます。腫瘍の摘出手術後には、残った癌細胞を破壊するために放射線療法を行うことがあります。放射線手術は、腫瘍が小さくて従来の手術が適さない場合に行われ、髄膜腫の治療にも用いられています。放射線手術では体を切開して腫瘍を取り除くのではなく、放射線を集中させて腫瘍を破壊します。この治療は、1日で終わります。

ほとんどの癌性脳腫瘍は、手術、放射線療法、化学療法を組み合わせて治療が行われます。安全に取り除ける腫瘍をできるだけ多く手術で摘出した後に、放射線療法を開始します。放射線療法では、1コースの照射を数週間にわたって行います。放射線療法で治癒することはまれですが、腫瘍を小さくして数カ月から数年もの間症状を抑えることができます。化学療法は、ある種の悪性脳腫瘍、特に低形成希突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ)の治療に効果があります。放射線手術も、癌性脳腫瘍の治療に用いられます。

頭蓋内圧の上昇はきわめて重大な事態で、ただちに治療が必要です。通常はマンニトールやコルチコステロイドなどの薬を静脈注射して圧を下げ、脳ヘルニアの発生を防ぎます。たとえ腫瘍が大きくても、ステロイド投与によって数日以内に機能が回復することがよくあります。腫瘍が脳室を通る脳脊髄液の流れを妨げているときには、脳脊髄液を排液する器具を使って脳ヘルニアのリスクを減らします。この器具は、頭蓋内圧を測定するゲージにつながれた細いチューブ(カテーテル)からなっています。このチューブは、頭蓋骨にドリルで開けた小さな穴から差し込まれます。この手術には局所麻酔と鎮静薬か、あるいは全身麻酔が使用されます。数日後、チューブは取り外されるか、あるいは固定式のドレーン(シャント)に取り替えられます。この間に腫瘍の全部または一部を摘出するか、放射線手術や放射線療法を行って腫瘍を小さくし、ふさがれていた部分を広げます。

脳へ転移した癌の治療方法は、癌の発生部位によって大きく異なります。よく行われるのは、癌へ直接放射線を照射する方法です。手術による癌の切除は、転移が1カ所に限定されているときに効果があります。従来の治療法のほかに、放射線手術、化学療法や腫瘍に放射性物質を埋めこむ方法などの試験的治療が行われます。

脳腫瘍がある人のその後の経過(予後)は、腫瘍の種類と発生部位によって完全に回復する人から死亡する人までさまざまです。

終末期医療: 癌性脳腫瘍の場合は余命が限られるため、事前指示書を作成しておくのが望ましいでしょう(法的問題と倫理的問題: 事前指示書を参照)。本人が治療に関する意思決定ができない状態になっても、医師に自分の希望する治療内容を知らせることができます。多くの癌センター、特にホスピスの設備がある癌センターは、カウンセリングや自宅療養の支援を行っています。

腫瘍治療の主な方法

  • 開頭術:
    頭皮の一部を剃髪して皮膚まで切開します。高速のドリルと特殊な鋸を使って腫瘍上部の骨を少量切り取り、腫瘍を見つけて切除します。通常は骨を元の場所に戻し、切開個所を縫合して閉じます。腫瘍は、メスで切り取る、レーザー(熱を使用)で蒸散させる、超音波発生装置で破壊して吸引するなどの方法で除かれます。レーザーと超音波装置は、切除が困難な腫瘍を除去するのに利用されています。
  • 定位技術:
    コンピューターを使って腫瘍の3次元画像を作成し、腫瘍と脳の他の構造物との位置関係を正確に決めます。この3次元画像は、一連のロッドがついた金属製撮影フレームを頭蓋に取りつけて撮影されます。ロッドは、CT画像上に点で現れるので、これを基準点にして腫瘍の位置を特定します。ほかにも金属フレームを装着しないコンパスシステムなどの装置が代用されます。定位技術は、腫瘍の生検や摘出、化学療法薬や放射性物質を含むインプラントの挿入にも利用されています。
  • 放射線手術:
    放射線手術は、切開をまったく行わないため厳密には手術ではありません。腫瘍を破壊するために集束した放射線を用いる方法です。放射線は集束されるために線量は少なくします。ガンマナイフやリニア加速器などは、このタイプの放射線を発生させる装置です。
    ガンマナイフ(定位放射線療法装置)が使用されるときは、撮影フレームを頭蓋に装着します。患者はスライディングベッドに横になり、そのフレームの上から穴が空いた大きなヘルメットをかぶります。ベッドの頭が、放射性コバルトを配置した球体内にスライドさせられ、放射線がヘルメットの穴を通って腫瘍に正確に照射されます。
    リニア加速器は、スライディングベッドに横たわっている人の頭部を一周しながら、腫瘍だけを狙って放射線を正確に照射します。
  • インプラント:
    腫瘍の切除後、頭蓋骨と切開部を閉じる前に、化学療法薬を浸したウエハーが腫瘍のあった場所に置かれます。ウエハーは徐々に溶けて薬を放出し、残った癌細胞を破壊します。
    カテーテルと呼ばれる細いチューブを切開した個所から挿入して、放射性インプラントを腫瘍内部へ直接埋め込むこともあります。このインプラントは数日から数カ月後に取り出されるか、あるいはそのまま体内に留置されます。放射線を体外から照射した人と異なり、放射性インプラントを体内に埋め込んだ人は、しばらくは放射活性を帯びているため医師の注意を守ってください。この治療後に、破壊された癌細胞を切除するための手術が行われます。
  • シャント(短絡術):
    腫瘍によって頭蓋内圧が増大しているときには、シャントを設置する手術が行われます。細いチューブ状のシャントの一方の端を、髄液がたまった脳室の1つや脊椎周囲のスペース(くも膜下腔)に差し込み、もう一方の端を皮膚の下を通して頭から通常は腹腔まで送ります。過剰な脳脊髄液は脳から腹腔に排液されそこで吸収されます。シャントには一方通行のバルブが付いていて、脳内に髄液がたまりすぎると開くしくみになっています。シャントは腫瘍を切除するまで一時的に挿入される場合と、永久的に体内に留置される場合とがあります。

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