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腰痛

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腰痛はごくありふれたものです。5人中4人もの人々が生涯のある時期に腰痛を経験します。腰痛は19〜45歳の人の障害として最も多く、米国では45歳未満の成人が仕事を休む理由としてかぜに次いで2番目に多くなっています。腰痛に悩む人は年齢が高くなるにしたがって増え、60歳を超えると半数の人が何らかのきっかけで腰痛を起こしています。米国では、毎年腰痛にかかる治療費は800億ドル以上にも上り、腰痛による障害での保険金請求額は80億ドル以上にもなります。このように、腰痛は命にかかわる病気ではありませんが、健康上きわめて大きな問題です。しかし、病気への理解と予防対策が普及し、職場で腰にけがをする人の数は減少しつつあります。

背骨(椎骨)からなる脊椎(脊柱)にかかる衝撃は、椎骨の間にある軟骨でできた椎間板によって吸収されます。軟骨の薄い層に覆われた椎骨は、靭帯(じんたい)と筋肉に支えられて脊椎をしっかり安定させています。これらの筋肉には、脊椎の両側に沿って続く2本の腸腰筋、脊椎の後ろ側で全長に沿って続く長い2本の脊柱起立筋、椎骨と椎骨の間をつなぐ多くの短い傍脊椎筋があります。胸郭の一番下から骨盤へ続く腹筋も、脊椎の安定に役立っています。

脊椎の中には、脊髄(せきずい)が収容されています(神経系のしくみと働き: 脊髄を参照、脊髄損傷: はじめにを参照)。脊髄神経は、脊髄に沿って椎骨のすき間から出て全身の神経とつながっています。脊髄神経根と呼ばれる脊髄神経の一部は脊髄に最も近い場所にあるために、脊椎が損傷すると圧迫されて痛みをもたらします。

5個の椎骨で構成されている腰椎は、胸部と骨盤および下肢を連結しており、これによって体を回す、ねじる、曲げるなどの動作を可能にしています。それは立つ、歩く、ものを持ち上げるといった動作のための強度も生み出します。このように腰はほとんどあらゆる日常動作にかかわっているため、腰痛があると多くの日常活動が制限され生活の質が低下します。

原因

腰痛の原因は数多く、特定の原因を突き止められないこともよくあります。

最も多い原因の1つに、筋肉や靭帯の挫傷とねんざがあります。挫傷やねんざは、ものを持ち上げたり、運動したりしたとき、転倒や自動車事故などで予想外の向きに体が動いたときに起こります。運動による腰のけが(腰椎挫傷)は、ウエートリフターズ・バックと呼ばれています。しかし、重量挙げで重いウエートを地面から一気に持ち上げたときだけでなく、フットボールで敵の選手を押しているとき、バスケットボールでリバウンドを取ってすぐにターンしてドリブルしたとき、野球のバットを振ったとき、ゴルフのクラブを振ったときなどにも起こります。腰のけがは体調が悪いときや、背骨を支える筋肉が衰えているときに起こりやすくなります。悪い姿勢、不適切な持ち上げ方、肥満、疲労などもかかわっています。

変形性関節症は、椎骨を覆って保護している軟骨が変性する病気です。少なくとも原因の1つとして、長年の使用による消耗が考えられています。椎骨の間にある椎間板が変性すると椎骨の間隔が狭まって、脊髄神経根が圧迫されます。椎骨にできる異常な骨の突起(骨棘[こつきょく])によっても脊髄神経根が圧迫されます。これらの病変のすべてが、筋肉の硬直や腰痛の原因となります。

骨粗しょう症では、骨密度が減って骨折しやすくなります。椎骨は特に骨粗しょう症の影響を受けやすく、しばしば圧迫骨折を起こして突然背中にひどい痛みが生じたり、脊髄神経根が圧迫されて背中に慢性の痛みが生じます。しかしながら、骨粗しょう症による骨折のほとんどは背中の上部と中央に発生するため、痛みも腰よりも上の方に現れます。

椎間板ヘルニア

 

脊椎の椎間板を覆う丈夫な膜が破れると、痛みが生じます。軟らかいゼリー状の内容物が膜から外へ飛び出すヘルニアが起こると、痛みはさらに強まります。痛みは、ヘルニアのふくらみが隣にある脊髄神経根を圧迫するために起こります。神経が損傷することもあります。

椎間板ヘルニアの80%以上は腰に発生します。最も多いのは30〜50歳の人です。この年代の人は椎間板を覆う膜が弱くなっているため、強く圧迫されると断裂個所や膜のもろい個所から中身が外へ押し出されてこぶ状になります。50歳を過ぎると、椎間板の中身は硬くなりはじめるため、ヘルニアが起こりにくくなります。椎間板は、事故による外傷や、軽いけがを繰り返していると、突然ヘルニアを起こします。太っていたり、重いものを特に変な姿勢で持ち上げると、ヘルニアが起こりやすくなります。

痛みが生じる部位は、どの椎間板がヘルニアを起こし、どの神経根が影響を受けたかによります。ヘルニアに圧迫された神経の経路に沿って痛みが起こります。たとえば椎間板ヘルニアはよく座骨神経痛を起こします。痛みは軽いものから衰弱するものまでさまざまで、動くと増強します。しびれや筋力低下も起こります。神経根の圧迫が大きいと、脚が麻痺します。馬尾(脊髄の下から伸びている神経の束)が侵されると、膀胱と腸のコントロールが失われます。もしもこれらの重大な症状が現れた場合は、ただちに治療が必要です。

多くの人は特に治療をしなくても、約2週間で回復します。患部を冷やしたり(アイスパックなど)、温めたり(温湿布など)、市販の鎮痛薬を使用すると痛みが和らぎます。ときに、ヘルニアが生じた椎間板の一部または全体と、椎骨の一部を切除する手術が必要な場合もあります。椎間板ヘルニアによる座骨神経痛で手術を受けた人の10〜20%に別の椎間板の破裂が起こります。

椎間板の破裂やヘルニアも腰痛の原因になります。椎間板は外側が硬く、内部は軟らかいゼリー状になっています。重いものを持ち上げたときなどに、椎間板が突然上下の椎骨に圧迫されると、外皮が断裂して痛みを起こします。外皮の裂け目から椎間板の中身が外に押し出されるとふくらみ(ヘルニア)を形成します。この出っ張ったヘルニアが隣接する脊髄神経根を圧迫して刺激したり、損傷を与えることさえあるために、さらに強い痛みが起こります。椎間板の破裂やヘルニアは座骨神経痛の原因にもなります。

座骨神経痛とは

 

2本の座骨神経は体内で最も太く長い神経で、手の指ほどの太さがあります。座骨神経は体の左右でそれぞれ脊椎の下部から出て、股関節の後ろを通り尻から膝の裏側へと続いています。この膝の裏側で数本に枝分かれして、さらに足へと下行していきます。座骨神経が締めつけられたり、炎症が起きたり、損傷すると、痛み(座骨神経痛)が起こり、座骨神経に沿って足まで広がっていきます。座骨神経痛は、背中の痛みがある人の約5%にみられます。

座骨神経痛では、原因がまったくわからない場合もあります。判明している原因には、椎間板ヘルニア、変形性関節症による骨の不規則な突出、靭帯のねんざによる腫れなどがあります。まれに脊椎管狭窄症、パジェット病、糖尿病による神経の損傷(糖尿病性神経障害)、腫瘍、血栓などから座骨神経痛が起こることもあります。もともと座骨神経痛を起こしやすい人もいるとみられます。

座骨神経痛は、通常は左右どちらか一方に起こります。チクチクとしびれる感覚、しつこい痛み、うずくような痛みを起こします。脚または足のしびれを感じます。この痛みは歩いたり、走ったり、階段を上ったり、脚を伸ばすと悪化し、背中を曲げるか座ると和らぎます。

痛みは自然に消えることも少なくありません。安静にして、寝るときには硬めのマットレスを使用し、市販の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用したり、湿布で温めたり冷やしたりすれば、それだけでも十分な治療効果が得られます。膝を曲げ、膝の間に枕をはさんで横向きで寝ると、痛みが和らぎます。ウオーミングアップの後、軽くハムストリングのストレッチをするのも効果があります。

高齢者の腰痛の原因で最も多いのが脊柱管狭窄で、これは脊髄を収容している脊椎中央部の脊柱管が狭くなる病気です。生まれつき脊柱管が細い人は、中年以降に脊柱管狭窄が現れます。原因は変形性関節症やパジェット病で、腰痛だけでなく座骨神経痛も引き起こします。

強直性脊椎炎では、脊椎と大きな関節に炎症が起き、筋肉の硬直と背中の痛みをもたらします。この病気は男性に多く、通常は20〜40歳の間に発症します。

腰痛は体の別の部分に起こった痛みに起因することもあります(関連痛とはを参照)。たとえば腎臓、膀胱、子宮、前立腺などの痛みが腰痛として感じられます。たとえば月経前症候群や膀胱の感染症が腰痛の原因になることもあります。

そのほか、より頻度の少ない原因には、帯状疱疹(たいじょうほうしん);乳房、肺、前立腺、腎臓など他の臓器から脊椎への癌(がん)の転移;骨の癌(多発性骨髄腫);線維筋痛;脊柱側弯(そくわん)症のような先天性欠損などがあります。ストレスも腰痛に寄与するようですが、そのしくみはよくわかっていません。また、きつい肉体労働、肥満、喫煙、運動不足なども腰痛の原因となります。

症状と腰痛の種類

腰痛は、原因と痛みの種類によって、間欠的なものと恒常的なもの;表層的なものと深部のもの;鈍い痛み、ズキズキする痛み、刺すような鋭い痛みなどに分かれます。腰痛にはいくつかのタイプがあります。

局所的な痛みは、腰の特定の領域だけに起こります。これは通常挫傷やねんざによります。けがをした部分に突然の痛みを感じます。局所的な痛みは、姿勢を変えたり軽い運動の後にストレッチを行うと、しばしば痛みが和らぎます。運動が強すぎたり、じっと動かないでいると、痛みが悪化する傾向があります。局所的な痛みには、痛みが途切れなく続く場合と、鋭い痛みが間欠的に起こる場合があります。腰にふれると痛みを感じるでしょう。痛みを起こす動作を避けて不自然な動き方をすると、筋肉のけいれんを誘発することがあります。通常この痛みは数日から数週間かけて徐々に解消します。

脊髄神経根の圧迫による痛みは、椎間板ヘルニア、変形性関節症、骨粗しょう症、脊柱管狭窄、パジェット病などによって起こります。痛みはしばしば非常に重いものを持ち上げた後、数分から数時間以内に起こりますが、自然に起こることもあります。このタイプでは、鈍い痛みに鋭い痛みが伴う傾向にあり、ときには激しい放散痛がその上に重なります。どの神経根が圧迫されているかに応じて、体の他の部分にも痛みが広がります。一般的には痛みは腰から尻へ、さらに圧迫されている側の脚へと広がって座骨神経痛をもたらします。両脚を伸ばした姿勢で、せきやくしゃみをしたり、いきんだり、体を曲げたりすると鋭い放射性の痛みを誘発します。椎間板ヘルニアが原因の場合は、長い距離を歩くと痛みがひどくなります。脊柱管狭窄が原因の場合は、歩くときのように背筋を伸ばすと痛みが悪化し、もたれかかるように脊椎を前方に曲げると和らぎます。圧迫骨折が原因の場合は、痛みは背中の特定領域に限局して突然に起こり、立ったり歩いたりすると悪化します。骨折の周辺部位には圧痛があります。

通常、痛みと圧痛は徐々に弱まって、数週間から数カ月後には消えてしまいます。神経根がひどく圧迫されているときには、痛みに脚の筋力低下やチクチクする感覚を伴い、膀胱と腸管のコントロールが失われることさえあります。

他の臓器に由来して起こる関連痛(関連痛とはを参照)は、体の奥深くで、比較的広範囲(びまん性)の痛みが持続します。動作には影響されないのが典型的で、夜間に悪化します。たとえば、腎臓の感染症では背中の中央よりも脇側に痛みを起こします。

診断

腰痛の原因は症状、病歴、診察結果から推定されます。診察の一部として、患者にある種の動作を行ってもらい、それによって痛みの種類を判定します。たとえばあお向けに寝て、膝(ひざ)を曲げずに脚をもち上げてもらったりします。挫傷やねんざが原因の場合は、通常はそれ以上の処置は必要ありません。他の原因が疑われる場合には、検査が必要になります。

腰のX線検査は、椎間板ヘルニア、変形性関節症による変性、骨粗しょう症による圧迫骨折、脊柱側弯症を発見できます。MRI検査やCT検査では鮮明な画像によって、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、癌の診断を確定したり、逆に除外することができます。まれにMRI検査でもはっきりしないことがあります、その場合には、CTを使った脊髄造影(脳、脊髄、神経の病気の診断: 脊髄造影を参照)が必要になります。神経の損傷個所を確認するために、筋電図(脳、脊髄、神経の病気の診断: 筋電図を参照)を取ることもあります。

予防

最も効果的な腰痛予防対策は、定期的な運動です(エクササイズとフィットネス: はじめに)。2種類の運動、つまり有酸素運動と、特定の筋肉の増強運動やストレッチ運動が有効です。

水泳やウオーキングなどの有酸素運動は全身の健康改善、肥満解消、筋肉強化に有効です。腹、尻、背中の筋肉を強化する運動とストレッチは、脊椎を安定させ、脊椎のクッションの役目をしている椎間板の負担を減らし、靭帯の位置を保ちます。

筋肉を強化する運動には、骨盤の挙上や腹筋運動などがあります(次ページ図参照)。ストレッチ運動には、座って行う脚のストレッチ、膝を胸につけるストレッチ、股関節と大腿四頭筋のストレッチなどがあります。ストレッチ運動は背中の痛みを増強することもあるので、注意深く行う必要があります。原則として、背中に痛みを起こしたり痛みが強くなる運動は、どれも中止します。運動は筋肉に軽い疲労を感じるまで繰り返すべきですが、完全に疲労するまで続けてはいけません。運動中の呼吸法も重要です。重量挙げでは専用のベルトを着用して背中のけがを防ぎます。腰痛がある場合は運動を始める前に医師に相談する必要があります。

腰痛を防ぐための運動

  • 骨盤の挙上
  • あお向けに寝て膝を曲げ、かかとを床につけて、体重をかかとに乗せます。背中の一部を床に密着させ、お尻を床から1センチメートルほど浮かして腹筋を締めます。そのままの姿勢で10まで数え、これを20回繰り返します。

  • 腹筋運動
  • あお向けに寝て膝を曲げ、足裏を床につけます。手を胸の上で組み、頭を上げない(あごを胸につけない)ようにしながら腹筋を締めていき、ゆっくりと肩を床から約25センチメートルもち上げます。次に腹筋をゆるめて肩をゆっくりと下ろしていきます。これを10回ずつ3セット行います。

  • 膝を胸につけるストレッチ
  • あお向けに寝て膝を曲げ、両方のかかとを床につけます。膝を曲げたまま、両手で片方の膝の裏側を持って胸の方へ引き寄せます。そのままの姿勢で10まで数えます。ゆっくりと脚を下ろし、次に反対側の脚でも同様に行います。これを、10回繰り返します。

  • 座って行う脚のストレッチ
  • 膝を伸ばして床に座り(膝が固定しないようにわずかに曲がる程度)、両脚をできるだけ大きく開きます。両手を片方の膝の上に置き、足首に向かってゆっくりと滑らせていきます。痛みが感じられたときにはそれ以上進まず、楽に10秒間同じ姿勢を保てる位置で止めます。ゆっくりと、元の座位の姿勢に戻ります。反対側の脚でも同様にして行い、各脚それぞれ10回ずつ繰り返します。

  • 股関節と四頭筋のストレッチ
  • 片足で床に立ち、反対側の膝を約90度曲げます。曲げた脚の足首の前側を、同じ側の手でつかみます。このとき、もう一方の手はいすの背や壁についてバランスを取ります。膝が離れないようにしながら、足を手に押しつけて体から離します。そのままの姿勢で、10まで数えます。反対側の脚でも同様にして行い、10回繰り返します。

運動は骨密度と適正体重の維持にも役立ちます。そのため腰痛の原因となる、骨粗しょう症と肥満のリスクを減らします。

立ったときや座ったときに良い姿勢を保つだけでも、背中にかかる負担を減らすことができます。前かがみにならないようにすべきです。いすに座るときは足の裏全体が床につくように座席の高さを調節し、膝を軽く曲げて腰をいすの背もたれにぴったりつけるようにします。背もたれとの調節には、腰の後ろにクッションを挟むとよいでしょう。床に座るときは、あぐらよりも床に足をつけて座るようにします。長時間の立ち通しや座り通しは避けるようにすべきですが、そうしなければならない場合は、姿勢を頻繁に変えて背中にかかる負担を減らします。

眠るときは硬めの布団(マットレス)を使って、楽な姿勢で寝るようにします。横向きで眠る人はウエストと頭の下に、あお向けで眠る人は膝の下に、それぞれ枕をあてがうとよいでしょう。頭に使う枕は、首が曲がりすぎない高さのものを選びます。

適切な持ち上げ方を覚えておくのも、背中のけがの防止に役立ちます。ものを持ち上げるときは膝を十分に曲げて腕を持ち上げるものと同じ高さにし、背中ではなく脚を使って持ち上げます。頭より上にものを持ち上げると背中をけがするリスクが高くなります。安定した踏み台を使えば、無理に持ち上げる必要がなくなります。重いものを運ぶときには体につけて運ぶとよいでしょう。禁煙も勧められています。

治療

最近腰痛が起きたばかりのときには、まず脊椎に負担をかけて痛みを起こす行動、つまり重いものを持ち上げたり腰をかがめたりなどの動作を止めます。2〜3日ベッドで安静にしていれば痛みは和らぎますが、痛みの解消がより早くなるわけではなく、専門家の多くは日常的な活動を続けることを勧めています。ベッドでの安静が必要な場合も、1〜2日にとどめるべきです。腰痛の原因となる特定の異常があれば、その治療を行います。たとえば膀胱の感染症は、抗生物質を投与して治療すると腰痛が軽減されます。

市販薬でも医師の処方薬でも、痛みを和らげ炎症を鎮めるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(市販薬: 鎮痛薬と抗炎症薬を参照、痛み: 非ステロイド性抗炎症薬)が使えます。メトカルバモール、カリソプロドール、シクロベンザプリン、ジアゼパムなどの筋弛緩薬は、筋肉のれん縮を抑えるために使われることがありますが、多くの専門家はその有効性を疑問視しています。高齢者には、副作用が起こりやすいため使用しない方がよいでしょう。

温湿布、冷湿布、マッサージも効果があります(リハビリテーション: 痛みと炎症の治療を参照)。牽引は、通常役に立ちません。針治療やカイロプラクティックが回復を早めるという報告がありますが、ほとんどあるいはまったく効果がないという報告もあります。回復期には、短期間あるいは背中に負担がかかる作業中にだけ、ブレースやコルセットの着用が勧められています。しかしコルセットなどのサポーターは着心地が悪いだけでなく、長期間着用していると背中の筋肉が弱くなってしまいます。

痛みが治まった後に、医師や理学療法士が推奨する軽い運動を行うと治癒と回復を早めることができます。背中の筋力アップやストレッチ体操は、腰痛の慢性化と再発を防ぐ効果があります。その他の予防対策として、良い姿勢を保つ、寝るときは硬めの布団(マットレス)と適度な高さの枕を使用する、ものを持ち上げるときは適切な方法を取る、禁煙する、などを続けるか新たに始めます。これらの方法によって、ほとんどの腰痛は1〜2週間で解消します。治療法にかかわらず、急性の痛みの80〜90%は、6週間以内に消失します。

慢性腰痛の場合には、これ以外の対策が必要です。有酸素運動が有効で、必要であれば減量を行います。痛みがひどく、非ステロイド性抗炎症薬では十分に痛みを抑えることができないときは、オピオイド鎮痛薬(痛み: 主なオピオイド鎮痛薬を参照)が必要になります。これらの鎮痛薬が効かない場合は、デキサメタゾンやメチルプレドニゾロンなどのステロイドとリドカインなどの局所麻酔薬を、定期的に脊柱管の周囲に硬膜外注射する方法を勧める専門家もいます。しかし注射の効果は、通常数日から数週間しか持続しません。

経皮的電気神経刺激法(TENS)(痛み: 薬によらない痛みの治療を参照)が、勧められることもあります。低い振動電流の発生装置を使って患部にチクチクと穏やかな刺激を加えます。痛みの程度に応じて、療法士は1日に数回、1回あたり20分から数時間、痛みのある場所に通電します。この装置の使い方を覚えて自分で行うこともできます。

ひどい腰痛が続く場合や深刻な症状がある場合には手術が必要です。椎間板ヘルニアによる脊髄神経根の圧迫で、激しい座骨神経痛、脱力、感覚消失、膀胱と腸管のコントロール消失などの症状が起きている場合は、椎間板切除術と椎骨の一部切除(椎弓切除術)が必要で、通常は全身麻酔で行われます。椎間板切除後の入院期間は、米国では通常1〜2日です。小さく切開する顕微鏡手術が行われることもあります。これは局所麻酔で行われ、入院は必要ありません。しかし切開が小さいため視野が狭められて、ヘルニアが起きている椎間板の断片をすべて取りきれないことがあります。どちらの手術でも、術後数週間で、ほとんどの人が自由に動けるようになり、90%以上の人は完全回復します。

重症の脊柱管狭窄の場合は、椎骨の大きな部分を除去して脊柱管を広げる手術が全身麻酔で行われます。米国での入院期間は通常4〜5日です。患者が体を完全に動かせるようになるまでに3〜4カ月かかります。約3分の2の人は改善するか、あるいは完全回復します。残りの人も大部分が、症状の悪化を防ぐことができます。

変形性関節症により脊椎が変性してぐらついているときには、椎骨を融合する治療が行われます。しかし融合すると動きが制限され、脊椎の他の部分に余計な負担がかかることがあります。

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