メルクマニュアル家庭版
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遺伝性神経障害

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遺伝性神経障害は末梢神経が障害される病気で、かすかな症状が徐々に悪化していきます。

遺伝性神経障害は、運動神経だけが侵される運動性神経障害、感覚神経だけが侵される感覚性神経障害、両方が侵される感覚運動神経障害があります。一部の遺伝性神経障害は比較的多いのですが、しばしば認識されません。遺伝性感覚神経障害は、特にまれな病気です。

これらの神経障害の多くを引き起こす遺伝子は特定されています。その中にはシャルコー‐マリー‐トゥース病、レフスム病(そのほかのまれな脂質代謝の遺伝性異常を参照)、ポルフィリン症(ポルフィリン症: はじめにを参照)、ファブリー病(遺伝性の代謝異常症: ファブリー病を参照)、遺伝性圧過敏性神経障害などが含まれます。

シャルコー‐マリー‐トゥース病

シャルコー‐マリー‐トゥース病(腓骨筋萎縮)は、すねの筋肉に脱力と萎縮が起こる遺伝性の神経障害です。

シャルコー‐マリー‐トゥース病は最も多い遺伝性の神経障害で、2500人に1人の割合でかかります。この病気には3つのタイプがあり、さらにいくつかのサブタイプに分かれます。あるタイプでは、神経の電気信号を伝える軸索が、それを囲む髄鞘の損傷や破壊(脱髄)によって死滅します。また別のタイプでは、髄鞘が損傷されていないにもかかわらず軸索が死滅します。大部分のタイプは伴性ではなく常染色体の優性形質として遺伝し、両親のどちらかから遺伝子を受け継ぐと発症します。

症状はタイプによります。1型は小児期や思春期の途中、あるいはそれ以降に症状が始まります。脱力は脚から始まり、足が曲がらない懸垂足と、ふくらはぎの筋肉の萎縮が起こります。後に手の筋肉にも萎縮が始まります。感覚消失は、ほとんど起こりません。1型の軽症のサブタイプでは、症状は足のアーチが高いこととハンマー状足指だけです。1型のサブタイプの1つは、男性に重度の症状が現れ、女性には軽い症状か、あるいは障害が起こりません。病気はゆっくりと進行し、寿命を縮めることはありません。

2型患者は、病気の進行速度がより遅く、症状は似ており、しばしば10代に始まります。

3型は乳児期に発症します。この病気の乳児は歩いたり、走ったりする時期が遅れ、末梢神経が腫大します。脚の脱力は1型よりも速く進行し、脚の感覚が失われます。

診断と治療

脱力の分布状況、発症した年齢、家族歴、足の変形(足のアーチが高いこと、ハンマー状足指など)の有無、神経伝導試験の結果などが、シャルコー‐マリー‐トゥース病のタイプと、神経障害の他の原因との区別に役立ちます。シャルコー‐マリー‐トゥース病を対象とした遺伝子検査とカウンセリングも行われています。

この病気の進行を止める治療法はありません。懸垂足の矯正装具が役立ちますが、整形外科手術が必要な場合もあります。

遺伝性圧過敏性神経障害

遺伝性圧過敏性神経障害は、軽い圧迫や外傷により1本以上の神経に機能不全や損傷が起こる病気です。

この神経障害の患者は、比較的軽度の圧迫、外傷、筋肉の反復使用によって神経障害を起こしやすくなります。青年期や若い成人期に多く発症しますが、どの年齢層でも男女を問わず起こりえます。この神経障害は、伴性ではなく常染色体の優性形質として遺伝します(遺伝と遺伝子: 遺伝子の発現を参照)。

一般に懸垂足を伴う腓骨神経麻痺、尺骨神経麻痺、手根管症候群が起こります。患部のしびれと脱力が周期的に現れます。症状は、気づかないほど軽いものから、耐えられないほど重いものまでさまざまで、数分から数カ月続きます。

症状が現れたり消えたりすることが、この神経障害の診断を難しくしています。この神経障害は遺伝子検査が利用可能です。

この病気の人の約半数は、数日から数カ月以内に完全に回復します。完全回復しない人も、症状が重症なのはまれです。

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