メルクマニュアル家庭版
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身体化障害

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身体化障害は重度の慢性障害で、さまざまな身体症状(主に痛み、胃腸症状、性的症状、神経症状など複数の症状)が繰り返し発生し、原因となる体の異常が見あたらないのが特徴です。

身体化障害はしばしば家族性で、女性に多くみられます。身体化障害のある女性の男性親族は、社会的に認められない行動(反社会性人格(人格障害: 反社会性人格を参照))や物質関連障害(アルコール中毒など)を起こす率が高い傾向にあります。身体化障害の患者には、人格障害や他者への極端な依存(依存性人格(人格障害: 依存性人格を参照))も多くみられます。

身体化障害の患者にみられる身体症状は、助けてほしい、気にかけてほしいと訴えるコミュニケーション手段と考えられます。症状の強さや持続期間の長さは、人生のすべての面において構ってほしいという強い欲求を反映しています。また、大人としての責任から逃れたいなど、その他の目的から症状が現れることもあります。不快な症状が続くため、患者は楽しいことへ目が向かず、自分には価値がないと思ったり、罪悪感に苦しんだりします。

症状

最初の症状は青年期から成人期初期にかけて現れます。あいまいな身体症状を訴え、しばしば「耐えられない」「うまく表現できない」「これ以上ないほど最悪」などと表現します。症状は全身のどの部位にも現れることがあり、症状の種類や発症頻度は文化的背景によって異なります。典型的な症状としては、頭痛、吐き気と嘔吐、腹痛、下痢や便秘、月経痛、疲労、失神、性交痛、性欲減退などがあります。男性の場合は、勃起(ぼっき)機能不全など性機能不全の訴えが多くみられます。不安やうつ病も起こります。

身体化障害の患者は助けや感情的なサポートを次第に強く求めるようになり、自分の欲求が満たされないと感じると激怒することがあります。自分に関心を向けさせるために、自殺をほのめかしたり、実際に自殺を試みることもあります。診療の内容に不満を抱くことも多く、医師から医師へと渡り歩く人もいます。

診断

身体化障害の患者は、症状の基礎にある問題が心因性のものであることに気づいていないため、医師に診断のための検査や治療を強く要求します。一般に、医師はさまざまな診察や検査を行い、症状の原因となりうる体の異常がないかどうかを調べます。患者が1人の医師と相応に満足のいく関係を築いていても、専門医に紹介して診察を受けさせる場合がよくあります。

問題が心因性のものだとわかれば、身体化障害の場合は症状が多様で何年間にもわたって長く続くため、他の類似の精神障害とは容易に判別されます。このほか患者の芝居がかった訴え、依存性、自殺行動なども診断の手がかりとなります。

経過の見通しと治療

身体化障害による症状の重さは変動する傾向がありますが、障害そのものは生涯にわたり持続します。長期間にわたって症状がまったく出なくなることはまれです。発症から長い年月がたつと、抑うつが悪化する人もいます。自殺のおそれもあります。

治療はきわめて困難です。身体化障害の患者は、症状が心因性のものだとほのめかされただけで不満や怒りを表します。医師はこのため、症状が心因性のものだという認識をもちながらも、心因性の問題として直接的に対処することができません。薬物療法はあまり効果がなく、たとえ患者が精神科の紹介受診に同意しても、各種の心理療法が有益な結果をもたらすことはまずありません。身体化障害の患者にとって最善なのは、症状を和らげてくれて、高額な費用や危険性を伴う検査や治療から患者を守ることができる医師と信頼関係を築くことです。なお、身体化障害のある人にも、本当に体の異常が生じる場合があるので注意が必要です。

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