メルクマニュアル家庭版
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はじめに

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性は人間の正常な営みの1つです。しかし、正常とみなされる性行為の種類は国や文化によって大きく異なり、同じ国や文化の中でもその考え方には幅があります。正常な性行為とは何かを定義することは、実のところ不可能かもしれません。性的な欲求の強さやそれを発散させる頻度にもかなりの個人差があり、たとえば性行為への欲求を1日に何回も感じる人もいれば、年に数回程度で満足する人もいます。

高齢者と性の問題について若い人はあまり考えたがらない傾向がありますが、実際には高齢者の多くが性的な関心をもち続けていて、老年期に入っても満足のいく性生活を送っているといわれています。男性の勃起(ぼっき)機能不全(男性の性機能障害: 勃起機能不全を参照)、女性の性交困難、腟けい、オルガスム障害などの性機能障害(性機能の障害: 性交痛を参照)は、あらゆる年齢の人に生じる可能性がありますが、高齢者により多くみられます。

性についての社会の受けとめ方は、時代とともに変わります。たとえば、マスターベーション、同性愛、異なるセックスパートナーと頻繁に性行為をすることなどに関する意識は以前からみて大きく変化しています。

マスターベーション: かつては性的倒錯とみなされ、精神疾患の原因とさえみられていたマスターベーションは、現在では生涯を通じて正常な性的行為として認められています。男性の97%以上、女性の80%以上がマスターベーションの経験があると推定されています。男性は一般に、満足のいく性生活を送っていても、女性より高い頻度でマスターベーションをします。マスターベーションは正常な行為であり、「安全な性交」の選択肢の1つとして推奨されていますが、その一方で、世間はそれを非難するような態度を示すことから、罪悪感や精神的な苦しみをもたらすことがあります。そのことから少なからぬ葛藤が生じ、性機能が影響を受けることすらあります。

同性愛: マスターベーションと同様に、同性愛もかつては医学的に異常とみなされていましたが、もはや障害とはみなされなくなりました。現在では、小児期からすでに存在している性的指向として広く認められています。成人の約4〜5%が一生を通じて同性のみと性的関係をもち、約2〜5%が同性の人とも定期的に性的関係をもつ(両性愛)と推定されています。青年期の男女が同性同士で性的な行為を試みることがありますが、こうした関心は一時的な場合も多く、成人にみられる同性愛や両性愛への長続きする関心に結びつくとは限りません(健康な青年期の若者: 性的な発達を参照)。

同性愛者が同性の人に引きつけられるのは、異性愛者が異性に魅力を感じるのと同じことです。同性に魅力を感じること自体は、生物学的、環境的な影響による結果であると考えられ、意識的な選択の問題ではありません。したがって、このような性的指向の問題において、よく使われる言葉ですが「性的嗜好」という表現は適切とはいえません。

同性愛者の場合、広く浸透している社会的な非難や偏見を克服しなければなりませんが、それでも多くの人は自分の性的指向にうまく適応しています。適応するまでには長い年月がかかることが多く、大きな精神的ストレスを伴います。男女を問わず、多くの同性愛者が社会や職場で偏見を受けるため、さらにストレスが強まります。性的指向(あるいは性的指向と認識されるもの)に対する差別は、依然としてなくなっていません。

異なるパートナーとの頻繁な性行為: 一部の異性愛者や同性愛者は生涯を通じて、複数のパートナーと頻繁な性行為を普通に行います。このような行動がある人は、専門家のカウンセリングを受けることが勧められます。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、肝炎、梅毒、淋菌感染症(淋病)、子宮頸癌といった病気は、多くのセックスパートナーがいることと密接に関係しているからです。また、多くのセックスパートナーをもつと、特定の相手と有意義で長続きする関係を築くことが難しくなります。

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