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歯周炎

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歯周炎(歯槽膿漏[しそうのうろう])は、歯肉炎が重症化して、歯肉の炎症が歯の支持構造まで広がる病気です。

歯周炎は成人が歯を失う大きな原因の1つですが、高齢者では最大の原因になっています。感染が歯を支えているあごの骨まで拡大すると、骨と歯の結合力が弱まり、歯がぐらつくようになります。最終的にその歯は自然に抜けるか、あるいは抜歯が必要になります。

原因

ほとんどの歯周炎の原因は、歯と歯肉の間に長い時間かけてたまったプラークと歯石です。歯と歯肉の間にできた歯周ポケットが、歯根とその下の骨にまで拡大し、歯周ポケット内の酸素のない環境にプラークがたまり、侵食力の強い細菌の増殖を促します。病気が進行して最終的にポケットの近くのあごの骨が大きく破壊されると、歯はぐらついて抜け落ちてしまいます。

歯周炎:プラークの形成から歯の喪失へ

健康な歯肉と骨(歯槽骨)は、歯を正常な位置にしっかりと支えています。

たまったプラークは、歯肉を刺激して炎症を引き起こします。時間がたつにつれて、歯肉が歯から離れて歯肉と歯の間に歯周ポケットが作られ、このポケットにさらにプラークがたまります。

歯周ポケットはますます深くなり、プラークは硬くなって歯石になります。歯の表面に、どんどんプラークがたまります。

歯石が歯根まで覆うようになり、最終的に歯を支えている骨を破壊してしまいます。支えを失った歯はぐらつき、抜け落ちます。

歯周炎が進行する速さは、歯石のたまり方が同程度でも、人により非常に差があります。これはプラークに存在する細菌の種類と数がさまざまであり、細菌への体の反応に個人差があるためです。歯周炎では数カ月間爆発的に破壊活動が起こり、その後に一見侵食が止まったようにみえる停滞期が続きます。

糖尿病、ダウン症候群、クローン病、白血球減少症、エイズなどの病気があると、歯周炎は起こりやすくなります。エイズ患者では歯周炎は速く進行します。

症状

歯周炎の初期症状は、出血、歯肉の炎症、口臭です。診察時に、歯科医師はプローブと呼ばれる細い器具を使って歯ぐきにできた歯周ポケットの深さを測定します。また、失われた歯槽骨の量を調べるために、X線検査をします。骨が失われるにつれて、歯がぐらつき、位置が移動するようになります。特に前歯が外側へ傾くようになります。かむと歯がぐらぐらしたり、膿瘍(膿のかたまり)が形成されたりすると、痛みが現れます。

口臭とは

口臭(息の臭さ)には、本当に口臭がある場合と、実際には口臭がないのに口臭があると思いこむ場合とがあります。口臭があるときは、たいてい歯と歯の間に食べもののかすがたまり、口の中が不潔な状態になっていて、歯肉の病気にもつながります。

揮発性油を含むタマネギやニンニクなどの食品のにおい成分は、血流に乗って肺に入り、息となって吐き出されます。これらのにおいは、歯磨きでも消すことはできません。

病気の中には、口臭を生じるものがあります。肝不全によって起こる口臭はネズミのようなにおいがし、腎不全による口臭は尿のようなにおいがします。また、治療を行っていない重症の糖尿病の人の口臭は、マニキュア除光液(アセトン)のようなにおいがします。肺膿瘍では、非常にひどい口臭がします。腸の病気は口臭の原因にはなりません。食道や胃にできた腫瘍のために、臭いにおいの液体やガスが口の中に逆流することがあります。

思いこみによる口臭は、心因性口臭と呼ばれます。実際には口臭がないのに自分の吐く息が臭いと思いこんでいるわけです。心因性口臭になりやすい人は、体のごく正常な感覚でも大げさに心配しすぎる傾向のある人です。ただし、心因性口臭は、統合失調症などの重症の精神障害によって起こる場合があります。強迫観念がある人は汚いと感じる意識が非常に強く、妄想がある人は自分の臓器が腐っているという妄想を抱きます。これらの障害のある人はいずれも、自分の息が臭いと思いこみます。

身体的原因に対しては、原因に応じた治療や原因の除去を行います。たとえば、ニンニクやタマネギなどの、においの強い食品を食べないようにして、歯磨きをていねいに行えば口臭を減らすことができます。日課として、舌の上側や裏側を舌ブラシで磨くのも効果があります。また、防臭効果のあるマウスウオッシュや口臭防止スプレーも市販されています。これらの製品に含まれる成分の中で、最も防臭効果が高いのはクロロフィル(葉緑素)です。ただし、これらの製品の防臭効果はせいぜい2〜3時間しか持続しません。

心因性口臭のある人の中には、医師や歯科医師に口臭がないと明言してもらうと治る人もいます。問題が解消しない場合は、心理療法士などの診察を受けるとよいでしょう。

治療

歯磨きによって自分でケアできる歯肉炎と違い、歯周炎は継続的な専門治療が必要です。歯磨きを正しく行っていても、歯ブラシの毛先は歯肉線の2〜3ミリメートル下までしか届きませんが、専門のスケーリング(歯石除去)とルートプレーニング(歯根面のクリーニング)と呼ばれる歯のクリーニング方法では、深さ4〜6ミリメートルの歯周ポケットにたまった歯石や、歯根面の病変をきれいに取り除くことができます。歯周ポケットの深さが5ミリメートル以上になると、ほとんどの場合、手術が必要になります。歯科医師によって手術(歯肉剥離掻爬術)が行われ、歯肉線より下の歯肉が切開されて、歯のクリーニングと感染によって欠けた骨の修復が行われます。さらに細菌に侵されて歯から離れてしまっている歯肉を切除する手術(歯肉切除術)も行われます。これによって残った歯肉と歯が再びぴったりと付着するので、後は家庭でプラーク除去ができるようになります。

特に膿瘍ができている場合には、テトラサイクリン系やメトロニダゾールなどの抗生物質が与えられます。さらに抗生物質をしみこませたフィラメント状やゲル状の薬剤を、歯周ポケットの奥に挿入して、高濃度の薬を歯周炎に侵された患部に行き渡らせます。歯周膿瘍は急激に骨を破壊しますが、早期に手術と抗生物質による治療を行えば、破壊された骨の多くを再生させることができます。手術後に口内炎ができているときは、治るまで歯磨きの代わりに1回1分間、1日2回、クロルヘキシジンでうがいをします。

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