メルクマニュアル家庭版
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食道の閉塞

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食道は狭くなったり、完全にふさがってしまうことがあります。これは、遺伝的要因によるもの(先天性食道輪など)もまれにありますが、ほとんどの場合は食道の損傷や腫瘍(しゅよう)が原因となって起こります。食べものや異物も食道をふさぐことがあります。胃酸が食道へと繰り返し逆流すると(胃食道逆流症)、食道粘膜が損傷され、この状態が数年以上続くと、食道がふさがれるほど損傷が進行することがあります。錠剤を服用したときや腐食性の物質を誤飲した場合にも粘膜が損傷することがあります(食道の病気: 食道の損傷を参照)。食道の外側からの圧迫も狭窄(きょうさく)を引き起こします。圧迫はさまざまな原因で起こります。たとえば、心臓の左心房の肥大、大動脈瘤、動脈形成異常(奇形性嚥下困難)、甲状腺の異常、脊椎(せきつい)からの骨増殖、癌(特に肺癌)などです。また、より重篤な狭窄の原因として、食道の良性腫瘍や悪性腫瘍(癌)があります。

このような状態になると食道の内径が狭まり、固形物、特に肉類やパンを飲みこむのが困難になります。まれに、液体も飲みこみづらくなることがありますが、そこまで至るのはずっと後のことです。

診察では、まずバリウムX線検査を行って、食道が狭くなった原因とその位置を調べます。治療法はその原因によって異なります。

下部食道輪

食道粘膜が胃酸で慢性的に傷つくと、下部食道輪(シャッツキー輪)が形成されて、食道下部が狭くなります。

正常な食道下部の直径は約4〜5センチメートルですが、硬い組織の輪ができて約1センチメートル以下まで狭まることがあります。この状態になると固形物が飲みこみづらくなります。どの年齢層でも起こりえますが、普通は25歳以降にみられます。胃酸によって食道下部が傷つき、それによって下部食道輪が形成されるまでに時間がかかるからです。嚥下困難の症状は出たり出なかったりを繰り返しますが、特に出やすいのは肉類や水分の少ないパンを食べたときです。異常をみつけるためにバリウムX線検査が行われます。

食べものをよくかんだ上で水を少し口に含むようにすると、飲みこみづらさが軽減します。内視鏡(付属器具のついた、柔軟な観察用のチューブ)を口から食道へと挿入し、狭い部分を通過させて広げるという治療を行うこともあります。あるいは、ブジーという拡張器を使って食道を広げる方法もあります。まれに、収縮した輪を手術で広げることもあります。

食道ウェブ

食道ウェブ(プランマー‐ヴィンソン症候群、鉄欠乏性嚥下困難)とは、食道上部3分の1の内側表層(粘膜)にできる薄い膜です。

食道ウェブはまれにしか起こりませんが、最もよくみられるのは重度の鉄欠乏性貧血が放置されていた人です。貧血がどのようにウェブ形成を引き起こすのかはわかっていません。食道上部にウェブがあると、固形物が飲みこみづらくなります。透視(バリウムを飲みこんでその動きをX線で観察する検査法)をするのが最適の診断法です。

普通は、鉄欠乏が解消されるとウェブも消失します。鉄欠乏の治療で改善されない場合は、拡張器か内視鏡でウェブを破壊します。

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