メルクマニュアル家庭版
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食道の損傷

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食道は、比較的損傷を受けにくい器官ですが、胃酸の逆流(胃食道逆流症)によって徐々に傷つくことがあります。また、より急性の損傷として、腐食性や酸性の化学物質、刺激性の薬物、鋭利な物体、過剰な圧力によるものもあります。食道内に過剰な圧力がかかるのは嘔吐の際などです。

損傷が比較的急に生じた場合は痛みや出血が起きます。痛みは、胸骨の下の鋭い痛みとしばしば表現されます。出血がある場合は、吐血したり、便に血が混じったりします。食道が破裂した場合などは失神を起こすこともあります。食道が破裂すると、食道内の血液と食べものが散乱して縦隔(胸部の空間で、前後は胸骨から脊柱まで、上下は胸腔の入り口から横隔膜までの部分)を汚染します。

びらん性食道炎

びらん性食道炎とは、食道粘膜に炎症が起き、そのため粘膜が失われた状態です。

この病気の原因は、慢性の胃酸の逆流です。誤飲や自殺目的で飲んだ洗浄剤などの腐食性物質も食道粘膜を損傷します。このほか、アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アレンドロン酸、ドキシサイクリン、大きな鉄剤やカリウム剤などの錠剤が食道に引っかかり、その場に長くとどまっていると、痛みを伴うびらんを起こします。

びらん性食道炎の診断には、食道鏡検査が行われます。びらんが錠剤によるものであれば、大量の水を飲んで洗い流します。その場合、痛みは数時間で消えます。まれに、腐食性物質や錠剤によってできたびらんが原因で、食道に狭窄が生じることがあります。

食道裂傷

食道裂傷は、食道壁を完全に破るには至らない裂傷のことです。

激しい嘔吐、むかつき、しゃっくりの際に食道下部や胃上部に裂傷ができることがあり、マロリー‐ワイス症候群と呼ばれています。最初に現れる症状は、裂けた食道の血管からの出血です。マロリー‐ワイス症候群は、消化管上部の出血原因のおよそ5%を占めています。

診断には食道鏡検査または血管造影(アンギオグラフィ)が行われます。この裂傷は、通常のX線検査では検出できません。

ほとんどの出血は自然に止まりますが、出血している血管を手術で結紮(けっさつ)しなければならないこともあります。また、血管造影で観察しながら、バソプレシンやエピネフリンなどの薬を注入して出血している血管への血流を減らし、出血を抑えることもあります。

食道の破裂と穿孔

食道の破裂と穿孔は、食道壁が完全に破れた状態です。穿孔は明らかな境界があるもの、破裂は明らかな境界がないものをいいます。

食道の破裂と穿孔は、激しい嘔吐によって起こります。穿孔は、内視鏡検査(柔軟な観察用チューブで食道を調べる検査)(消化器の病気の症状と診断: 内視鏡検査を参照)や、口または鼻から器具を挿入するその他の検査でも起こることがあります。食道に破裂や穿孔が起こると、食道の外側である胸部に炎症が起き、肺を覆っている胸膜の層の間に体液が入りこみます(胸水)(胸膜疾患: 胸水を参照)。食道が完全に破れた場合、特に破裂の場合は、死亡リスクが非常に高くなります。食道を修復する手術と周囲の体液などを排出する処置がただちに行われます。

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