メルクマニュアル家庭版
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クローン病

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クローン病は限局性腸炎あるいは肉芽腫性回腸炎や回結腸炎ともいわれ、腸壁に起こる慢性炎症で消化管のどの部位にも起こります。

クローン病の原因はわかっていません。研究者たちは、免疫系の機能不全により環境、食事、感染などの要因に対して腸が過剰に反応するためと考えています。一部の人はこの免疫系の機能不全に対する遺伝的素因をもっています。タバコの喫煙もクローン病の発症と、定期的な症状の再発に関連しているようです。

過去数十年間に、クローン病は世界中で一般的にみられるようになりました。男女間に頻度の差はなく、ユダヤ人に多く、家族性で起こる傾向があります。ほとんどの場合35歳よりも前、普通は15〜25歳の間に発症します。

クローン病が最もよく起こる場所は、小腸の最後の部分の回腸と大腸です。しかし口から肛門までの消化管のどの部分にも起こることがあり、肛門周囲の皮膚にまで及びます。クローン病が小腸だけに起こるのは全体の35%、大腸だけに起こるのが20%、小腸の後半と大腸にまたがるものが45%となっています。クローン病は、正常な部分を間に挟んで消化管の数カ所に起こることがあります。クローン病に罹患した腸の部分は非常に厚くなります。

症状と合併症

クローン病の初期症状で最も多いのは、出血を伴う慢性下痢、けいれん性の腹痛、発熱、食欲不振、体重減少です。これらの症状は数日間から数週間継続し、治療しなくとも治まります。しかし一度発作を起こしただけで完全に回復することはきわめてまれです。クローン病は生涯を通して不規則な間隔で再発します。再発は軽いことも重いこともあり、短いことも長びくこともあります。重症の場合は激痛や脱水、血液量の減少が起こります。なぜ症状が回復したり悪化したりするのか、何が再発のきっかけなのか、重症度を左右するものが何か、はわかっていません。炎症は腸の同じ場所に再発する傾向にありますが、患部を手術で切除した後には別の領域に広がることもあります。

一般的な合併症は、腸閉塞や感染部位に膿がたまる状態(膿瘍[のうよう])と腸に異常な通路(瘻[ろう])が形成されることです。瘻は腸の異なった2つの場所をつなぎます。また、瘻は腸と膀胱(ぼうこう)をつないだり、特に肛門周辺では、腸と皮膚表面をつないでしまうこともあります。小腸の瘻はよくみられても、大きな穿孔(せんこう)はまれです。

大腸が広範囲にクローン病にかかった場合は、直腸に出血がよく起こり、何年か後には結腸癌(大腸の癌)になるリスクが非常に高くなります。クローン病にかかった人の約3分の1は、肛門周囲の症状が現れ、特に多いのは肛門粘膜の内側の瘻と裂肛です。クローン病は体の他の場所に影響を及ぼす合併症を起こすことがあります。胆石、栄養素の吸収不足、尿路感染症、腎結石、臓器へのアミロイドタンパクの沈着(アミロイド症)などです。

クローン病で胃腸症状が再発すると、患者には関節の炎症(関節炎)、白眼の上強膜炎、口にアフタ性口内炎、腕や脚の皮膚の結節の炎症(結節性紅斑)、皮膚が紫がかって膿がたまる壊疽性膿皮(えそせいのうひ)症などが起こります。クローン病の消化器症状が再発していない時期でも、脊椎(せきつい)の炎症(強直性脊椎炎)、股関節(こかんせつ)の炎症(仙腸骨炎)、眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)、胆管の炎症(原発性硬化性胆管炎)を起こします。

小児では、腹痛や下痢などの胃腸症状はしばしば主要な症状ではなく、胃腸症状がまったく現れないことさえあります。代わりに、成長遅延、関節の炎症、発熱、貧血による脱力と疲労などが主な症状となります。

診断

けいれん性の腹痛と下痢が繰り返して起こる場合、特に家族にクローン病患者がいる場合や肛門周囲に症状がある場合にクローン病を疑います。関節、眼、皮膚の炎症も診断の手がかりになります。触診では下腹部にしこりや盛り上がりを触れ、特に右側にそれがよくみられます。

クローン病を確定できる特異的な検査はありませんが、血液検査では貧血がみられ、白血球数の異常増加や、血液中のタンパク質であるアルブミンの減少などから、炎症が生じていることがわかります。

診察と血液検査が済んだら、通常は大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)と生検(顕微鏡で調べるための組織サンプルの切除)を行います。

写真

クローン病

クローン病

クローン病が小腸内に限局している場合は、大腸内視鏡検査では病気を発見できません。しかしクローン病は普通、バリウムを飲んでから行う造影X線検査で診断がつきます。浣腸を行った後にバリウムを飲んで撮影したX線画像は、大腸のクローン病に特徴的な像を映し出します。CT検査は、クローン病と潰瘍性大腸炎を判別するのに有用な情報を映し出し、膿瘍や瘻などの消化管壁の外側に起こる合併症を診断するのに最も有効な検査です。

治療と経過の見通し

クローン病を治癒する方法はありませんが、さまざまな治療法で痛みを和らげ、症状を軽減することができます。

下痢止め薬: これらの薬は腹痛と下痢を緩和します(便秘の予防や治療に使う主な薬を参照)。これらには、神経系の正常な作用を部分的にブロックする抗コリン作用薬(抗コリン作用とはを参照)、ジフェノキシレート、ロペラミド、脱臭アヘンチンキ、コデインなどがあり、食前に内服します。メチルセルロースやオオバコ種子製剤の服用も、便を硬くして肛門の炎症を軽減するのに役立ちます。

抗炎症薬: スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジド(スルファサラジンと化学的に類似した薬剤)は、炎症を軽減します。これらの薬は、特に大腸の炎症を軽減し症状を抑えます。メサラミンは再発予防にわずかながら効果があります。しかし、これらの薬はすべて、重症の再発例にはあまり効果がありません。

プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬を経口投与すると、発熱と下痢を劇的に軽減し、腹痛と圧痛を緩和し、食欲や体調が良くなります。しかし、ステロイド療法を長期に続けると、まず間違いなく副作用が起こります(コルチコステロイド薬の使用法と副作用を参照)。一般的な投与法は、炎症と症状を軽減するために高用量を投与したら、その後は用量を減らし、できるだけ短期に終了させます。新しいステロイド薬のブデソニドは、プレドニゾロンより副作用が少ないですが効果も少なく、一般に6〜9カ月後の再発を防止できません。

症状が重くなった場合は、入院してステロイド薬を静脈注射します。当初は、患者は絶食して輸液で体内の水分を維持・回復します。重症の直腸出血がある場合には輸血が必要となり、軽度の貧血がある場合には鉄剤を補給します。

免疫抑制薬: アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、免疫系の作用を調節し、他の薬剤で改善されないクローン病に効果があり、特に長期間の寛解(症状が改善された状態)を保つのに有効です。免疫抑制薬は全身状態を大きく改善し、ステロイド薬の必要量を減らし、しばしば瘻が治ります。しかし、免疫抑制薬は効果が現れるまでに2〜4カ月かかり、重症の副作用も起こります。そのため、医師はアレルギー反応や膵炎、白血球数の減少を注意深く監視します。新たに開発された血液検査により、安全で効果的な服用量を決めることができます。

メトトレキサートは、1週間に1回注射で投与し、ステロイド薬やアザチオプリン、メルカプトプリンに反応しなかったり、これらの薬の使用に耐えられない場合に用います。高用量のシクロスポリンは炎症を軽減し、瘻を治しますが、長期間安全に使用することができません。

インフリキシマブは、モノクローナル抗体からつくられた薬で、免疫系の作用を変える薬の1つです。インフリキシマブは、他の薬で効果がみられない中等度から重度のクローン病患者に静脈注射します。しかし、1回の注入が有効な期間が短いため、次の注入までの間に別の治療を必要とします。インフリキシマブは比較的新しい薬なので、長期間使用した場合の有効性と副作用については、まだわかっていません。ほかにも免疫系を調節するさまざまな薬剤の開発が現在行われています。

薬の種類

薬剤名

主な副作用

備考

アミノサリチル酸系

 
  • バルサラジド
  • メサラミン
  • オルサラジン
  • スルファサラジン
吐き気、頭痛、めまい、疲労感、まれに肝炎と膵炎 腹痛、めまい、疲労感は服用量と関連。肝炎、膵炎は服用量と無関係。副作用はほかのどのアミノサリチル酸系よりもスルファサラジンでよくみられる

コルチコステロイド薬

  プレドニゾロン

糖尿病、高血圧、白内障、骨粗しょう症、皮膚の菲薄化、精神的障害(関節リウマチとその他の炎症性関節炎: コルチコステロイド薬の使用法と副作用を参照)

糖尿病と高血圧は他の危険因子もある人に起こりやすい
  ブデソニド

糖尿病、高血圧、白内障、骨粗しょう症(骨密度低下)(関節リウマチとその他の炎症性関節炎: コルチコステロイド薬の使用法と副作用を参照)

他のコルチコステロイド薬より副作用の発現率が低い

免疫抑制薬

 
  • アザチオプリン
  • メルカプトプリン
アレルギー反応 膵炎、白血球数の減少  
  シクロスポリン 高血圧、腎不全、リンパ腫(リンパ系の癌) 副作用は長期服用で起こりやすい
  メトトレキサート 肝硬変、白血球数の減少  
  インフリキシマブ 腹痛、気管支炎、感染症 発熱、じんま疹、血圧低下、呼吸困難などの多くの即時型副作用が点滴中に起こることがある

広域スペクトル抗生物質: さまざまな細菌類に有効な抗生物質は、感染による合併症を防ぐために用いられます。メトロニダゾールは、肛門周囲の膿瘍や瘻の治療に最もよく使われる薬です。メトロニダゾールは下痢や腹部の激しい痛みなど、クローン病の非感染性の症状にも有効です。しかし、長期間使用すると神経障害を起こし、腕や脚の皮膚にチクチクする感覚を生じます。この副作用は、服用を中止すると止まりますが、服用を中止するとクローン病が再発するのが一般的です。シプロフロキサシンやレボフロキサシンなどの抗生物質がメトロニダゾールの代用として、あるいは併用して用いられます。

食事療法: それぞれの栄養素の分量を正確に測った調整食を使うと、腸の閉塞状態や瘻を少なくとも短期間改善し、小児では食事療法をしない場合に比べて、成長を促すことになります。この食事療法は術前に、または手術に加えて実施されます。ときには高濃度の栄養剤を点滴で投与し、クローン病に特有の栄養素の吸収不足を補います。

手術: 腸が閉塞したり、膿瘍や瘻が治癒しない場合は、手術が必要になります。腸の病巣部を切除すると長期にわたって症状が改善されますが、治癒するわけではありません。術後に数種類の薬物による治療を始めると緩和できるものの、残った腸を再接合した部分にクローン病は再発する傾向があります。最終的には、半数近くの人に再手術が必要となります。そのため、手術を行うのは、特定の合併症があるか、薬物療法で効果がなかった場合に限られます。それでも、手術を受けた患者の大部分が、手術前よりも生活の質が改善したと考えています。

クローン病は、罹患した人の寿命を縮めることはありません。しかし、長期にわたるクローン病により消化管の癌を生じ、それによって死亡する場合があります。

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