メルクマニュアル家庭版
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その他の膵臓腫瘍

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インスリノーマ

インスリノーマ(インスリン分泌性膵島細胞腺腫)はまれな膵臓腫瘍で、この腫瘍から過剰なインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が低下します。

癌性のインスリノーマは10%のみです。

症状

血糖値が下がることによって症状が現れます。低血糖は何時間も食事を取っていないとき(多くは夕飯後何も食べなかった日の翌朝)に起こります。その症状は失神、脱力、ふるえ、動悸(どうき)、発汗、緊張感、空腹感などです。ほかにも頭痛や錯乱、視覚障害、フラフラ感、著しい人格変化などを伴うこともあります。低血糖が続けば意識がなくなってけいれんや昏睡状態に陥ります。

診断と治療

インスリノーマの診断は困難です。入院して少なくとも24時間、場合によっては最長72時間絶食をして検査をします。この間に症状が現れるので、血液検査で血糖値とインスリン値を測定します。インスリノーマでは血糖値が異常な低値を示し、インスリン値は高値を示します。次いで腫瘍の位置を正確に知る必要があり、CT検査、超音波検査、動脈造影検査(動脈に造影剤を注入して行うX線撮影)を実施しますが、試験開腹が必要となる場合があります。

インスリノーマの治療は、まず腫瘍を切除します。これによっておよそ90%が完治します。腫瘍が完全に切除できずに症状が続くようであれば、いくつかの薬(たとえばストレプトゾシン、オクトレオチド)が有効です。

ガストリノーマ

ガストリノーマ(ガストリン産生腫瘍)は膵臓または十二指腸にできる腫瘍で、ガストリンが過剰に産生され胃酸や消化酵素の分泌が促進されるために、胃が刺激されて消化性潰瘍を生じます。

ガストリノーマは膵臓内または膵臓周囲に群がって発生していることが多く、この腫瘍のおよそ半分は癌性です。多発性内分泌腫瘍という病気があります。これはいろいろな内分泌組織(膵臓のインスリン産生細胞など)に腫瘍が発生するもので、遺伝性の病気ですが、ガストリノーマはこの病気の1つとして発症することもあります。

症状と診断

ガストリンが過剰に産生されると、ゾリンジャー‐エリソン症候群(ゾリンジャー‐エリソン症候群:胃酸を産生する癌を参照)を引き起こし、胃や十二指腸、他の腸管に難治性潰瘍ができます。ゾリンジャー‐エリソン症候群の25%は、診断時には潰瘍は認められませんが、潰瘍で腸の破裂、出血、閉塞が起こると致死的となります。ガストリノーマの半数以上には消化性潰瘍と同じような症状しか現れません。患者の25〜40%では下痢が初発症状です。

通常の潰瘍治療に反応しない消化性潰瘍が頻繁にみられたり、消化性潰瘍を繰り返すようなことがあれば、ガストリノーマを疑います。ガストリンの異常高値は血液検査で確かめられ、これが最も信頼できる検査です。また鼻から胃へ細いチューブを入れて胃液を採取して調べると、非常に強い酸性を示します。CT検査、超音波検査、動脈造影検査などの画像診断で腫瘍の位置を探しますが、腫瘍が小さいので確定はなかなか困難です。

治療

高用量のプロトンポンプ阻害薬(消化性の病気: 胃酸分泌抑制薬を参照、消化性の病気の治療に使われる主な薬を参照)を投与すると、胃液の酸度が下がって症状は一時的に改善します。多発性内分泌腫瘍ではない場合は、患者の20%ほどはガストリノーマを切除すれば完治します。この治療法で効果がみられなければ、胃をすべて摘出します(胃全摘術)。この手術では腫瘍は切除しませんが、胃がなくなれば胃酸もつくられなくなるので、ガストリンによって潰瘍ができることはなくなります。胃を切除した場合は、鉄分とカルシウムを絶えず経口で補給し、月1回ビタミンB12を注射しなければいけません。胃を切除して胃酸がつくられなくなると、これらの栄養素の吸収が悪くなるためです。

悪性腫瘍が他の部位に転移したときには、化学療法で腫瘍細胞の数を減らして血液中のガストリン値を下げます。しかし化学療法で癌が完治することはなく、結局のところ転移があれば致死的となります。

グルカゴノーマ

グルカゴノーマ(グルカゴン産生腫瘍)はグルカゴンを産生する膵臓の腫瘍で、血糖値が上昇し特有の発疹が現れます。

グルカゴノーマのおよそ80%は癌です。しかし腫瘍の成長が遅いため、多くの人が診断後15年以上生存しています。症状が出はじめる平均年齢は50歳です。グルカゴノーマ患者の約80%は女性です。

症状と診断

グルカゴンの血液中の濃度が高くなるので糖尿病症状を来し、体重も減少します。90%の患者に現れる顕著な徴候は、慢性的な赤茶色の発疹(天疱瘡様皮膚炎)と、なめらかで赤橙色に輝く舌です。口角炎もできます。発疹はかさぶたになり、鼠径部(そけいぶ)から始まって殿部、脚、上腕へと広がります。

診断は、グルカゴンの血液中の濃度が高値であることを確かめ、続いて動脈造影検査(肝臓と胆嚢の検査: 画像診断を参照)と開腹手術で腫瘍の位置を確認します。

治療

腫瘍を手術で切除して症状をなくすことが理想的ですが、切除ができない場合や転移している場合は、化学療法でグルカゴン値を下げて症状の軽減を図ります。しかし化学療法では延命は期待できません。オクトレオチドを投与してグルカゴン値を下げると、発疹が消えて食欲が増し体重も増えてきますが、オクトレオチドの投与で逆に血糖値が上がってしまうこともあります。発疹には亜鉛軟膏(あえんなんこう)を塗ったりアミノ酸や脂肪酸の静脈投与で治ることもあります。

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