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門脈圧亢進症

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門脈圧亢進症は、腸から肝臓につながる大静脈である門脈から枝分かれした血管内で、血圧が異常に高くなることです。

門脈には腸全体、脾臓、膵臓、胆嚢から流れ出る血液が集まります。肝臓に入ると、静脈は左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。肝臓から流れ出す血液は、肝静脈を通って体循環に戻ります(肝臓への血液の供給ルートを参照)。

門脈の血圧(門脈圧)を上昇させる要因には2つあります。門脈を通る血流量の増加と、肝臓を通る血流に対する抵抗の増大です。欧米諸国では、門脈圧が亢進する最も一般的な原因は肝硬変による血流抵抗の増大で、アルコールの過剰摂取がその一番の原因となっています。

門脈圧の亢進によって、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回するルートが形成されます。側副血行路と呼ばれるこのバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入りこむようになります。側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、ときに大出血を起こします。側副血行路はこのほか、へその周辺部や直腸で発達することもあります。

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食道静脈瘤

食道静脈瘤

症状と診断

脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の亢進はしばしば脾臓の腫れを引き起こします。タンパク質を含む体液(腹水)が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔が膨張することもあります。食道静脈瘤や胃の上部の静脈瘤は出血しやすく、ときには大出血となります。直腸の静脈瘤もまれに出血することがあります。

触診では腹壁ごしに、腫れた脾臓が感じられます。腹水は、腹部のふくらみや、軽くたたいて打診を行うと鈍い音がすることから診断されます。超音波検査では、門脈内の血流を調べたり、腹水の存在を確かめることができます。側副血行路の検出にはCT検査も用いられます。ごくまれに、腹壁を通して肝臓や脾臓に針を挿入し、門脈内の血圧を直接測定することがあります(マノメトリー)。

治療

食道静脈瘤からの出血のリスクを軽減するためには、門脈の血圧を下げる治療を行います。たとえば、降圧薬のプロプラノロールを投与します。

食道静脈瘤から出血している場合は、緊急処置が必要です(消化管の救急: 消化管出血を参照)。出血している静脈を収縮させるためにバソプレシンやオクトレオチドなどの薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。通常は内視鏡検査を行い、静脈瘤から出血していることを確認します。特殊なゴムバンドで血管を縛ったり、内視鏡から化学物質を注入して、静脈をふさぎます。

出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と静脈系(体循環)の間にシャントと呼ばれるバイパスを通すことがあります。静脈系の血圧の方がはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。

門脈と体循環の間のシャント手術にはさまざまな方法があります。その1つである経頸静脈的肝内門脈体循環シャント術(TIPS)では、X線画像で確認して肝臓に注射針を刺し、門脈静脈から肝静脈に直接シャントを形成します。このシャント術を行えば出血はほぼ止められる半面、肝性脳症(肝臓の病気でみられる症状: 肝性脳症を参照)などのリスクを伴います。このシャント術は他の門脈体循環シャント術と比較すれば危険性は低いのですが、人によってはシャントが狭くなるために定期的に手術を受ける場合もあります。

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