メルクマニュアル家庭版
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セクション

症状

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症状は尿路の病気を診断する際の重要な手がかりになります。しかし、感染、結石、尿路閉塞、腫瘍などの尿路疾患の場合は、症状が出ないこともあります。特に慢性腎不全では、かなり進んだ段階へ進行するまで、症状はまったくありません。全身のだるさ(けん怠感)や食欲不振が最初の症状であることが多く、体重が減少します。高齢者では、精神の錯乱が最初の症状である場合もあります。

発熱

発熱は、感染による腎臓の炎症(腎炎)または腎臓結石の症状である可能性があります。腎臓の細菌感染(腎盂[じんう]腎炎)ではほとんどの場合、高熱が出ます。腎臓の癌(がん:腎癌)でも発熱することがあります。膀胱の感染(膀胱炎)では結石や閉塞などの合併症がない限り、発熱はめったに起こりません。

痛み

腎臓の病気によって引き起こされる痛みは、通常、わき腹(側腹部)や腰(腰背部)に感じられます。痛みが腹部の中央に放散することもあります。一般に、痛みが起こるのは、腎組織の腫れを引き起こす病気が原因で腎臓の外層(腎被膜)が引っぱられるためです。

腎臓結石が尿管に入ると非常に激しい痛みが生じます。結石に反応して尿管が収縮し、それによって腰背部に激しいけいれん性の痛み(腎疝痛)が起こり、痛みはしばしば鼠径部(そけいぶ)に放散します。尿管が弛緩するか結石が膀胱に入ってしまうと、痛みは止まります。

膀胱の痛みは、ほとんどの場合、細菌感染が原因です。通常、恥骨の上部に不快感を感じ、排尿時には尿道の出口で不快感を感じます。尿の流出が妨げられると、恥骨の上部に痛みが生じます。しかし、尿の流出が徐々に妨げられた場合には、痛みは生じずに膀胱が膨張します。

疲労感、吐き気、嘔吐、かゆみ

疲労感、吐き気、嘔吐、広い範囲の皮膚のかゆみは、腎不全の人によくみられる症状です。こうした症状は、弱った腎臓では排出できない酸などの代謝性老廃物が蓄積するために起こります。疲労感は赤血球産生量の減少によっても起こり、慢性腎不全でよくみられます。

むくみ、腫れ

むくみや腫れ(浮腫)は、組織に体液がたまることが原因で生じます。むくみや腫れが生じると体重が増えます。通常は足首や足で最も目立ちますが、腹部、背中の下部、手、顔にも生じます。

腎臓が体から余分な水分やナトリウムを排出できないと、むくみや腫れが起こります。また、大量のタンパク質(特にアルブミン)が尿に漏れ出てしまう腎疾患(ネフローゼ症候群)でも生じます。血液中のアルブミン濃度が低下すると、体液が循環血液中から組織に漏れ出てむくみや腫れが起こります。

排尿の問題

ほとんどの人は1日に約4〜6回、主に日中に排尿します。通常、成人が1日に排出する尿の量は約700〜1900ミリリットルです。乳児では1日に200〜250ミリリットルほどです。

頻尿: 利尿薬や血糖値の上昇など、尿の量を増やす要因はすべて頻尿の原因になります。1日の総尿量が増えずに排尿の回数が増えるのは、尿路感染症の症状か、結石や腫瘍などによる膀胱刺激症状と考えられます。腫瘍ができて膀胱の外壁を圧迫している場合も、膀胱の容量が低下するため、頻繁に尿意を感じるようになります。また、男性の前立腺肥大が原因で尿道が部分的に狭窄すると、膀胱を完全に空にできなくなるために頻尿になることがよくあります。

尿量の変化: 何らかの病気が原因で尿を濃縮する腎臓の能力が損なわれると、1日の尿量が増えます。たとえば血液中のブドウ糖の量が増える(糖尿病)、下垂体による抗利尿ホルモンの分泌量が減る(尿崩症)、あるいは腎臓が抗利尿ホルモンに十分反応できない(腎性尿崩症)といった場合には、尿量が増加します。

特定の腎疾患(腎不全など)や尿路疾患(両側の尿管の閉塞、膀胱の出口の閉塞、尿道の閉塞など)によって1日の尿量が突然減少し、1日500ミリリットル未満になることがあります。尿量がさらに減少して1日250ミリリットル未満の状態が続くと、血液中に代謝性老廃物が蓄積します(高窒素血症)。

夜間の排尿: 多くの腎疾患の初期段階で、夜間の排尿回数が増えます(夜間多尿症)。夜間多尿症は、心不全、肝不全、コントロールされていない糖尿病、尿崩症の人でよくみられます。腎臓が尿を正常に濃縮できないと、夜間多尿症になります。夜間に非常に少量の尿を頻繁に排尿するのは、尿道を通過する尿の流れが妨げられて膀胱に尿がたまるためで、高齢の男性では前立腺肥大が最もよくみられる原因です(前立腺の病気: はじめにを参照)。しかし、ただ単に大量の水分、特にアルコール、コーヒー、お茶などを夜遅く飲んだために夜間の尿量が多くなっていることもあります。

年少児の夜尿症(遺尿症)は病気ではありません。5〜6歳を過ぎての夜尿は、尿路下部の筋肉と神経の成熟の遅れを示していることがありますが、ほとんどの場合、治療しなくても自然に治ります。夜尿症が続くようであれば、尿道感染、尿道狭窄、膀胱の神経のコントロールが不十分な状態、心理的な原因など他の原因を検討します。

排尿困難: 排尿開始時に尿が出にくい、力まなければならない、尿の出が弱く量が少ない、排尿終了時に尿がポタポタとたれるといった症状は、いずれも尿道の一部が狭くなった場合によくみられます。男性の場合、尿道を圧迫する前立腺肥大がこれらの症状の原因になっていることがよくありますが、まれに尿道狭窄が原因のこともあります。男児で同様の症状がみられる場合は、生まれつき尿道が異常に狭いか、体外への出口が異常に狭いことが原因になっています。女性でも、尿道の出口が異常に狭いことがあります。

尿意促迫: 尿意促迫とは、ほとんど絶え間のない痛みを伴う筋肉収縮(テネスムス)のような感覚で、膀胱の炎症が原因で生じることがあります。すぐに排尿しないと尿失禁が生じます。

尿失禁: 尿失禁とは排尿をコントロールできない状態をいい、さまざまな原因があります(尿失禁を参照)。

尿中の血液やガス: 尿に血液が混じると(血尿)、血液の量、尿に混じってから経過した時間の長さ、尿の酸性度などにより、尿が赤く見えたり、茶色に見えたりします。血液の量が少なくて尿が赤くならない場合でも、化学検査や顕微鏡による検査で検出されることがあります。痛みのない血尿の原因としては、膀胱、尿道、尿管、腎臓の病気があります。痛みを伴うこともあれば伴わないこともある血尿の原因には、腎臓結石、腎嚢胞(じんのうほう)、鎌状赤血球症、水腎症、癌があります。痛みを伴う血尿は、ほとんどの場合が腎臓または膀胱の感染症か、結石や血液のかたまりが尿管か尿道の中を移動することが原因で生じます。

尿に気泡(ガス)がみられることがまれにあり、これは通常、尿路と腸管の間にフィステル(瘻[ろう])と呼ばれる異常な通路があることを示す症状です。瘻は、憩室炎、腸の炎症、膿瘍(のうよう)、癌などの合併症として生じます。膀胱と腟(ちつ)の間の瘻でも、尿の中に気泡が混じることがあります。まれに、尿中の細菌によって気泡が発生することがあります。

尿の色の変化: 通常、尿はほとんど無色です。濃縮された尿は濃い黄色をしています。黄色以外の色は異常です。食品用の色素で尿が赤くなることがあり、薬物は尿を茶、黒、青、緑、赤などさまざまな色にします。茶色い尿には壊れたヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)が混じっていることがあり、腎臓、尿管、または膀胱の病気で血液が尿中に漏れると尿が茶色になります。まれに、溶血性貧血などの病気が原因で壊れたヘモグロビンが尿に出ることがあります。茶色い尿には、重度の筋損傷後に尿中に排出された筋タンパク質が入っていることがあります。尿の色が、ポルフィリン症で生じる色素のために赤くなったり、メラノーマ(黒色腫)によって分泌される色素で黒くなったりすることがあります。濁った尿は、尿路感染による膿、あるいは尿酸塩やリン酸塩の結晶が混じっていることを示唆します。異常な色の原因は、尿の化学検査や顕微鏡検査で同定できます。

尿のにおいの変化: 尿のにおいが、病気や健康状態についての手がかりになることがあります。脱水症状の場合にみられるように、尿は濃縮されればされるほど、においは強くなります。腎臓や尿路に細菌感染があると、尿に悪臭が生じます。コントロールされていない糖尿病の場合は、尿に甘いにおいがします。フェニルケトン尿症の小児の場合は、尿にかび臭いにおいがします(遺伝性の代謝異常症: フェニルケトン尿症を参照)。

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