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尿細管性アシドーシス

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尿細管性アシドーシスでは、尿細管がうまく機能しないため、血液から酸を取り除いて尿に排出できなくなります。

食物の代謝過程で生成した酸は、血液に入って循環します。腎臓はこの酸を血液から取り除き、尿中に排出します。この機能を主に行っているのが尿細管です。代謝性アシドーシスの原因の1つである尿細管性アシドーシスでは、酸を排出する腎臓の能力が一部損なわれ、血液中の酸の濃度が上昇します。電解質のバランスも崩れます。尿細管性アシドーシスによって、以下の異常が起こります。

  • 血液中のカリウム濃度の低下または上昇
  • 腎臓でのカルシウムの沈着
  • 脱水
  • 痛みを伴う骨の軟化と弯曲(骨軟化症、くる病)

尿細管性アシドーシスは遺伝性であるか、アセタゾラミドやアムホテリシンBなどの薬物、特定の重金属による中毒、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患などが原因で起こります。

症状と診断

尿細管性アシドーシスには、1型、2型、4型の3つのタイプがあります。タイプによって症状は少しずつ異なります。1型と2型では血液中のカリウム濃度が低くなり、神経系の異常による筋力低下、反射の低下、麻痺(まひ)などが現れます。4型ではカリウム濃度の上昇がよくみられますが、症状を引き起こすほど高くなることはめったにありません。濃度が非常に高くなると、不整脈や筋麻痺が起こります。1型では腎臓結石が生じることがあり、腎臓の細胞が損傷を受け、場合によっては慢性腎不全になることもあります。

筋力低下や反射の低下といった特徴的な所見があり、検査結果で血液の酸性度が高く重炭酸塩とカリウムの濃度が低い場合、診断として1型または2型の尿細管性アシドーシスが考えられます。血液の酸性度が高く重炭酸塩の濃度は低いが、カリウムの濃度は高い場合には、4型尿細管性アシドーシスが疑われます。尿細管性アシドーシスのタイプを確定する特殊検査が有用です。

尿細管性アシドーシスの種類

原因

背景にある問題

結果として生じる症状と代謝異常

1型 遺伝性の場合や、自己免疫疾患や薬剤などによって起こる場合があるが、特に女性では原因がわからないことが多い 尿中に酸を排出できない 血液の酸性度の上昇、軽度の脱水、血液中のカリウム濃度低下による筋力低下と麻痺、骨がもろくなる、骨の痛み、カルシウム沈着による腎臓結石、腎不全
2型 ファンコニ症候群、遺伝性果糖不耐症、ウィルソン病、ロウ症候群などの遺伝病が主な原因。重金属中毒や薬剤でも起こる 尿から重炭酸塩を再吸収できないため、血液中から重炭酸塩が失われる 血液の酸性度の上昇、軽度の脱水、低カリウム血症
4型 遺伝性ではない。糖尿病、自己免疫疾患、鎌状赤血球貧血、尿路の閉塞などが原因で起こる 腎臓でカリウムとナトリウムの排出を調節するホルモンであるアルドステロンの欠乏、またはアルドステロンへの反応不良 血液の酸性度の上昇と高カリウム血症が生じるが、症状が現れることはまれ。ただしカリウム値が非常に高くなると、不整脈や筋麻痺が起こる

3型はありません。

治療

治療法は尿細管性アシドーシスのタイプによって異なります。1型と2型では重炭酸ナトリウム(重曹)の溶液を毎日飲んで、食物から生成する酸を中和します。この治療は症状を軽減し、腎不全や骨の病気の予防や悪化防止にもなります。このほか治療用に特別に調製された溶液もあり、カリウムの補給が必要になることもあります。4型のアシドーシスは軽いため、重炭酸ナトリウムが不要な場合もあります。血液中のカリウム濃度が高い場合にはカリウムの摂取を制限し、必要であれば利尿薬を使って抑えます。

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