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糖尿病

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糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないために血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。

インスリンは膵臓から放出されるホルモンで、血液中の糖量を制御しています。食べたり飲んだりした食べものは、体が機能するために、糖も含め必要な成分に分解されます。吸収された糖が血液中に入ると、膵臓が刺激されてインスリンが産生されます。インスリンは糖を細胞に取りこみ、取りこまれた糖はエネルギーに変換され、すぐに消費されるか、必要なときまで蓄えられます。

正常な人では、血糖値は1日を通して変化しています。食後は血糖値が上昇し、食後約2時間以内に正常に戻ります。血糖値が正常に戻ると、インスリン産生は低下します。血糖値の変動幅は狭く、約70〜110mg/dLです。炭水化物を大量に食べた場合、血糖値はより高くなります。65歳以上の人は、特に食後の血糖値がやや高くなる傾向があります。

糖を細胞に移動させるインスリンが体内で十分につくられない場合は、血糖値が高くなり、細胞内の糖の量は不足して、これらが原因で糖尿病の症状と合併症を引き起こします。

糖尿病のことを真性糖尿病と呼ぶことがありますが、これは尿崩症という血糖値には影響のない比較的まれな病気と区別するためです(下垂体の病気: 中枢性尿崩症を参照)。

糖尿病の分類

1型: 1型糖尿病(以前はインスリン依存型糖尿病あるいは若年型糖尿病と呼ばれていた)は、膵臓のインスリン産生細胞の90%以上が永久的に破壊されています。そのため、膵臓はインスリンをほとんど、あるいはまったくつくりません。米国では糖尿病の人のうち約10%が1型です。1型糖尿病は多くが30歳前に発症します。

科学者は、小児期または青年期のウイルス感染症や栄養因子などの環境因子が原因となって、自己免疫システムが膵臓のインスリン産生細胞を破壊するのではないかと考えています。遺伝的素因が環境因子の影響を受けやすくしています。

2型: 2型糖尿病(以前はインスリン非依存型あるいは成人型糖尿病と呼ばれていた)では、膵臓はインスリンをつくり続けていて、ときには正常値より高い場合さえあります。しかし、体がインスリンに抵抗を示し、結果として体の必要に応じたインスリンが不足します。

2型糖尿病は小児期や青年期でも発症しますが、通常は30歳以上での発症が多く、年齢が高くなるにつれて多くなります。70代以上では約15%の人が2型糖尿病です。特定の人種や文化圏の人は2型糖尿病になるリスクが高いことが知られています。たとえば、黒人やヒスパニック系で米国に住んでいる人はリスクが2〜3倍も高くなります。2型糖尿病は遺伝する傾向もあります。

肥満は2型糖尿病の主な危険因子であり、この病気の人の80〜90%が肥満です。これは肥満がインスリン抵抗性を引き起こすためで、肥満の人は正常な血糖値を維持するのに大量のインスリンが必要になります。

特定の疾患や薬が体のインスリンの使い方に影響し、2型糖尿病を誘発することがあります。インスリンの使い方を変える原因になることが多いのは、クッシング病やコルチコステロイド薬の使用によるコルチコステロイドの高値と妊娠(妊娠性糖尿病)(ハイリスク妊娠: 妊娠糖尿病を参照)です。糖尿病は成長ホルモンが過剰につくられてしまう人(先端巨大症)や特定のホルモン分泌腫瘍がある人にも起こります。重症あるいは再発性の膵炎や、膵臓に直接損傷を与える他の疾患も糖尿病を引き起こします。

症状

1型糖尿病も2型糖尿病も症状は非常に似ています。最初に現れるのは高血糖の直接作用に関係した症状です。血糖値が160〜180mg/dLを超えると、尿中に糖が出てきます。尿中の糖の値がさらに高くなると、腎臓が大量の糖を希釈するために余分な水分を排出します。腎臓が尿を過剰につくるので、糖尿病の人は大量の排尿が頻繁にあります(多尿症)。過剰な排尿により異常なのどの渇きを生じます(多渇症)。カロリーの多くが尿で失われるために体重が減ります。その代償として、強い空腹感を感じます。その他の症状に、眼のかすみ、眠気、吐き気、運動持久力の低下があります。

1型: 1型糖尿病の症状は突然、劇的に始まります。糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる状態に急速に進行することがあります。ほとんどの細胞はインスリンなしでは血液中の糖を使うことができません。細胞は生きるためにエネルギーが必要なので、エネルギーを得るために予備のメカニズムに切り替えます。つまり脂肪細胞が分解しはじめ、ケトンという化合物を産生します。ケトンは細胞にエネルギーを供給しますが、同時に血液を酸性にしすぎてしまいます(ケトアシドーシス)。糖尿病性ケトアシドーシスの最初の症状は、激しいのどの渇きと頻尿、体重の減少、吐き気、嘔吐、疲労で、特に小児では腹痛を起こします。血液の酸性度を修正しようと、呼吸は深く速くなる傾向があります(酸塩基平衡: アシドーシスを参照)。吐く息にケトンが漏れ出てマニキュアの除光液のようなにおいがします。治療しなければ糖尿病性ケトアシドーシスが進行して、数時間のうちに昏睡に陥ったり死に至るおそれがあります。

2型: 2型糖尿病の人では、診断されるまで数年から数十年にわたり症状が現れないか、あってもごく軽い症状です。排尿の増加とのどの渇きは初めは軽度ですが、数週間あるいは数カ月を過ぎると徐々に悪化します。やがて、非常に疲労を感じ、眼のかすみと脱水症が進行します。

糖尿病の初期の段階では、血糖値が異常に低くなり、低血糖と呼ばれる状態になる場合もあります(低血糖を参照)。

2型糖尿病の人はインスリンをつくっているのでケトアシドーシスは進行しません。しかし、血糖値はきわめて高くなります(しばしば1000mg/dLを超えます)。このような高い値は感染症、薬の使用などのストレスが重なった場合に起こります。血糖値が非常に高いと重度の脱水症に陥り、精神錯乱、眠気、発作など、非ケトン性高血糖性高浸透圧性昏睡と呼ばれる状態を引き起こします。

合併症

糖尿病の人は重症で長期間に及ぶ多くの合併症を経験します。合併症は糖尿病になって数カ月のうちに始まるものもありますが、大半は数年が経過してから現れます。合併症の多くは進行性です。血糖値を厳密にコントロールしている人ほど合併症を発症したり悪化することが少ない傾向にあります。

血糖値が高いと大血管も小血管も狭くなります。糖の複合物質が細い血管の壁に蓄積されて、血管が厚くなり血液が漏れ出します。血管が厚くなると、特に皮膚と神経に供給できる血液量が減少します。血糖値のコントロールが不十分だと、血液中の脂質レベルも高くなってアテローム動脈硬化(アテローム動脈硬化を参照)を起こし、大血管の血流が低下します。糖尿病の人は糖尿病でない人に比べてアテローム動脈硬化が2〜6倍多く、若い時期から起こる傾向があります。

高血糖が長時間続くと、血液の循環不良によって心臓、脳、脚、眼、腎臓、神経、皮膚に障害が現れ、狭心症、心不全、脳卒中、歩行時の脚のけいれん(跛行[はこう])、視力低下、腎不全、神経の損傷(神経障害)、皮膚の損傷などが起こります。心臓発作と脳卒中も糖尿病の人に多く起きます。

皮膚の血液循環が悪いと潰瘍(かいよう)と感染症が起こりやすく、傷はすべて治りにくくなります。糖尿病では特に下肢の潰瘍や感染症を起こしやすく、これらの傷は治りにくいか、まったく治らず、足や脚の一部を切断しなければならないこともあります。

糖尿病の人は細菌や真菌にしばしば感染し、それが皮膚に典型的に現れます。血糖値が高いと、白血球は感染に対して有効に働くことができません。発症したあらゆる感染症はより重症化しやすくなります。

眼の血管が損傷されると視力を失うおそれがあります(糖尿病網膜症)(網膜の病気: 糖尿病網膜症を参照)。レーザー手術によって眼の血液が漏れている血管を塞げば、永続的な網膜の損傷を防ぐことができます。したがって、糖尿病の人は眼の損傷をチェックする検査を毎年受けるべきです。

腎臓が機能しなくなり腎不全になると、透析あるいは腎移植が必要になります。医師が糖尿病患者の尿をチェックするのは、異常に高いタンパク(アルブミン)値が腎障害の初期の徴候だからです。腎臓合併症の最初の徴候がみられたら、腎臓病の進行を遅らせるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が投与されます。

神経の損傷にはいくつかの徴候があります。単一の神経が機能しなくなると、片腕または片脚の力が突然弱くなります。両手、両脚、両足の神経が損傷すると(糖尿病性多発性神経障害)、感覚が異常になり、刺すような、または焼けるような痛みが生じ、腕と脚に力が入らなくなります(末梢神経の障害: 原因を参照)。皮膚の神経が損傷すると圧力や温度の変化を感じなくなるため外傷を繰り返すようになります。

糖尿病の長期合併症

組織または器官

起こる現象

合併症

血管 アテローム動脈硬化のプラークが形成され、心臓、脳、脚、陰茎の大動脈や中動脈の血流を妨げる。小血管の血管壁は損傷を受けて酸素が正常に運べなくなり、血液が漏れ出す 血液循環の悪化により傷が治りにくくなり、心臓病、脳卒中、手足の壊疽、勃起機能障害(インポテンス)および感染症が起こる
網膜の毛細血管が損傷される 視力低下、最終的に失明
腎臓 腎臓内の血管が肥厚し、尿にタンパク質が漏れ出て、血液は正常にろ過されない 腎機能低下、腎不全
神経 ブドウ糖が正常に代謝されず、血液の供給が不十分なために神経が損傷される 突然または徐々に起きる脚力の低下、感覚の低下、刺すような痛み、手足の痛み、神経の慢性的な損傷
自律神経系 血圧と消化過程を制御する神経が損傷される 血圧の変動、ものを飲みこみにくくなる、下痢を伴う消化機能の異常
皮膚 皮膚への血流が不足し感覚が失われるためにけがを繰り返す びらん、深部まで達する感染症(糖尿病潰瘍)、傷が治りにくくなる
血液 白血球の機能が障害される 感染症を起こしやすくなる(特に尿路と皮膚)
結合組織 ブドウ糖が正常に代謝されず、組織が肥厚または収縮する 手根管症候群、デュピュイトラン拘縮
糖尿病と足

糖尿病は体に多くの変化をもたらします。足では次に挙げる変化がよくみられ、その治療は困難です。

  • 神経障害(神経の損傷)によって足の感覚が影響を受け、痛みを感じません。刺激や外傷に気づかず、痛みを感じる前に傷が皮膚を突き抜けて深くまで侵すことがあります。
  • その他の感覚の変化は、糖尿病の人は体重のかけ方が変わり、特定部分に集中するためたこができます。たこ(乾燥皮膚に沿って)は皮膚が破れるリスクを増大します。
  • 糖尿病は足の血液循環を低下させ、皮膚が傷つくと潰瘍を形成して治りにくくなります。

足への影響に加えて、糖尿病は感染に対する抵抗力にも影響します。そのため一度潰瘍ができると感染しやすく、また悪化して治りにくく、壊疽へと進行します。糖尿病の人は足あるいは脚の切断が必要になる割合が糖尿病でない人に比べて30倍以上も高くなります。

足のケアが重要です(足のケアをする方法を参照)。足は傷つけないように保護し、皮膚は保湿剤で潤いを保つようにします。靴は足によく合っていて、刺激する部分のないもの、立って足の圧力を分散できる適切なクッションがあるものを選ぶべきです。はだしは勧められません。定期的に足の専門医のもとで、足指の爪を切ってもらったりたこの除去などの処置を受けるのも有用です。足の感覚と血流の測定も定期的に受けるようにします。

診断

血糖値が異常に高ければ糖尿病と診断されます。血糖値は定期健診でチェックされます。高齢になると糖尿病になりやすいので、毎年定期的に血糖値を調べることは中高年にとって特に重要です。特に2型糖尿病では本人が糖尿病に気づきません。激しいのどの渇き、排尿、空腹感あるいは頻繁な感染症といった症状、あるいは糖尿病に関連する合併症の徴候がある場合は血糖値を測定します。

血糖値の測定は、通常、前夜から絶食して採血しますが、食後に採血することもあります。食後の血糖値がある程度上昇するのは正常ですが、高すぎるのはよくありません。空腹時血糖値は126mg/dLより高くなってはいけません。食後でも200mg/dLより高くなるのは好ましくありません。

医師は血中タンパク質のヘモグロビンA1C(グリコヘモグロビン)も測定します。この検査は、成人で血糖値が少しだけ上昇している場合、診断の確定に最も役立ちます(糖尿病: 治療経過のモニタリングを参照)。

そのほかに血液検査としては、経口ブドウ糖負荷試験があります。この検査は糖尿病の検査としてだれにでも広く行うものではなく、妊娠している女性で妊娠性糖尿病(ハイリスク妊娠: 妊娠糖尿病を参照)の疑いがある、あるいは糖尿病の症状がある高齢者で空腹時の血糖値が正常である、などの特定のケースを対象に行われます。しかし、この試験は糖尿病の検査としていつも同じように役に立つとは限りません。この検査では、まず絶食状態で採血し、空腹時血糖値を測定します。次に、標準量の多量のブドウ糖を含む特殊な溶液を飲み、2〜3時間後に再度採血し、その結果から摂取したブドウ糖に対して血糖値が異常に高くないか判断します。

治療

糖尿病の治療は食事療法、運動療法、患者本人への教育、そして多くの場合、薬物療法が行われます。糖尿病の人は血糖値を厳しくコントロールしていれば、合併症が起こりにくくなります。糖尿病治療の目標は、血糖値をできる限り正常範囲に維持することです。高血圧と高コレステロールの治療は糖尿病の合併症の治療にもなります。低用量のアスピリンを毎日服用することも役に立ちます。

糖尿病の人が自分の病気について学び、食事と運動が血糖値にどのように影響するかを理解し、合併症の予防法を知ることはとても有益です。糖尿病の研修を受けた看護師は、そうした情報を提供してくれます。

糖尿病の人は、医療関係者に糖尿病であることがわかるように、医療識別のブレスレットやタグを持ち歩くか身につけるべきです。特に大けがや危険な精神状態の際などには、医療専門家はこの情報を基に素早く救命処置を始められます。

食事管理はいずれのタイプの糖尿病の人にも非常に重要です。健康的な栄養バランスのとれた食事と健康的な体重を維持するように勧められます。栄養士に最適な食事プランを作成してもらうことも有益です。

1型糖尿病で健康的な体重を維持できる人は、大量のインスリンを必要とせずにすみます。2型糖尿病では健康的な体重を維持することで薬物療法の必要がなくなります。一般的に、糖尿病の人は甘いものを食べすぎてはいけません。また、食事と食事の間を長く空けないように、食事は規則的に摂取するようにします。糖尿病の人は血液中のコレステロール値が高くなる傾向があるので、食事の飽和脂肪酸量を制限することが大切です。血液中のコレステロール値を制御する薬も必要です。

適度な運動も体重のコントロールに役立ち、血糖値を正常範囲に維持します。

血糖値が高くなりすぎないようにするのは、容易ではありません。血糖値を厳密にコントロールするのが難しい主な原因は、血糖値が低くなりすぎることがあるからです(低血糖)(低血糖を参照)。低血糖の治療は緊急を要します。後遺症を防ぎ症状を回復させるには、数分以内に糖を投与しなければなりません。ほとんどの糖尿病の人は、糖分を摂取します。糖の種類は問いませんが、ブドウ糖は食卓用の砂糖(一番多いのはショ糖)よりも速く作用します。糖尿病の人はブドウ糖の錠剤やブドウ糖入り溶液を携帯します。このほかに、コップ1杯の牛乳(糖の1種である乳糖を含む)、砂糖水、果物のジュースなどを飲んだり、ケーキ1切れ、果物、何か甘いものを食べるのも有効です。さらに重篤な状況では、救急の医療専門家にブドウ糖を静脈注射してもらう必要があります。

このほかに、低血糖の治療法にはグルカゴンを使用する方法があります。グルカゴンが筋肉に注射されると、肝臓は大量のブドウ糖を数分以内に放出します。グルカゴン入り注射器の小型携帯用キットがあれば緊急時に役立ちます。

糖尿病性ケトアシドーシスも昏睡や死亡に至ることがあるので、治療は緊急を要します。通常、集中治療室への入院が必要です。大量の水分が、過剰の排尿によって失われたナトリウム、カリウム、塩素、リン酸などの電解質とともに静脈を通して補給されます。インスリンは速く作用し、量を頻繁に調整できるように静脈から投与されます。糖、ケトン、電解質は数時間ごとに測定し、血液の酸性度も測定します。酸性度が高ければ修正する追加の処置が必要です。血糖値を制御し、電解質を補充すれば、体内の酸‐塩基バランスは正常に戻ります。

非ケトン性高浸透圧高血糖昏睡では、糖尿病性ケトアシドーシスと同様の治療を行います。この場合も水分と電解質を補給しなければなりません。脳に水分が急激に移行しないように、血糖値は徐々に正常値に戻さなければなりません。血糖値は糖尿病性ケトアシドーシスの場合より容易にコントロールされ、血液の酸性度も深刻な問題にはなりません。

インスリン補充療法

1型糖尿病の人の大半はインスリン療法が必要です。2型糖尿病でも同様に多くの人がインスリン療法を必要とします。インスリンは通常、注射されます。それはインスリンが胃で破壊されるため、経口では服用できないからです。現在は、鼻腔スプレーや経口で服用できる新しい剤形も試用されています。

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インスリン

インスリン

インスリンは通常、腕、もも、腹壁の皮下の脂肪層に注射します。使われる小型注射器は非常に針が細く、注射をしてもほとんど痛みを感じません。インスリンを皮下に送りこむエアポンプは、注射針が耐えられない人のために使用されます。インスリンペンはインスリン入りのカートリッジを備えられるので、携帯したり、特に1日数回、自宅以外でインスリン注射が必要な人には便利です。インスリンポンプを使う方法もあります。この装置は、皮膚に刺したままにした小さい針からインスリンを連続的に送りこみます。インスリンの追加量は、プログラムされた時間に、あるいは必要に応じて放出されます。ポンプによる補充法は体内でインスリンが正常につくられる方法に、よりよく似せた方法です。ポンプを使うとさらに良好に血糖コントロールができる人もいますが、ポンプの装着が煩わしいという人や、針を刺した部位がただれる人もいます。

インスリンには3種類の基本型があり、それぞれ作用する発現時間と持続時間が異なります。レギュラーインスリンなどの速効型インスリンは、作用が最も速く現れますが、持続時間は短時間です。リスプロインスリンはレギュラーインスリンの1種で、最も速効で作用します。速効型インスリンは毎日数回注射が必要な場合に使用され、食前15〜20分あるいは食後すぐに注射されます。この作用は投与後2〜4時間で最高の活性を示し、6〜8時間持続します。

中間型インスリン(インスリン亜鉛懸濁液、レンテあるいはイソフェンインスリン懸濁液など)は1〜3時間で効きはじめ、6〜10時間後に最大の効果を発し、18〜26時間持続します。この種類のインスリンは朝に注射して1日の前半分を供給するか、夕方使用して夜間のインスリンを供給します。遅効型インスリン(遅効型インスリン亜鉛懸濁液、ウルトラレンテ、グラルジンなど)は、最初の約6時間はほとんど作用がありませんが、28〜36時間効果を持続します。

インスリン製剤は、数カ月間は室温で安定しているので、持ち運びができ、職場や旅行にも携帯できます。しかし、インスリンは極端な温度で保存してはいけません。

インスリンはいろいろな要素を考え合わせて選択します。どのインスリンが最適か決める際には、以下の要素を考慮します。

  • 血糖値のチェックとインスリン量の調節が容易にできるか。
  • 日々の活動は多様に変化するか。
  • この病気についてどれだけ学び、理解しているか。
  • 1日の中で、また日々の血糖値はどれだけ安定しているか。

最も簡単な処方は、中間型インスリンを1日1回注射することです。しかしこの処方は高すぎる血糖値を最小限コントロールするだけなので、これで最適のコントロールができることはほとんどありません。朝、1回目の注射に速効型と中間型の2つのインスリンを組み合わせて使用すれば、より厳密なコントロールが可能です。血糖値を調節する機会が多くなるので、この組み合わせ方にはより高い技術が必要です。2回目の注射は、1種類か、両方を夕食時か就寝時に行います。最も厳密に血糖値をコントロールするには、速効型と中間型インスリンを朝晩注射し、さらに日中に速効型インスリンを数回、追加で注射します。インスリンは必要量の変化に応じて投与量を調節します。この処方は糖尿病の知識と治療上の細かい注意が必要ですが、インスリン治療を受けているほとんどの人にとって最良の方法と考えられます。

人によっては、特に高齢者では毎日同じ量のインスリンを注射しますが、その他の人では、食事、運動、血糖値のパターンで毎日のインスリン量を調節します。さらに、インスリン必要量は体重の変化、感情的ストレス、あるいは病気、特に感染症によって変化します。

長期間投与を続けると、インスリン抵抗性が現れる人がいます。注射されるインスリンは、体がつくるものと完全に同じではないため、このインスリンに対して抗体ができる場合があります。これらの抗体はインスリン活性を妨げるので、インスリン抵抗性のある人は大量のインスリンが必要になります。

インスリン注射は皮膚や皮下組織に影響を与えます。アレルギー反応はまれですが、痛みやほてりが生じ、それに続いて発赤、かゆみ、注射部位の周囲が数時間腫れたりします。さらに、注射によって脂肪が蓄積してこぶのようにふくらんだり、脂肪を破壊してできる皮膚のくぼみができます。多くの人は注射する部位を、たとえば、ある日はももに、別の日は腹部、次は腕というように順繰りに変えてこうした問題が起きないようにしています。

経口血糖降下薬

2型糖尿病では、経口血糖降下薬で血糖値を十分に下げることができます。しかし、1型糖尿病では効果がありません。経口血糖降下薬にはいくつかタイプがあります。スルホニル尿素薬(グリブリドなど)とメグリチニド(レパグリニドなど)は、膵臓のインスリン産生を刺激します(インスリン分泌促進薬)。ビグアナイド薬(メトホルミンなど)やチアゾリジン誘導体(ロジグリタゾンなど)は、インスリンの放出には影響しませんが、体のインスリンへの反応を促進します(インスリン抵抗性改善薬)。医師はこれらの薬のいずれかを単独か、それにスルホニル尿素薬を組み合わせて処方します。別のタイプの薬として、アカルボースなどのグルコシダーゼ阻害薬があり、これは腸内でブドウ糖の吸収を遅らせる作用があります。

インスリン補充療法

インスリン補充療法

経口血糖降下薬は、2型糖尿病の人が食事と運動で血糖値を十分に下げられない場合に処方されます。薬は毎朝1回だけ飲めばよいこともありますが、1日2〜3回必要なこともあります。1種類の薬で不十分な場合は、2種類以上処方されます。経口血糖降下薬で血糖値が十分に下がらない場合、インスリン注射あるいはそれに経口血糖降下薬を組み合わせた治療が必要です。

分類

薬剤名

1日の服用回数

主な副作用

ビグアナイド薬

  メトホルミン 2〜3 下痢、体液の酸性化(まれに)、肝不全(まれに)
  徐放性メトホルミン 1〜2  

スルホニル尿素薬

  アセトヘキサミド 1〜2 体重増加、クロルプロパミドでは血中ナトリウム減少(低ナトリウム血症)
  クロルプロパミド 1  
  グリメピリド 1  
  グリピジド 1〜2  
  グリブリド 1〜2  
  微粒化グリブリド 1〜2  
  トラザミド 1〜2  
  トルブタミド 1〜2  

メグリチニド

  ナテグリニド 3 わずかな体重増加
  レパグリニド 3  

チアゾリジン誘導体

  ピオグリタゾン 1 体重増加、うっ滞(浮腫)
  ロジグリタゾン 1〜2  

グルコシダーゼ阻害薬

  アカルボース 3 下痢、腹痛、腹部膨満感
  ミグリトール 3  

治療経過のモニタリング

血糖値の測定は糖尿病治療には不可欠です。糖尿病の人は、食事、運動、薬で血糖値を調節する必要があります。これらの調節に必要な情報は血糖値をチェックすることによって得られます。症状が現れるまで低血糖あるいは高血糖を放っておくと深刻な事態になります。

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血糖測定

血糖測定

血糖値を変化させる原因はたくさんあります。食事、運動、ストレス、病気、薬物、1日の時間帯でさえ影響します。気づかずに炭水化物の非常に多い食事を取ったために、食後に血糖値が急に上昇することもあります。運動すると血糖値が下がり、糖分が必要になります。感情的ストレス、感染症、薬物などは血糖値を上げる傾向があります。多くの人は血糖値が早朝に上がりますが、それはホルモンが正常に放出され(成長ホルモンとコルチコステロイド)、暁現象と呼ばれる反応が起こるためです。低血糖に対する反応でブドウ糖が放出されると、血糖値が急に跳ね上がります(ソモギー効果)。

血糖値は自宅でもどこでも容易に測定できます。血糖測定装置を使って、まず小さなランセットで指先を軽く刺して、血液を1滴採取して測定します。ランセットは指先を突く小さな針のことで、バネ仕掛けになっていて、素早く皮膚を突くことができます。多くの人は針を刺してもほとんど痛みはありません。次に、1滴の血液を試験紙に載せると、糖に反応して化学変化が起こります。その変化を測定器が読み取ってデジタルディスプレーに表示します。ほとんどの測定器で反応時間と結果を自動的に読み取ります。これらの測定器はカードより小さなサイズです。

新しい血糖値測定器には、血液を採取せずに皮膚を通して測定できるものがあります。これは腕時計のように身に着けて、15分ごとに血糖値を測定するものです。血糖値が低すぎたり高すぎるとアラーム音が鳴るように設定できます。この測定器が不便な点は、血液検査の際、定期的に目盛りを調整しなければならないこと、皮膚を刺激すること、大きくてかさばることです。

糖尿病の人は血糖値を記録し、血糖値を調節するインスリンと経口血糖降下薬の量についてアドバイスを受けるために、医師や看護師に報告するようにします。多くの人は、インスリン量の調節を体得して必要に応じて自分でできるようになります。

尿中の糖も検査できますが、尿検査は治療の経過観察や治療法の調節にはあまり良い方法ではありません。それは、尿検査による尿中の糖の値が、その時点の血糖値を直接反映しているわけではないため、検査結果によって誤った方向へ導かれるおそれがあるからです。血糖値は尿中の糖濃度の変化にかかわらず、大幅に低くなったり、ほどほどに高くなったりします。

医師は、ヘモグロビンA1Cという血液検査を用いて治療の経過を観察します。血糖値が高いと、血液中で酸素を運ぶタンパク質のヘモグロビンが変化します。長期的にみると、これらの変化は血糖値と相関関係にあります。つまり、ある瞬間の血糖値を示す血糖値測定と異なり、ヘモグロビンA1C値は血糖値が過去数週間にわたりコントロールされていたかどうかを示します。ヘモグロビンA1Cの正常値は7%未満です。糖尿病の人ではこの値はまれですが、血糖値を厳密にコントロールしてこの値に近づけるようにします。値が9%以上はコントロールが悪い、12%以上は非常に悪いことを示します。糖尿病治療の専門医はヘモグロビンA1Cを3〜6カ月ごとに測定することを勧めています。糖化アミノ酸のフルクトサミンの測定も、2〜3週間にわたる血糖制御状態を知るための指標として有効です。

実験的治療法

実験的治療は1型糖尿病の治療法として期待されています。1つは、インスリン産生細胞を体内に移植する治療法です。この方法がまだ日常的に行われないのは、移植細胞に対する拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬が必要だからです。免疫系の抑制が必要ない新しい技術が研究されています。

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