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ホジキン病

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ホジキン病はリンパ腫の1種で、リード‐シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞を特徴とします。

米国では、毎年新たに約8000人がホジキン病を発症します。ホジキン病は女性よりも男性に多く、女性2人に対して男性3人の割合でみられます。10歳以下の小児にみられることはめったになく、15〜34歳と60歳以上の人に最も多くみられます。

ホジキン病の原因はわかっていません。しかし、一部のホジキン病については、エプスタイン‐バー(EB)ウイルスへの感染によってBリンパ球が癌化し、リード‐シュテルンベルク細胞に転化することを示す有力な証拠があります。家族にホジキン病の人が複数出る場合もありますが、伝染性ではないと考えられています。

症状

ホジキン病では、1カ所または複数のリンパ節が腫れて大きくなります。最もよくみられるのは首のリンパ節の腫れですが、わきの下や足の付け根のリンパ節が腫れることもあります。痛みはないのが普通ですが、大量の飲酒後に腫大したリンパ節が数時間痛むこともあります。

人によっては、発熱、寝汗、体重減少、かゆみ、疲労などがみられることもあります。ペル‐エブスタイン熱(数日間の高熱と、数日から数週間の平熱または平熱以下の体温を繰り返す異常な体温パターン)がみられる場合もあります。がん細胞の増殖部位によっては、これ以外の症状が現れることもあり、たとえば胸のリンパ節が腫れた場合は、気道の一部が圧迫により狭くなり刺激されるため、せき、胸部の不快感、息切れなどの症状が出ます。脾臓や腹部のリンパ節が腫れた場合は、腹部に不快感が生じます。

ホジキン病の主な症状と原因

症状

原因

貧血(赤血球の減少)による脱力と息切れ、白血球の減少による感染と発熱、血小板の減少による出血、ときに骨痛 リンパ腫が骨髄に浸潤している
筋力の低下、声のかすれ 腫大したリンパ節が脊髄や声帯神経を圧迫している
黄疸 リンパ腫が肝臓からの胆汁の流れを遮断している
顔、首、腕のむくみ(上大静脈症候群) 腫大したリンパ節が頭部から心臓に戻る血流を遮断している
脚、足のむくみ(浮腫) リンパ腫が脚からのリンパ液の流れを遮断している
せき、息切れ リンパ腫が肺に浸潤している
感染防御力が低下し、真菌やウイルスによる感染症を起こしやすくなる 病気が広がり続けている

症状は複数の原因によって起こることもあります。

診断

感染を起こしていない人に痛みを伴わないリンパ節腫大が数週間続いている場合には、ホジキン病が疑われます。発熱、寝汗、体重減少を伴う場合は、ホジキン病の疑いがさらに強まります。かぜや感染症などでみられる痛みを伴うリンパ節の急な腫れは、ホジキン病の症状ではありません。別の理由で行ったX線検査やCT検査で、胸部や腹部の深い位置にあるリンパ節の腫れが偶然見つかることもあります。

血球数や他の血液検査の異常は有力な手がかりとなりますが、診断を確定するには、腫大したリンパ節の組織を採取し(生検)、顕微鏡で観察して組織の異常やリード‐シュテルンベルク細胞の有無を調べる必要があります。リード‐シュテルンベルク細胞は複数の核をもつ大型の癌細胞です。採取したリンパ節の組織を顕微鏡で調べると、特徴的な形をみることができます。

生検にはさまざまな方法があり、その選択は腫大しているリンパ節の位置と検査に必要な組織の量によって異なります。ホジキン病とリンパ節の腫大を生じる別の病気(非ホジキンリンパ腫、感染症、その他の癌)を判別するために、十分な量の組織を採取する必要があります。

十分な量の組織を確実に得るには、切除生検が最も適しています。これは、小さな切開創からリンパ節の一部を採取する方法です。腫大したリンパ節が皮膚に近いところにある場合は、中空の針を直接リンパ節に刺す方法で十分な量の組織を採取できます(針生検)。腫大したリンパ節が胸部や腹部の深い位置にある場合は、手術が必要になることもあります。

病期診断

治療を開始する前に、病期(ステージ)を判定し、リンパ腫の進行度を見きわめる必要があります。治療法の選択や経過の予測は、病期に基づいて行われます。最初の検査では腫大したリンパ節が1つしか見つからなかった場合でも、病期診断でリンパ腫の広がりの有無や範囲を詳しく調べると、腫大したリンパ節がいくつも見つかることがあります。

リンパ腫は、広がりの程度によって4つの病期に分類されます(リンパ腫の範囲が狭い順にステージI、II、III、IV)。病期はさらに、原因不明の発熱(38℃以上が連続して3日間)、寝汗、原因不明の体重減少(6カ月で体重の10%以上)という3つの症状の有無によって分類され、これらが1つもない場合をA、1つでもみられる場合をBとします。たとえば、寝汗を伴うステージIIのリンパ腫はステージIIBのホジキン病となります。

ホジキン病の病期診断や診察では、いくつかの検査が行われます。一般的に行われるのは、腎機能と肝機能検査を含む基本的な血液検査と、胸部、腹部、骨盤のCT検査です。CT検査では、腫大したリンパ節や、肝臓などの臓器に広がったリンパ腫が非常に正確に描出されます。

最も正確にホジキン病の病期診断と治療への反応の程度を判定できるのは、ポジトロンCT(PET)検査です。PET検査では組織の活動性がわかるため、治療を行った後、活動しているリンパ腫細胞と瘢痕(はんこん)組織とを判別することができます。このほか、ガリウムスキャンという検査は、病期診断と治療効果の経過観察に役立ちます。少量の放射性ガリウムを血流に注入し、3〜4日後に、放射性物質を検出する装置で内臓の画像を撮影します。

まれに、ホジキン病が腹部に広がっているかどうかを調べるために、手術が必要となることもあります。この手術では通常、腫大した脾臓を摘出し、肝生検を行って、腹部の臓器にリンパ腫が広がっていないか調べます。腹部の手術を行うのは、放射線療法のみを行うべきかどうか判断する場合など、その結果次第で治療法が異なる可能性が高い場合に限られます。

ホジキン病の病期

病期

病変の広がり

治癒率

ステージI 1つのリンパ節内に限局している 95%以上
ステージII 横隔膜の上側または下側のいずれかで2つ以上のリンパ節への浸潤がみられる(たとえば、首とわきの下にそれぞれ複数の腫大したリンパ節がみられる) 90%
ステージIII 横隔膜の上下両側でリンパ節への浸潤がみられる(たとえば、首と足の付け根の両方に腫大したリンパ節がみられる) 80%
ステージIV リンパ節以外に、骨髄、肺、肝臓などにも浸潤がみられる 60〜70%

15年間再発せずに生存する割合。

治療と経過の見通し

ホジキン病は、放射線療法、化学療法、あるいはその両方を行うことによって、ほとんどが治癒します。

放射線療法を単独で行った場合、ステージIAまたはIIAのホジキン病の治癒率は約80%です。4〜5週間にわたって通院治療を行い、病変部と周辺のリンパ節に放射線を照射します。ステージIBまたはIIBの場合や、胸部リンパ節の腫れが著しい場合は、化学療法を行った後に放射線療法を行います。この方法による治癒率は約85%です。

ステージIIIとIVの場合は、多剤併用化学療法を行います。最もよく行われるのは、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンを併用するABVD療法です。化学療法は1カ月を1サイクルとして、合計6カ月以上行います。他の組み合わせによる多剤併用化学療法も用いられますが、ABVD療法よりも有効かどうかは明らかになっていません。

ステージIIIのホジキン病に対して、化学療法と放射線療法の両方を行うことによって効果が高まるかどうかは不明です。胸部リンパ節が著しく腫大している場合には、化学療法に加えて放射線療法を行うのが一般的です。ステージIIIのホジキン病の治癒率は70〜80%です。ステージIVの治癒率はそれほど高くはありませんが、それでも50%以上となっています。

化学療法は治癒の可能性を大きく高める一方で、一時的または永久的な不妊、感染リスクの増大、心臓や肺などの臓器の損傷、回復可能な脱毛など、重度の副作用を引き起こすこともあります。ホジキン病の化学療法を受けてから5〜10年後に、白血病を発症することがあります。また、治療後10年以上経過してから、非ホジキンリンパ腫や肺癌、乳癌、胃癌などが生じるリスクもあり、このリスクは、放射線療法を併用するとさらに高くなります。

最初の治療で寛解(病気を抑制できた状態)が得られたが再発が起きた場合は、長期生存の可能性が低くなります。再発した場合の治癒率は10〜50%で、最初の治療後12カ月以内に再発した場合はやや低く、それより後に再発した場合はやや高くなる傾向があります。最初の治療後に再発した場合は、最初に通常の用量、次に高用量の化学療法を行います。さらに、患者自身の幹細胞を使用する自家幹細胞移植を行います(移植: 幹細胞移植を参照)。最初の治療後1年以上たって再発した場合には、必ずしも幹細胞移植を行う必要はありません。高用量化学療法と幹細胞移植を組み合わせた治療法の安全性は高く、治療に関連した死亡率は5%未満です。

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