メルクマニュアル家庭版
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はじめに

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アレルギー反応(過敏性反応)とは、通常は無害な物質に対する異常な免疫応答です。

正常な免疫システムは、抗体、白血球、肥満細胞、補体タンパクなどからなり、抗原と呼ばれる異物から体を守っています。しかし敏感な人の免疫システムは、多くの人にとって無害である抗原に対しても過剰に反応します。これがアレルギー反応です。ある1つの物質のみにアレルギーを起こす人もいれば、いくつもの物質に対して発症する人もいます。米国では国民のおよそ3分の1がアレルギーをもっています。

アレルギー誘発物質(アレルゲン)が皮膚や眼に付着したり、吸いこまれたり、食べものとして摂取されたり、注射されたりすると、アレルギー反応が起きます。干し草やブタクサ花粉のような物質に接することで引き起こされる花粉症のような季節性アレルギーもあります。薬やある種の食物の摂取、ほこりや動物のフケなどの吸引がきっかけで引き起こされるアレルギーもあります。

ほとんどのアレルギー反応では、免疫システムが最初にアレルゲンに接したときに免疫グロブリンE(IgE)と呼ばれる抗体がつくられます。このIgEは、血流中の好塩基球と呼ばれる白血球の1種と組織の肥満細胞とに結合します。最初の接触によりアレルゲンに感作されて過敏になりますが、この段階ではアレルギー症状は起こりません。その後、再度アレルゲンに接すると、表面にIgEをもつ細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンのような物質を放出し、周囲の組織に炎症を起こします。これらの物質は反応の連鎖を引き起こし、組織を刺激し続けて傷つけます。この反応の程度は軽度から重度までさまざまです。

症状と診断

ほとんどのアレルギー反応は軽度で、涙目、眼のかゆみ、鼻水、皮膚のかゆみ、くしゃみなどが起こります。じんま疹などの発疹や、かゆみを伴うこともあります。腫れは、じんま疹のように皮膚の一部に起こる場合もあれば、血管性浮腫のように皮下のやや大きな領域に広がることもあります(アレルギー反応: じんま疹と血管性浮腫を参照)。この腫れは血管から液体が漏れることによって起こります。血管性浮腫は、発症した部位によっては深刻な結果を招きます。アレルギーが喘息(ぜんそく)を引き起こすことがあります。アレルギー反応のうちでも、アナフィラキシー反応(アレルギー反応: アナフィラキシー反応を参照)と呼ばれるものは、命にかかわることがあります。気道が収縮してゼイゼイと息苦しくなり、血管が拡張し、血圧が低下します。

医師はまず、反応がアレルギー性かどうかを判断します。近親者にアレルギーをもつ人がいるか尋ねて、もしいれば、アレルギー性の反応である可能性が高くなります。血液検査をして、好酸球と呼ばれる白血球を調べます。アレルギー反応であれば好酸球の数が増加しています。

アレルギー反応は特定のアレルゲンにより引き起こされるので、アレルゲンを特定することが、診断の主な目的になります。いつアレルギーが始まったか、どのくらいの頻度で起きるのか、たとえば、ある特定の季節に起きるのか、特別な食物を食べた後に起きるのかなどがわかれば、アレルゲンを推定できます。

アレルゲンを特定するには、皮膚テストが最も有効な方法です。まず皮膚を針で刺すプリックテストを行います。草木の花粉、カビの胞子、ほこり、動物のフケ、昆虫の毒液、食物、ある種の薬などの抽出物から希薄溶液をつくり、それぞれの液を皮膚の上に落とし、そこを針で刺します。これらの物質に対してアレルギーがあれば、膨疹がでて発赤反応が起きます。15〜20分で、針を刺した場所は赤味を帯び、わずかに盛り上がってきます。これを膨疹といい、その周囲の明らかに赤くなっている部分をフレアと呼びます。この部分の大きさは直径1.3センチメートルくらいです。大半のアレルゲンはプリックテストで特定できます。これで特定できなかった場合は、それぞれの溶液を少量ずつ皮膚に注射します。こちらの皮膚テストの方が、プリックテストよりも、アレルゲンと反応の関連をよく検知できるようです。これらの皮膚テストの前には抗ヒスタミン薬は飲んではいけません。テストでの反応を抑えてしまう場合があるからです。

発疹がすでに広範囲に広がっている場合など皮膚テストができない場合は、放射性アレルゲン吸着試験(RAST)で検査を行います。この検査では、それぞれのアレルゲンに特有なタイプのIgEの血中濃度を測定し、その結果を基に医師はアレルゲンを特定します。

予防

アレルゲンを避けることができれば、それが最善の予防策です。アレルゲンを避けるには、特定の薬物の使用をやめたり、屋内でペットを飼わないようにしたり、高性能の空気浄化装置を取りいれたり、アレルゲンとなる食物を食べないようにします。重症の季節性アレルギーがある人には、アレルゲンのない地域へ引っ越す方法も考えられます。ハウスダストにアレルギーがある場合は、ほこりのつきやすい家具やカーペット、カーテンなどの使用をやめます。

アレルゲン免疫療法(減感作療法): 空気中にあるアレルゲンなどは避けられないので、一般にアレルギー注射と呼ばれているアレルゲン免疫療法によって、アレルゲンに対する過敏性を抑えます。ただ、この治療法でアレルギー反応を防いだり、その程度や頻度を軽くできる場合もありますが、すべての人に効果があるわけではありません。効果は人により、またアレルギーの種類により変わってきます。また、花粉、ダニ、昆虫の毒液、動物のフケなどのアレルギーにはよく用いられますが、食物アレルギーの治療としては勧められません。かえって、激しい反応を招くことがあり、効果もあまり期待できません。食物アレルギーの場合は、その食品を食べなければ避けられます。

アレルゲン免疫療法では、ごく少量のアレルゲンを皮下に注射します。症状をコントロールするのに十分な量である維持量に達するまで、徐々に投与量を増やします。徐々に増やしていくのは、短期間に多量のアレルゲンを投与するとアレルギー反応を引き起こしてしまうからです。維持量に達するまで週に1〜2度注射し、その後は2〜6週間ごとに注射します。季節性鼻炎でも、1年を通じて治療を続けると最大の効果を得られます。このアレルゲン免疫療法は完了するのに3〜4年かかります。

アレルゲン免疫療法の注射は、まれに危険なアレルギー反応を引き起こすことがあります。注射をしたあと最低20分間は患者が医師の管理下にとどまるようにします。くしゃみ、せき、発赤、ヒリヒリ感、かゆみ、胸苦しさ、喘鳴(ぜんめい)、じんま疹など軽度の反応が出た場合は、ジフェンヒドラミンかロラタジンなどの抗ヒスタミン薬が有効です。重い反応の場合はエピネフリン(アドレナリン)を注射します。

アレルゲン免疫療法はアナフィラキシー反応(アナフィラキシー様反応とアナフィラキシー反応を参照)の防止にも用いられます。これは、虫刺されのような完全には避けられない原因に対してアレルギーのある人が対象となります。一方、ペニシリンなどの薬にアレルギーがある場合は、服用を避ければアレルゲンを排除できるので、免疫療法は用いられません。しかし、アレルギーを起こす薬でも、どうしても服用する必要がある場合は、脱感作の目的で、医師による厳密な監視の下、短期的に免疫療法を行うこともあります。

治療

抗ヒスタミン薬: アレルギーの症状を和らげるのに最もよく使われる薬は、抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬には、処方せんなしで薬局で購入できる市販薬と、医師が処方する処方薬とがありますが、特に高齢者の場合には市販薬に頼るのは問題があります(市販薬: 抗ヒスタミン薬を参照)。抗ヒスタミン薬は適切に処方されれば、眠気、口の渇き、かすみ眼、便秘、排尿困難などの副作用を起こさずにすみます。抗ヒスタミン薬はヒスタミンの影響を抑える薬で、ヒスタミンの生成を止める薬ではありません。抗ヒスタミン薬を用いれば、じんま疹のかゆみが和らぎ、軽症の血管性浮腫の腫れも引きます。

薬剤名

抗コリン作用の程度

眠気の程度**

市販薬

ブロムフェニラミン 中程度 多少あり
クロルフェニラミン 中程度 多少あり
クレマスチン 強い 中程度
ジフェンヒドラミン 強い きわめて強い
ロラタジン 弱い 〜 なし わずか 〜 なし
トリプロリジン 中程度 多少あり

処方薬***

アザタジン 中程度 中程度
セチリジン 弱い 〜 なし 人によって中程度あり
シプロヘプタジン 中程度 多少あり
d-クロルフェニラミン 中程度 多少あり
フェキソフェナジン 弱い 〜 なし わずか 〜 なし
ヒドロキシジン 中程度 きわめて強い
プロメタジン 強い きわめて強い

抗コリン作用の結果として錯乱、口の渇き、眼のかすみ、便秘、排尿困難、ふらつき(とくに立ち上がったとき)などが生じます。これらの症状は特に高齢者にみられます。

**眠気の程度は、使用中の他の処方薬(鼻づまりの薬など)の有効成分によって異なり、個人差もあります。

***処方せんなしで購入できる抗ヒスタミン薬もあります。

クロモリン: アレルギー症状の軽減にクロモリンも有効です。処方薬として、吸入器やネブライザーなどで肺に投与したり点眼薬として使用します。スプレー式点鼻薬は、処方せんなしで使用できます。クロモリンはのど、肺、眼、鼻など投与した部分だけに効果があります。クロモリンは内服しても血液中には吸収されません。しかし、肥満細胞による消化器症状を和らげます。クロモリンは、肥満細胞による傷害性物質の放出を抑えるからです。

コルチコステロイド薬: 抗ヒスタミン薬やクロモリンでアレルギー症状を抑えることができないときは、コルチコステロイド薬を使います。スプレー式点鼻薬として、あるいは喘息の治療には吸入薬として使用します。症状が重かったり広範囲にわたる場合は、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬を経口投与します。ただし、コルチコステロイド薬は、3〜4週間以上続けて経口投与すると、さまざまな重い副作用が出ることがあります(コルチコステロイド薬の使用法と副作用を参照)。したがって、コルチコステロイド薬の経口投与は、重症で他の方法では治療効果がない場合に限るべきで、投与期間もできるだけ短くします。

救急処置: アナフィラキシー反応のような重症のアレルギー反応には、救急処置が必要です。重症のアレルギー反応を起こす人は、常に、エピネフリンの自己注射用キットを携帯します。さらに、すぐに服用できるように抗ヒスタミン薬の錠剤も携行します。たいていのアレルギー反応は、エピネフリンと抗ヒスタミン薬で止まります。ただし、重症のアレルギー反応を起こした患者は精密検査ができる病院の救急外来で診察を受けて、適切な治療を受ける必要があります。

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