メルクマニュアル家庭版
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コレラ

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コレラはグラム陰性菌であるコレラ菌による腸の感染症で、激しい下痢を起こします。

下痢を起こすビブリオ属の細菌はいくつかありますが(胃腸炎を起こす主な微生物を参照)、中でも最も重い症状を起こすのがコレラ菌です。コレラは集団発生し、適切な治療を受けないと3人に1人から2人に1人の割合で死亡します。以前は世界各地でよくみられましたが、現在は、ほとんどが熱帯や亜熱帯の開発途上国に限られています。

コレラ菌はある種の藻やプランクトンに付着して水中に生息し、菌で汚染された水や魚介類などを通して人に感染します。体内に入った菌は便を通して再び環境中に戻されます。特に、浄化設備が整備されていない所で発生すると、感染が爆発的に広がることになります。現在もアフリカで大発生が続いており、1998年から1999年にかけて、40万人以上がコレラにかかりました。

コレラ菌がつくる毒素は、小腸から塩分とミネラルに富んだ大量の体液を分泌させ、水性の下痢にして体外に出してしまいます。水分とミネラルが大量に失われることが死因となります。菌は小腸にとどまり、組織には広がりません。胃酸には弱いため、胃酸分泌の少ない人(小児や高齢者)はコレラにかかりやすくなります。コレラの頻発地域に住む人は、徐々に免疫ができてきます。

症状と診断

症状は感染後1〜3日で現れ、単なる軽い下痢から激しく致死的なものまでさまざまです。症状がまったく出ない人もいます。

この病気はまず、痛みのない水性の下痢と嘔吐が突然起こることで始まります。下痢と嘔吐でどれだけの水分が失われるかが重症度の目安となります。ひどいときには、下痢によって1時間に約1リットル以上の水分が失われることもあります。こうなると、数時間のうちに体液と塩分の欠乏から重度の脱水症が生じ、激しいのどの渇き、筋肉のけいれん、脱力、尿量の減少などが起こります。組織から大量の体液が失われるため、眼は落ちくぼみ、指はしわだらけになります。脱水症を放置すると、腎不全、ショック、昏睡(こんすい)を起こして死に至ります。

症状は3〜6日で治まり、ほとんどの場合、2週間もすれば菌は検出されなくなりますが、中には慢性のキャリアになる人もいます。

コレラの診断は、直腸に綿棒を入れるか、排便時に採取した便のサンプルから菌を検出して確定します。

予防と治療

コレラの予防には、飲み水を浄化することと、人間の排泄物を衛生的に処理することが必要不可欠です。ほかにも、水は沸騰させてから使う、生野菜や十分に火が通っていない魚や貝類は食べないなどの注意が必要です。貝にはビブリオ属の他の細菌がついていることもあります。

米国では行われていませんが、数種類のコレラ用ワクチンがあります。しかし、完全に抑えられるわけではなく、効力の持続も短いため、一般には推奨されていません。現在、新型のワクチンが開発中です。コレラ患者が出た場合、身近で接触する人はすぐに抗生物質のテトラサイクリンの投与を受ければ、感染を予防できることがあります。

コレラで人が死ぬのは、体が細菌に侵されたためではなく、激しい脱水症が起こるためです。従って、失われた体液と塩分を直ちに補充すれば命は助かります。たいていの人は、口から水分と塩分を補う方法で回復します。コレラが発生しやすい地域では、患者が多すぎて医療機関が対応しきれない場合に備えて、自宅で経口補液をつくるための塩類を調合したパックが入手できます。経口補液には、沸騰させた水1リットルあたりにブドウ糖20グラム、塩化ナトリウム3.5グラム、クエン酸ナトリウム2.9グラム、塩化カリウム1.5グラムが入っています。重度の脱水症で口から水分を取れない人には、点滴します。集団感染で点滴療法が十分に施せない場合は、鼻から胃へ管を入れて補液を行います。脱水症が改善したら、下痢と嘔吐で失われた分と同量の水分を体内へ戻すことが治療の目的となります。嘔吐が止まり、食欲が戻ったら、固形物を食べてもかまいません。

テトラサイクリンなどの抗生物質による早期治療を行えば、菌は死滅し、下痢はたいていの場合は48時間以内に止まります。

治療を受けないと、重いコレラにかかった人の50%以上が死亡します。一方、すぐに適切な水分補給さえ行えば、死亡する人は1%以下になります。

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