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肺炎球菌感染症

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肺炎球菌感染症は、グラム陽性球菌の1種である肺炎球菌肺炎レンサ球菌)によって主に肺に起こる病気です。

この菌は特に冬から初春にかけて人の気道上部にすみつきます。菌の存在にもかかわらず、病気を起こす頻度はさほど高くありません。肺炎球菌が起こす重い病気の中で最も多いのが、肺組織の感染症である肺炎です(肺炎: 肺炎球菌性肺炎を参照)。

肺炎球菌は肺以外に、耳(中耳炎)、副鼻腔(副鼻腔炎)、脳と脊髄を覆っている組織(髄膜炎)、さらにまれですが心臓弁、関節、腹腔などに感染症を引き起こすこともあります。このような部位への感染は、菌が他の感染部位から血流に入って広がってきたために起こることもあります。

肺炎球菌感染症を起こしやすいのは、ホジキン病、リンパ腫、多発性骨髄腫、栄養失調症、鎌状赤血球症のような慢性の病気があって免疫力が低下している場合です。高齢者も肺炎球菌による感染症を起こしやすいといえます。この菌による感染を防ぐ抗体は脾臓でつくられるので、脾臓の摘出をした場合や脾臓の機能が低下している場合も、リスクが高くなります。また、肺炎球菌性肺炎は、慢性気管支炎に続いて起こったり、インフルエンザウイルスのようなウイルスが気道の壁を侵すことによって起こることもあります。

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肺炎球菌肺炎

肺炎球菌肺炎

症状と診断

症状は突然始まり、胸に鋭い痛みが起こり、ふるえるほどの悪寒がします。発症前から、ウイルスによる上気道感染の症状(のどの痛み、鼻づまり、鼻水、空せき)がみられることもあります。熱が上がり、せきが出て、赤茶色のたんも出ます。全身にけん怠感があり、息切れもよく起こります。

診断では、たんのサンプルを顕微鏡でみてその場で肺炎球菌を確認できることもありますが、たいていはたん、膿、血液のサンプルを培養して調べます。肺炎の有無をみるために胸部X線検査をします。

肺炎球菌による髄膜炎の場合は、熱、頭痛、全身のけん怠感などが現れます。首がこわばり、動かすと痛みますが、早いうちはこの症状が出ない場合もあります。髄膜炎が疑われる場合は、ただちに脊椎穿刺(せきついせんし)(脳、脊髄、神経の病気の診断: 脊椎穿刺を参照)を行って、脳脊髄液の中に白血球や細菌など感染症の徴候を示すものがないか調べます。

肺炎球菌による中耳炎は小児によくみられ、耳が痛み、鼓膜が赤く腫れます。通常は菌の培養などの検査は行いません。小児用の肺炎球菌ワクチン接種のおかげで、症状が重くなることが大変少なくなっています。

予防と治療

予防には2種類のワクチンがあります。1つは結合型ワクチンで、生後2カ月から接種することができます(乳児と小児の予防接種スケジュールを参照)。もう1つは多糖体ワクチンで、年長児や成人向けです。このワクチンは肺炎球菌の主なタイプに対して予防効果があり、肺炎や菌血症にかかるリスクは格段に下がります。55歳以上の人、乳児、小児はワクチン接種を受けた方がよく、心臓や肺の慢性疾患、糖尿病、鎌状赤血球症、ホジキン病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、代謝障害がある場合も接種を受けるべきです。脾臓の摘出を受けた人や脾臓の機能が低下している場合も、予防接種が必要でしょう。

肺炎球菌による感染症の治療には、ほとんどの場合ペニシリンを使います。耳や鼻の感染症には内服、重い感染症には静脈内投与します。ただし、ペニシリンに耐性をもつ菌が増えてきたため、ニューキノロン系の抗菌薬を使うことも多くなっています。

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