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ハンセン病

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ハンセン病(らい)はらい菌によって起こる慢性の感染症で、主に末梢神経(脳・脊髄[せきずい]から出る神経)、皮膚、精巣、眼、鼻の粘膜を侵します。

ハンセン病は治療しないと外見が変形することから、患者は長い間恐れられ、遠ざけられてきました。感染力が強いわけではなく、死に至ることもなく、抗生物質で治療可能な病気であるにもかかわらず、今なお一般の人々に根深く恐れられています。そのため、ハンセン病にかかった人は、心理的、社会的問題に苦しむことも多いのです。

ハンセン病は世界中に100万人以上もの患者がいる病気で、インドとネパールをはじめとするアジア、アフリカ、中南米、太平洋諸国に多くみられます。米国にもカリフォルニア州、ハワイ州、テキサス州などに約4000人の患者がいますが、ほとんどが開発途上国からの移民です。どの年齢でも発病しますが、20〜30代の人に多くみられます。

ハンセン病の感染経路ははっきりしていませんが、患者の鼻や口からまき散らされた飛沫を吸ったり、接触したりすることによる人から人への感染が、1つの経路として考えられています。ところが、空気中にらい菌が存在しても、ほとんどの人はハンセン病にはかかりません。ハンセン病患者の約半数は、おそらく感染者の近くで長期にわたって接触のあった人だと考えられます。たまたまハンセン病患者と接触したというような短い接触では感染は起こらず、一般にいわれるような、さわっただけでうつるなどということはありません。医療従事者はハンセン病患者と長いことかかわりますが、ハンセン病にはかかりません。らい菌の感染源としてはほかに、土壌、アルマジロ、トコジラミ、蚊などが考えられます。

らい菌にさらされても、約95%の人は免疫システムが感染を防御するので、ハンセン病にはなりません。一方、発病する場合は、類結核型のような軽いものから、らい腫型のような重いものまでさまざまです。類結核型に感染性はありません。

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結核様らい

結核様らい

症状

ハンセン病を起こす細菌は非常にゆっくり増殖するので、症状が出るのは感染してから少なくとも1年後、平均で5〜7年後になります。また、症状が出てからの進行もゆるやかです。

症状は主に皮膚と末梢神経に現れます。皮膚には特徴的な発疹や隆起が現れます。神経が侵されると、その神経によって制御される範囲の皮膚に感覚がなくなり、筋力が低下します。

ハンセン病は、皮膚の斑の数と形状によって、類結核型、らい腫型、境界型に分類されます。これらの病型によって、長期的な経過の見通し(予後)、起こる可能性のある合併症、抗生物質による治療が必要な期間が異なります。

類結核型は、白い平らな部分が1つないし少数ある発疹が現れます。発疹が現れた部位では、皮下の神経が細菌に侵されるため、感覚がなくなります。

らい腫型は、皮膚にたくさんの小さな隆起や、より大きく盛り上がった大小さまざまな形の発疹が現れます。類結核型に比べて感覚のなくなる範囲が広く、一部の筋肉に脱力感が現れます。

境界型は、類結核型とらい腫型の両方の特徴をもっています。放置した場合、症状が改善すれば類結核型になり、または悪化してらい腫型に似た症状になることもあります。

ハンセン病の最も重い症状は、末梢神経の感染により触覚がなくなることで、痛みや熱さ、冷たさを感じることができなくなります。このため、自分自身の体がやけどや切り傷などを負っても、気がつかないことがあります。繰り返し障害が起こると、足や手の指を失うことにもなります。また、末梢神経の障害は筋力の低下も引き起こし、そのために手の指がかぎ爪のように曲がる、足首が底側に曲がる(尖足)など、体の変形が起こることもあります。皮膚感染では、腫れやしこりがあちこちにでき、顔にできると特に変形が目立ちます。

さらに、ハンセン病の患者は足の裏がただれます。また、鼻の粘膜が侵されると慢性的な鼻づまりが起こり、治療しないで放っておくと鼻全体が侵されてきます。眼に障害が起こると失明につながります。らい腫型の男性では勃起(ぼっき)機能不全(インポテンス)が起き、精巣でつくられる精子や男性ホルモンの1つであるテストステロンの量が減るため、生殖能力がなくなります。

ハンセン病は経過によっては、治療を受けていても、体の免疫応答による炎症反応を起こすことがあります。発熱、皮膚や末梢神経の炎症が多く、ほかにリンパ節、関節、精巣、腎臓、肝臓、眼の炎症も起こります。

診断

なかなか消えない特徴的な発疹、触覚の喪失、筋力の低下による体の変形などの症状があれば、ハンセン病が強く疑われます。感染した皮膚組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べ、診断を確定します。らい菌は検査室では増殖しないので、組織培養や血液検査は行いません。

予防と治療

かつて、ハンセン病患者は顔や体が変形するために社会から追放され、施設や特定の集落などに隔離されてきました。今でもまだ、こういうことが行われている国はあります。しかし、ハンセン病は隔離の必要はありません。感染力があるのは未治療のらい腫型だけで、それも簡単に感染するものではありませんし、いったん治療を始めれば感染力はなくなります。さらに、ほとんどの人はハンセン病に対する免疫をもともともっており、感染のリスクがあるのは、ハンセン病患者の近くで長期間一緒に過ごす人に限られています。リスクがある人は定期的に検査を受ける必要がありますが、抗生物質の予防投与は行われません。結核の予防に使われるBCGワクチンがある程度ハンセン病にも予防効果をもちますが、あまり使われていません。

抗生物質による治療を行えば、ハンセン病の進行は抑えられますが、すでに障害を受けた神経や体の変形を元に戻すことはできません。それだけに、早期発見と早期治療が非常に重要です。特定の抗生物質に耐性を示すらい菌もあるので、治療には通常複数の抗生物質を使います。ダプソンとリファンピシンの併用が標準的に用いられます。ダプソンは比較的安価で、副作用もアレルギー性の発疹や貧血がたまに出る程度の安全な薬です。リファンピシンはやや高価で、薬効も強いですが、重い副作用として肝障害やインフルエンザ様症状が起こることがあります。クロファジミンは重症例の治療で追加的に使います。ほかには、エチオナミド、ミノサイクリン、クラリスロマイシン、オフロキサシンなどがハンセン病患者に使われます。

らい菌は根絶しにくいので、抗生物質による治療を長期間行う必要があります。感染症の重症度や医師の判断によって、6カ月から数年にわたって続けます。らい腫型の場合は、治療を一生続けることを勧める医師もいます。

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