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ロッキー山紅斑熱

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ロッキー山紅斑熱はリケッチア感染症の1種で、斑点熱、ダニ熱、ダニチフスとも呼ばれ、イヌのマダニや森林のマダニが媒介して感染し、発疹、頭痛、高熱を起こします。

ロッキー山紅斑熱は、斑点熱リケッチアによって起こり、米国ではリケッチア感染症の中でおそらく最も多くみられる病気です。その名前にかかわらず、この病気は米国全土、中でも中西部や大西洋に面した南部沿岸地方で多く発生します。成虫のマダニの活動期である3月から9月にかけての発病が多いのですが、この時期は人間がマダニの生息地域に多く入る時期でもあります。南部の州では、1年を通して発生がみられます。15歳以下の小児などはマダニが多い場所に入って遊ぶことが多いので、感染するリスクが高くなります。

マダニはリケッチアに感染したほ乳類の血を吸って感染します。感染した雌のマダニはリケッチアを子孫にも感染させます。人から人への直接的な感染は起こりません。

リケッチアは血管の内皮細胞の中にすみ、増殖します。皮内、皮下、脳、肺、心臓、腎臓、肝臓、脾臓の血管によく感染します。細い血管が感染すると、血のかたまりができて詰まってしまいます。

症状

典型的な症状は、激しい頭痛、悪寒、極度の疲労感(虚脱)、筋肉痛などです。マダニに刺されてから3〜12日後に症状が突然現れます。数日以内に高熱が出て、重い場合は1〜2週間続きます。空せきが続けて出ることもあります。

熱が出てから4日目ぐらいに手首や足首に発疹が現れ、手のひら、足の裏、前腕、首、顔、わきの下、殿部、胴体に急速に広がります。発疹は初めのうちは平らでピンク色ですが、やがて色が濃くなり、少し隆起してきます。かゆみはありません。入浴して体が温まると発疹が目立ちます。その約4日後に、皮膚に紫色の点状出血が現れ、潰瘍(かいよう)ができます。

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ロッキー山紅斑熱

ロッキー山紅斑熱

脳の血管が侵されると、頭痛、落ち着きがなくなる(不穏)、不眠、せん妄が現れ、昏睡(こんすい)に陥ります。吐き気、嘔吐、腹痛も併せて起こります。気道の炎症、肺炎、心臓の障害、貧血が起こることもあります。まれに重症例では、血圧の低下を起こし死亡することもあります。

予防と治療

ロッキー山紅斑熱に対するワクチンはないので、マダニに刺されないことが最善の予防法となります。ズボンのすそを靴や靴下の中に入れ、ペルメトリン含有の殺虫剤を衣服に振りかけておくと、マダニが皮膚につくのを抑えることができます。DEET製剤(ジエチルトルアミド)などの防虫剤を皮膚につけるのも効果がありますが、小さな子供ではまれに中毒でけいれん発作などを起こすことがあるので注意が必要です。マダニは平均して24時間体に食いついていて初めて感染が起こるので、体にマダニがついていないか頻繁に調べることも有効な予防法です。血を吸ってふくらんだマダニをつぶしてしまうとリケッチアが感染する可能性があるので、マダニを見つけたら、毛抜きで皮膚にできるだけ近いところで頭部を挟んで慎重に取り除くようにします。

ロッキー山紅斑熱は重い症状を起こし、死亡率も高いため、症状や状況からこの病気が疑われる場合は、検査結果を待たずにただちに抗生物質による治療を始めます。テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールが有効とされており、軽症には内服薬を使い、より重症例には静脈内投与します。抗生物質の使用により、死亡率は約20%から5%へと大幅に下がりました。しかし、治療が遅れると死亡することがあります。マダニに刺されてもロッキー山紅斑熱にかかることはめったにないので、医師は普通、刺されただけでは抗生物質は処方しません。その代わり、症状が出たらすぐに受診するよう指導します。

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