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トキソプラズマ症

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トキソプラズマ症は、単細胞の寄生虫であるトキソプラズマ原虫による感染症です。

トキソプラズマは世界中に存在し、人やさまざまな動物や鳥に感染します。米国でも多くの人がトキソプラズマに感染していますが、症状が出る人はほとんどいません。重い症状が出るのは、胎児と免疫機能が低下している人だけです。

この寄生虫はさまざまな動物の組織で成長しますが、卵であるオーシスト(接合子嚢)を産みつけるのはネコの腸の内皮細胞だけです。卵はネコの糞に混じって排泄され、土の中で最長18カ月間生き続けます。

トキソプラズマの卵が入っている土にさわった人が手を口に入れて感染する場合もあれば、食べものに卵がついていて、それを食べて感染する場合もあります。ときにはブタなどの動物が、土からトキソプラズマ症に感染することもあります。人では、感染した動物の肉を生や加熱調理が不十分な状態で食べて感染する場合もあります。冷凍するか、よく加熱すれば、トキソプラズマは死滅します。

妊婦が感染すると、胎盤を通して胎児にトキソプラズマが入りこむことがあります。その結果、流産や死産になったり、生まれた子が先天性トキソプラズマ症(新生児にみられるある種の感染症を参照)になったりすることがあります。妊娠前に感染した場合は、寄生虫が胎児にうつることはありません。

免疫機能が低下している人、特にエイズや癌の人や、臓器移植を受けて拒絶反応を抑える薬剤を使用している人は、トキソプラズマ症を発症するリスクが高くなります。このような人たちの症状は、通常は過去に感染したトキソプラズマが再び活動を始めたことによるものです。感染症は脳に起こることが多く、眼や体全体に広がることもあります。これらの人では、トキソプラズマ症は非常に重くなり、治療しなければほぼ100%死亡します。

症状と診断

先天性トキソプラズマ症の小児は、重症で生後まもなく死亡することもあれば、何カ月もたってから症状が出ることもあり、場合によっては何年も症状が現れないこともあります。一生発病しない場合もあります。新生児によくみられる症状は、「脈絡網膜炎」と呼ばれる失明に至る眼の炎症、肝臓や脾臓の腫大、黄疸、青あざができやすくなる、けいれん発作、頭蓋骨(ずがいこつ)形成異常、精神遅滞、などです。

健康な人が後天的にトキソプラズマ症にかかった場合は、ほとんど症状は現れません。症状が出ても普通は軽症で、痛みのないリンパ節の腫れ、間欠性の微熱、はっきりしない体調の悪さなどです。脈絡網膜炎が単独で起こり、視力障害、眼の痛み、光過敏性を伴うこともあります。

免疫機能の低下している人がトキソプラズマ症にかかった場合は、感染部位によってさまざまな症状が現れます。脳のトキソプラズマ症(脳炎)になると、半身の脱力感、言語障害、頭痛、錯乱、けいれん発作などが起こります。急性散在性トキソプラズマ症は、発疹、高熱、悪寒、呼吸困難、疲労を起こします。髄膜脳炎(脳とそれを包む膜の炎症)、肝炎、肺炎、心筋炎を起こす人もいます。

診断には通常、血液検査でトキソプラズマに対する抗体を調べます。ただし、エイズで免疫機能が低下している人は、血液検査で偽陰性が出ることがあるので、医師は脳のCT検査とMRI検査に基づいて診断します。まれに、感染部位の組織片を採取し、顕微鏡で調べて診断する生検を行うこともあります。

治療と経過の見通し

感染していても、症状がなくて免疫機能が正常な成人の場合には、治療の必要はありません。症状がある場合は、スルファジアジンとピリメタミンの併用で治療し、ピリメタミンの副作用から骨髄を保護するためにロイコボリンを追加します。脈絡網膜炎の治療には、クリンダマイシンと併用して、炎症を鎮めるためにプレドニゾロンなどのステロイド薬を使います。

エイズ患者の場合、トキソプラズマ症は再発する傾向があるので、投薬は期限を決めずに行うことが多くなります。トキソプラズマ症を予防するため、ニューモシスチス‐カリニ感染症にも有効なトリメトプリム‐スルファメトキサゾール(ST合剤)の予防投与を行うこともあります。

妊娠中にトキソプラズマ症にかかった場合は、胎児への感染を防ぐためにスピラマイシンで治療します。妊娠中はネコのトイレの掃除をするのはやめるか、掃除をする際には手袋をはめるなどの注意が必要です。肉は十分に加熱調理したものだけを食べるようにします。

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