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床ずれ(褥瘡)

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床ずれは医学的には褥瘡(じょくそう)、褥瘡性潰瘍などと呼ばれ、圧迫により皮膚に血液が十分流れなくなり、その部分が損傷を受けた状態のことをいいます。

褥瘡ができやすい部位

褥瘡ができやすい部位

褥瘡は年齢には関係なく、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人ならだれにでもできます。しかし高齢者は、他の年代よりもできやすくなっています。また、褥瘡は体のどの部分にもできることがありますが、できやすいのは腰から下です。骨が盛り上がっていて皮膚の上から触れやすい部分、たとえば腰、かかと、ひじ、尻などは、圧迫がかかりやすいため褥瘡ができやすい場所です。ベッドや車いす、ギプス、添え木、その他の堅いものが触れて皮膚に圧迫を与えると、その部分に褥瘡ができます。褥瘡は痛みを伴い、命にかかわることもあります。これができると入院期間が長びき、治療費もかさみます。

原因

皮膚には、すべての層に酸素を運ぶのに十分な量の血液が流れています。血流が2〜3時間以上止まってしまうと、皮膚は最も外側の層(表皮)から死んでいきます。死んだ皮膚組織は崩れて、傷口が開いたただれや潰瘍になります。いったん皮膚の組織が崩れると、開放部分から細菌が入って感染症を引き起こします。

圧迫されると、皮膚の血流は減少します。いすに座ったり、マットに横たわったりして強い圧迫が加わると、骨ばった部分の血流が遮断されます。普通、人は眠っている間でさえも無意識に自分の体の向きをコンスタントに変えているので、褥瘡はできません。しかし、正常な動作の能力が損なわれた人は褥瘡ができやすくなります。具体的には、麻痺(まひ)状態にある人、昏睡状態にある人、衰弱している人、拘束状態にある人などです。麻痺や昏睡状態にある人は、正常ならば体を動かす(あるいはだれかに動かしてもらうよう頼む)必要を感じる信号である不快感や痛みを感じないので、褥瘡ができるリスクがとりわけ高くなります。

皮膚が引っぱられた場合にも血流が遮られ、褥瘡の原因となります。皮膚が寝具などに密着した状態になっていると、皮膚を引っぱる力が働き、圧迫を受けているのと同じような影響が現れます。

皮膚がこすれることも、同様に褥瘡の原因になります。皮膚がたびたびこすれて刺激を受けると、表層がすり減ってしまいます。このような状態は、かかとやひじ、膝をこすったり、足に合っていない靴をはいたりした場合に生じます。

皮膚の湿度も、褥瘡のできる原因に関係しています。皮膚が汗や尿、便などの水分に長時間さらされたままになっていると皮膚の表面が弱くなって損傷を受け、褥瘡ができやすい状態をつくってしまいます。

栄養状態が良くない場合も褥瘡ができるリスクが高くなり、また、できた褥瘡の治りも遅くなります。栄養不良の人は、皮膚の中に蓄えられて血管がつぶれないようにクッションとして働く、脂肪の保護層が少なくなります。正常な皮膚の修復に必須であるタンパク質やビタミンC、亜鉛が不足した食事を摂取していると、褥瘡ができるリスクが高まります。

症状

褥瘡は、ほとんどの場合痛みとかゆみを伴います。しかし、感覚が鈍くなっている人は、重症で深い褥瘡ができても痛みを感じない場合があります。

褥瘡は、皮膚が損傷を受けている程度によって4段階に分類されています。具体的には、皮膚が赤くなり炎症を起こしている第1段階から、筋肉・脂肪・骨まで損傷が及んでいる第4段階まであります。

写真

床ずれ

床ずれ

感染症にかかると浅い褥瘡でも治りが遅くなり、深い褥瘡の場合は命にかかわります。褥瘡は骨まで達することもあり(骨髄炎)、そうなると抗生物質による治療を何週間も行う必要があります。最も重いケースでは、感染が血液にまで広がります(敗血症)。

予防

褥瘡には、予防策を取ることが何よりも重要です。看護師や看護助手、家族などのケアにあたる立場の人が、細心の注意を払うことで、ほとんどの褥瘡は防げます。寝たきりの人や車いす生活の人の皮膚を毎日ていねいに調べることで、皮膚が赤くなっていたり色が変わっている褥瘡の早期段階といえる変化を発見できます。皮膚がそのような状態になっていたら、体の位置や向きを変える必要があり、皮膚の色が変化している部分は正常な色に戻るまでは圧迫されない姿勢にしておく必要があるというサインです。

皮膚の血流を保つには姿勢を変えることが必要なので、必要以上の安静状態は避けるべきですし、体を動かすことが大切です。自分で体を動かすことができない人の場合、2時間ごと、可能ならもっと頻繁に体の姿勢を変える必要があります。皮膚が湿っていると褥瘡ができるリスクが高まるので、常に清潔で乾いた状態を保つようにします。乾いた皮膚は寝具や布にくっつきにくいので、引っぱられにくくなります。

かかとやひじのように骨ばった部分は、コットンやふわふわしたウールのような柔らかい素材で保護します。車いす生活の人や寝たきりの人のために、圧迫を軽減できる特別仕様のベッド、マットレス、座布団、クッションなども使います。これらの製品は圧迫を軽減するため、緩和状態をもたらします。どのようなマットレスやクッションが最も適しているかは、医師や看護師に教えてもらえます。ただし、これらの製品を使っても圧迫を完全になくすことはできず、あくまで患者の体位を頻繁に変えることの補助手段と認識しておきましょう。

治療

褥瘡の治療は、予防よりもはるかに困難です。褥瘡の治りを早め、新たな褥瘡ができるのを防ぐために、栄養状態を良好に保つことが大切です。バランスが良い高タンパクの食事と、ビタミン、ミネラルの含有量の高い栄養補助食品が勧められます。ビタミンCや亜鉛のサプリメントは褥瘡の治癒を早めるのに役立ちます。

初期段階では、圧迫されなくなれば褥瘡は自然に治ります。皮膚が損傷を受けた場合、医師や看護師はその部位と状態を診察して、保護材を使うべきかどうか検討します。透明なフィルムドレッシング材は、初期段階の褥瘡を保護し、その治りを早めます。酸素と水分を含んだハイドロコロイドパッチは、皮膚を保護して適度にうるおった状態に保ち、深い褥瘡にも適切な状況をつくり出します。もっと深部まで皮膚が侵されたり、体液のにじむ量が多かったり、感染症にかかっている褥瘡には、別のタイプのドレッシング材を用います。

感染していたり体液がにじみ出ていたりする褥瘡の場合、生理食塩水で洗い流してガーゼでそっとふき取ります。場合によってはもっと強力な洗浄剤も使います。皮膚の死んだ組織は、医師がメスや化学薬品を使って取り除ききれいにします(デブリドマン)。

創傷治療の新しい方法には、傷口を吸引する真空補助閉創器具、細胞の成長を促す物質(主にタンパク質)である増殖因子、患者を高圧酸素で満ちた特別な部屋に入れて行う高圧酸素療法(潜水や圧縮空気による障害: 診断と治療を参照)、人工皮膚移植などがあります。

深い褥瘡は治療が困難です。場合によっては正常な皮膚を損傷部に移植する必要があります。しかし、この手術はうまくいくとは限らず、特に栄養状態が悪い高齢者の場合は成功させるのが難しくなります。深い褥瘡に感染症が起きた場合、抗生物質を投与します。褥瘡の下の骨にまで感染が及んだ場合(骨髄炎)は特に治療が難しく、血液によって感染症が広がるおそれがあります。こうなると、抗生物質での治療を何週間も続けなくてはなりません(骨・関節の感染症: 骨髄炎を参照)。

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