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子宮筋腫

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子宮筋腫は、筋肉と線維組織からなる良性の腫瘍(しゅよう)です。

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子宮筋腫

子宮筋腫

筋腫は、線維筋腫、線維腫、筋線維腫、平滑筋腫、類線維腫などとも呼ばれます。子宮にできた場合を子宮筋腫といい、女性の生殖器で最も多くみられる良性(非癌性)腫瘍で、白人女性の4分の1、黒人女性の半数に発生します。

子宮内に筋腫が発生する原因はわかっていませんが、高濃度のエストロゲンが筋腫の増殖を促すとみられています。したがって、子宮筋腫は妊娠中には大きくなり、閉経後は縮小する傾向があります。子宮筋腫は大きくなりすぎると血液を十分に得ることができなくなり、変性を起こします。

子宮筋腫は顕微鏡レベルのごく小さなものからバスケットボール大のものまであります。でき方もさまざまで、子宮壁内で大きくなるもの、子宮壁から子宮内部に向けて大きくなるもの(ときに根元が細く茎状になる)、子宮粘膜下で大きくなるもの、子宮の外側で大きくなるものなどがあります。多くの場合、筋腫は複数みられます。子宮壁の中や子宮内膜の下に大きな子宮筋腫ができると、子宮の形がいびつになったり、子宮内に変形が生じます。

症状

症状は子宮筋腫の数や大きさ、発生部位により異なります。比較的大きなものも含めて、子宮筋腫の多くは症状を起こしません。しかし、子宮筋腫が大きなもので、特に子宮壁の中にできた場合には、月経のときや、月経と月経の間の時期に、骨盤部に痛みや圧迫感、重苦しさを感じることがあります。子宮筋腫が膀胱(ぼうこう)を圧迫すると頻尿になったり、急に尿意を催したりします。直腸を圧迫して不快感や便秘を生じることもあります。大きな子宮筋腫ができたために腹部がふくらむこともあります。根元が細く茎状になった筋腫が子宮の中にできると、その根元がねじれて激しい痛みを起こすことがあります。子宮筋腫の増殖や変性が進んでいる時期にはよく、圧迫感や痛みが生じます。変性による痛みの場合、変性が続く限り痛みも持続します。

子宮内膜のすぐ下に筋腫ができた場合などには、月経の出血量が多くなったり持続期間が長くなったりします。多くの血液が失われる結果、貧血を起こすこともあります。比較的まれですが、子宮筋腫があると月経と月経の間の時期や、性交後、あるいは閉経後に出血することがあります。また、子宮筋腫によって卵管がふさがれたり、子宮が変形してしまうと、受精卵の着床が困難になったり不妊となる場合がまれにあります。

それまで無症状だった子宮筋腫が、妊娠すると問題を引き起こすことがあります。たとえば、流産や早産、分娩前の胎児の位置(胎位)の異常、分娩後の出血過多などです。

まれに、子宮筋腫に似た悪性腫瘍(肉腫)が子宮内に発生することがあります(女性生殖器の癌: 子宮体癌を参照)。

診断

子宮筋腫の多くは、内診によって発見されます。診断を確定できる子宮の検査はいくつかあります。経腟超音波検査は、超音波装置を腟(ちつ)に挿入して行う検査法です。生理食塩水を注入して行う子宮内超音波検査では、子宮の内側をよく観察するため、少量の生理食塩水を子宮内に注入してから超音波検査を実施します。子宮鏡検査では柔軟性のある内視鏡を、腟から子宮頸部(しきゅうけいぶ)を経て子宮内へと挿入します。これらの検査は局所麻酔、区域麻酔または全身麻酔で行います。MRI検査やCT検査なども行われることがありますが、それ以上の検査は普通は必要ありません。

月経以外の出血がある場合は、子宮に癌(がん)がないか確認するために、パパニコロー(パップスメア)検査(子宮頸部の細胞診)、子宮内膜の生検、超音波検査、子宮内超音波検査、子宮鏡検査などが行われます。

治療

子宮筋腫があっても無症状の場合は、治療の必要はありません。筋腫が大きくなっていないか確認するため、6〜12カ月ごとに再検査を受けます。

出血やその他の症状が悪化した場合や、筋腫の肥大が著しい場合は、薬物療法や手術などの治療を行います。

薬物療法: 薬で症状が緩和したり子宮筋腫が縮小することがありますが、効果は一時的です。子宮筋腫を永久的に縮小させられる薬はありません。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単独使用、またはプロゲスチン(ホルモンのプロゲステロンに似た薬)との併用で、子宮筋腫による出血が軽減することがあります。通常はどちらの薬も内服しますが、プロゲスチンは筋肉注射することもあります。ダナゾール(テストステロンに近い合成ホルモン)は子宮筋腫の増殖を抑制する作用がありますが、副作用があるため使用されることはまれです(子宮内膜症の治療によく使われる主な薬を参照)。ホルモン系の避妊薬(家族計画: ホルモン剤による避妊を参照)で出血が軽減される人もいますが、避妊薬の使用をやめると不正出血と痛みが再発する傾向があります。また、避妊薬の使用でかえって子宮筋腫が大きくなる人もいます。

合成のゴナドトロピン放出ホルモン誘導体(GnRH作動薬)にはエストロゲンとプロゲステロンの分泌量を減らす作用があるため、子宮筋腫を縮小させ、出血量を減少させる効果があります。筋腫を縮小させて切除しやすくする目的で、手術前にこの薬が投与されることもあります。薬の形態としては、月に1回の注射、スプレー式の点鼻薬、皮下に埋めこむタイプなどがあります。使用期間は2〜3カ月を限度とします。これは長期間使用すると、骨密度が減少して骨粗しょう症になるリスクが高くなるためです(子宮内膜症の治療によく使われる主な薬を参照)。副作用を防ぐため低用量のエストロゲンが併用されることもあります。GnRH作動薬の使用をやめると6カ月以内に筋腫が再び大きくなりはじめます。

手術: 筋腫の部分だけを切除する方法(子宮筋腫核出術)と、子宮全体を切除する方法(子宮全摘術)があります。子宮核出術では妊娠・出産能力が維持され、子宮の摘出に伴う精神的な影響も避けられますが、患者の50%で筋腫が再発します。

子宮核出術は、腹部を切開する開腹手術で行う場合もありますが、へその下を小さく切開して腹腔鏡と手術器具を挿入して行う方法(腹腔鏡手術)や、腟から子宮へ子宮鏡と手術器具を挿入する方法(子宮鏡手術)もあります。どの方法が選ばれるかは筋腫の大きさ、数、位置によって異なります。腹腔鏡手術および子宮鏡手術は入院を必要とせず、術後の回復も開腹手術より早くなります。ただし、腹腔鏡は大きな筋腫の切除には向いていません。また、手術の際に合併症を起こすリスクが高くなることもあります。

子宮の摘出は、痛みや出血などの症状が日常生活に影響するほどひどく、他の治療法で効果が得られなかった場合に考慮されます。患者自身が気になり悩まされる大きな筋腫の場合も、子宮の摘出が選択肢の1つとなります。子宮の摘出は妊娠を望まない場合にのみ行われます。この方法は子宮筋腫に対する唯一の永久的な治療法です。子宮筋腫の治療では子宮のみを切除し、卵巣は切除しません。

その他の治療: 筋腫を切除せずに破壊する新しい治療法もあり、筋腫を縮小させる効果があるとみられています。筋融解法では、腹腔鏡検査の際に、筋腫の部分に導電性の針を刺します。この針に電流を流して筋腫の中心部を破壊し、縮小させます。凍結療法はこれと似た方法ですが、液体窒素などの入った冷却プローブで筋腫の中心部を凍らせて破壊します。これらの治療法の妊娠能力への影響は不明です。また、これらの手技を行っても、子宮筋腫は再発する傾向があります。

子宮動脈塞栓術(UAE)では、針で開けた穴または小さな切開創から、柔軟な細いチューブ(カテーテル)を大腿(だいたい)動脈に挿入します。挿入部にはあらかじめ局所麻酔をかけておきます。筋腫に血液を供給している動脈までカテーテルを進めてから、微細な合成粒子(塞栓物質)を注入します。注入された粒子は筋腫に血液を供給している小動脈へ流れこんでその血管をふさぎ、子宮筋腫を縮小させます。ふさいだ動脈の再開通や新しい動脈の形成により筋腫が再発する可能性や、妊娠の可能性についてはわかっていません。この手技による合併症で最も多いのは痛みと感染症です。

これらの治療法を実施した場合も、子宮筋腫が再発したり、完全に除去できなかった筋腫が増殖を続けることがあります。そのような場合には子宮摘出が必要になります。

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