メルクマニュアル家庭版
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妊娠中の定期健診

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子供を望む夫婦は医師などにあらかじめ相談し、できる限り健康な状態で妊娠に臨めるようにアドバイスを受けておくことができれば理想的です。こうした機会に、女性の健康や胎児の健康を損うおそれのある要因について医師に尋ね、説明を受けておきます。妊娠を脅かすおそれのある要因をあらかじめ把握し、対処法を知っておけば、妊娠中に問題が生じるリスクを下げることもできます(ハイリスク妊娠: 妊娠前の危険因子を参照)。例としてタバコ、アルコール、有害物質などが挙げられます。たとえば妊婦の受動喫煙は胎児に有害な影響を及ぼす可能性があるため、可能な限り避けるべきです。また、完全に家の中だけで飼育され、よそのネコと一切接触していない場合を除き、ネコやその糞(ふん)に触れることも避ける必要があります。これはネコに触れることで伝染するトキソプラズマ症(原虫による感染症の1種)が胎児の脳を侵すことがあるからです。風疹もまた、先天異常を引き起こします。食生活や社会生活、感情的な問題、医学的なことで何か不安があれば、それについても相談します。

妊娠前に医師などに相談して、風疹など必要な予防接種を受けておくこともできます。葉酸を含んだ妊婦用の総合ビタミン剤の服用を始めることもできます。必要であれば、遺伝病をもつ子供が生まれるリスクがないか、パートナーとともに遺伝子検査を受けることもできます(遺伝病の検査: 遺伝子検査を参照)。

妊娠が確認されたら、できれば妊娠6〜8週の時期に診察を受けます。このときに妊娠期間と出産予定日ができる限り正確に割り出されます。

妊娠中の定期的な健康診断(妊婦健診)の初めての診察は、かなり詳しく行われます。体重、身長、血圧を測定し、内診で子宮の大きさや位置を確認します。

血液検査では全血球計算や、梅毒や肝炎などの感染症の有無、風疹に対する免疫の有無などを調べます。血液型の検査ではRhプラスかRhマイナスかも調べます。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の検査も受けることが勧められます。このほか一般的に行われる検査として尿検査と、子宮頸癌(しきゅうけいがん)の有無を調べるパパニコロー(パップスメア)検査(子宮頸部の細胞診)があります。子宮頸部から分泌物を採取して淋菌感染症やクラミジア感染症といった性感染症の有無を調べることもあります。

その他の検査の必要性は妊婦の状態によって異なります。血液型がRhマイナスであれば、Rh因子に対する抗体の有無を調べます(ハイリスク妊娠: Rh式血液型不適合を参照)。Rh抗体をもっている女性がRhプラスの胎児を妊娠した場合は、胎児に重大な問題が生じ、ときに死に至ることもあります。しかし妊婦の血液中の抗体が早期に検出されていれば、胎児を守る処置を取ることができます。

アフリカ系の女性で過去に検査を受けていなければ、鎌状赤血球症の体質や病気についての検査をします。結核を調べるためのツベルクリン反応検査はすべての妊婦に推奨されます。X線検査は妊娠初期では普通行われませんが、必要であれば安全に行うことができます。具体的には、妊婦の下腹部を鉛の入った遮へい板で覆って胎児を放射線から守ります。

初回の診察の後は、妊娠32週までは4週間ごとに、36週までは2週間ごとに、その後出産までは毎週健診を受けます。毎回体重と血圧を記録し、子宮の大きさを測定して胎児が正常に成長しているか確認します。妊婦の足首にむくみがないかも調べます。

健診では毎回、尿検査も行います。尿中に糖が多く出ると糖尿病が疑われます。尿中に糖が検出された場合は妊娠24〜28週に糖尿病スクリーニング検査を行います。また、(1)過去に巨大児の出産または原因不明の死産をしたことがある人、(2)肥満している人、(3)25歳以上の人、(4)家族に糖尿病患者がいる人、(5)多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群の人も糖尿病スクリーニング検査の対象となります。尿検査では、尿中のタンパク質も調べます。尿中にタンパク質が検出された場合は妊娠中毒症(子癇前症ともいい、妊娠中に生じる高血圧の1種)(ハイリスク妊娠: 妊娠中毒症(子癇前症)を参照)が疑われます。

胎児が遺伝病をもって生まれるリスクが高い場合は、出生前診断を行います(遺伝病の検査: 出生前診断を参照)。

超音波検査は画像診断の中では最も安全で、妊娠中に最低1回は行って胎児の成長を確かめ、出産予定日を確認すべきであると多くの医師が勧めています。検査では超音波を発する小さな装置(プローブ)を妊婦の腹部の上にあて、体内の構造にあたって反射してくる波を検出し、そのパターンを画像としてモニター画面に表示します。腟内にプローブを入れて検査を行うこともあります(経腟超音波検査)。超音波検査では高画質の画像が得られ、胎児の動きもみることができます。この検査によって多くの情報が得られ、妊婦もそれを見て安心できます。

腹部の超音波検査では、特に妊娠初期の場合、検査の前に水を大量に飲む必要があります。膀胱が大きくなると子宮が骨盤外に押し出され、胎児の様子がはっきり観察できるからです。経腟超音波検査の場合は膀胱内を水で満たす必要はなく、妊娠しているかどうかもより早期にわかります。

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妊娠中の超音波検査:方法

妊娠中の超音波検査:方法

妊娠6週になると超音波検査で胎児の心臓の拍動が観察され、胎児が生きていることが確かめられます。超音波検査を定期的に行って胎児の心音を聞く場合もあります。妊娠18〜20週ごろからは、胎児専用の聴診器でも、胎児の心音を聞くことができます。

妊娠14週ごろになると超音波検査で胎児の性別が判別できるようになります。多胎妊娠の有無、胎盤の位置の異常(前置胎盤)、胎児の位置の異常などもわかります。また、超音波検査は出生前診断などの際にも器具などの位置を確認する目的で使われます。

出産を控えた時期には、胎児を包む羊膜が早く破れてしまう早期破水の確認にも超音波検査が用いられます。また、帝王切開を行うべきかどうかの判断にも役立ちます。

インフルエンザの季節には、すべての妊婦が予防接種を受けることを専門家は勧めています。

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