メルクマニュアル家庭版
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妊娠中の自己管理

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妊娠中には、妊婦が自分で気を配るべきこともいろいろとあります。妊娠中の食事、薬やサプリメントの使用、運動、性交などについてわからないことがあれば医師に相談するようにします。

食事と体重: 妊娠中の食事は適量を摂取し、必要な栄養素をバランス良く取るようにします。成長していく胎児のため、食べる量を普段より約250kcal増やす必要があります。新鮮な果物、穀物、野菜などの摂取を心がけ、栄養のバランスに気を配ります。食物繊維を多く含み砂糖が入っていないシリアルなどは妊婦に適した食品です。胎児に必要な栄養素は母体から優先的に取りこまれますが、そのためにはまず、妊婦が十分な栄養を摂取していなければなりません。米国の場合、塩分は食卓で加えなくても普通の食事に十分含まれています。加工食品は塩分を多く含むのでなるべく控えます。妊娠中にダイエットをして減量することは、たとえ妊婦が肥満している場合であっても勧められません。胎児の成長にはある程度の体重増加が不可欠です。また、ダイエットをすると胎児に供給される栄養が減ってしまいます。

平均的な体格の米国人女性では、妊娠中の体重増加の目標値は10〜14キログラムです。体重増加が14〜16キログラムを上回ると、母体や胎児に脂肪がついてしまいます。妊娠後期には体重増加をコントロールするのが難しくなるため、妊娠初期にはあまり体重を増やさないようにします。一方、妊娠中に体重が増えないのは良くない徴候で、特に体重増加が4.5キログラム未満の場合は胎児の成長が不十分であったり、成長が遅れている可能性があります。

妊娠中の体重増加は、水分が体内にたまって起こることもあります。妊娠中は子宮が大きくなっているため、立った状態でいると下肢から心臓へ戻ろうとする血流が子宮に圧迫され、むくみが生じることがあります。1日に2〜3回、体の左右どちらか(特に左側が効果的)を下にして30〜45分間ほど横になるようにすると、むくみが解消されます。

薬物とサプリメント(栄養補助食品): 妊娠中は一般に薬物の使用を避けるべきですが、使わざるを得ない場合もあります(妊娠中の薬物の使用を参照)。妊婦はどんな薬でも使用前に必ず医師に相談する必要があり、ハーブなどのサプリメントやアスピリンなどの市販薬も例外ではありません。特に妊娠初期の3カ月間は十分に注意します。

妊娠すると鉄分の必要量が通常の2倍になります。ほとんどの妊婦では鉄剤による補給が必要になります。平均的な女性の場合、食べものから吸収している鉄分の量だけでは必要量に及ばず、体内に蓄えられている鉄分と合わせても妊娠中に必要な鉄分量を満たすことはできないためです。もともと貧血があったり妊娠中に貧血になった場合は、平均的な妊婦よりもさらに多くの鉄分補給が必要です。鉄剤を服用すると軽い胃のむかつきが生じたり、便秘になることがあります。

妊婦は葉酸のサプリメントを毎日摂取すべきで、妊婦用のビタミン剤には葉酸が通常含まれています。妊娠前から摂取していれば理想的です。葉酸が不足すると、二分脊椎(にぶんせきつい)など、脳や脊髄の先天異常が胎児に生じる危険性が高くなります。過去に二分脊椎の子供を出産したことがある人は、妊娠前から高用量の葉酸を摂取するようにします。紫外線の浴びすぎは葉酸値を減少させ、特に肌の色が薄い人ではその傾向があります。経口避妊薬を服用していたことがある女性は葉酸不足になりやすい傾向がありますが、こうした女性が二分脊椎の子供を出産する可能性が高いという証拠はありません。

バランスの取れた食事を規則正しく取っていればビタミン剤などの摂取は必ずしも必要ではありませんが、鉄と葉酸を含んだ妊婦用マルチビタミン剤については毎日摂取することを多くの医師が勧めています。

身体活動: 多くの女性が、妊娠中は身体活動を控えめにした方がよいのではないかと考えます。しかし実際にはほとんどの場合、妊娠中のどの時期にも、普段と同様の活動や運動を続けることができます。水泳や速足で歩くといったあまり激しくない運動は妊婦に適しています。ランニングや乗馬といった活動量の多い運動であっても、慎重に行えば問題はありません。ただし、激しい身体接触を伴うスポーツは避けるべきです。

性交: 妊娠中は性欲が増すこともあれば、減少することもあります。妊娠期間のどの時期に性交を行っても通常は問題ありません。ただし、腟からの出血、痛み、羊水の漏れ、子宮収縮といった症状がある場合は性交を避けます。

授乳の準備: 妊婦が母乳で子育てをしたいと望んでいる場合でも、妊娠中には乳頭(乳首)の手入れなどをする必要はありません(正常な新生児と乳児: 母乳栄養を参照)。出産前から手で乳房を刺激して分泌物を搾り出すと乳腺炎を起こしたり、ときには早産につながることもあります。乳輪や乳頭には表面を保護する潤滑液が自然に分泌され、母乳を出す準備を整えています。この分泌物は無理にふき取らないようにします。実際に母乳で子育てをした人に話を聞いたり、授乳の仕方を見せてもらっておくと、参考になることがあります。

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