メルクマニュアル家庭版
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セクション

入院中の経過

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出産直後の母親は注意深く経過が観察されます。痛みをできるだけ和らげ、出血や感染のリスクを最小限に抑える努力が払われます。胎盤の娩出(後産)があった後、子宮の収縮を促すため定期的に腹部のマッサージが行われることがあります。必要であれば、オキシトシンを使用して子宮を収縮させます。オキシトシンは分娩後の1〜2時間、点滴で継続的に投与されます。これらの処置により子宮を確実に収縮させてその状態を維持し、出血量が多くなるのを防ぎます。

分娩で全身麻酔が使用されることはまれですが、使用した場合、分娩を終えた母親は酸素、血液型の適合する血液、点滴などが準備され設備の整った回復室に移され、産後2〜3時間は経過が観察されます。

産後の24時間は脈拍数が減少し、体温がわずかに上昇し、白血球数が一時的に増加します。腟(ちつ)から血液の混じった分泌物が3〜4日間みられ、分泌物はその後10〜12日間に、まず淡い褐色になり、やがて黄色がかった白色になります。この腟分泌物は悪露(おろ)と呼ばれ、産後6週ごろまで続くことがあります。腟分泌物を吸収するため生理用ナプキンなどを使用し、頻繁に交換します。尿量が大幅に増えますが、これは一時的なものです。産後は膀胱の感覚が鈍くなることがあるため、少なくとも4時間おきに定期的に排尿するようにします。これによって膀胱に尿がたまりすぎるのを防ぎ、膀胱の感染症を予防します。排便も、できれば退院前に済ませておくとよいでしょう。便秘になると痔(じ)ができたり悪化したりするため、必要に応じて緩下薬(作用が穏やかな下剤)を使用して便秘を予防します。痔がある場合は温湿布や局所麻酔薬を含むゲル剤を使用すると痛みが軽減します。

乳汁分泌の初期には乳房が張り、乳汁がたまって硬く張ったり痛むこともあります。母乳で育てる予定がない場合は、きつめのブラジャーを着ける、氷のうなどで冷やす、アスピリンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬を服用するといった方法で、不快感を軽減できます。

母乳で子育てをしている人は、定期的に授乳することで乳房の張りを和らげることができます。また、自分に合った授乳用ブラジャーを1日24時間着用することで不快感が軽減されます。乳房の張りがひどい場合は、授乳の直前に自分で乳房をマッサージして乳汁を押し出し、乳児の口が乳輪(乳頭の周囲の色素に富んだ部分)にぴったり吸いつくようにします。授乳と授乳の間に乳房が張ってつらい場合は、温かいシャワーを浴びながら手で乳汁を搾り出すと楽になります。しかし、授乳と授乳の間に搾乳を行うと乳房の張りが長びく傾向があるため、どうしても必要な場合を除いては避けるべきです。

出産後、最初の24時間が過ぎると体は急速に回復します。食欲があれば、分娩直後からでも普通の食事を取ることができます。また、できるだけ早く起き上がって歩くように努めます。経腟分娩の場合は、1日たったら腹筋を強くする運動を始めることができます。ベッドの上で、膝(ひざ)を曲げたまま上体を起こす運動が効果的です。しかし産後は疲れがひどいため、大多数の人はそれほどすぐに運動を始めることはできません。

退院前に、診察が行われます。風疹にかかったことのない人や、風疹の予防接種を受けていない人は予防接種を受けます。母親の血液型がRhマイナスで新生児がRhプラスの場合は、母親に産後3日以内に抗D免疫グロブリンが投与されます。これは母親の血流内に胎児の赤血球が移行していた場合に、この赤血球を破壊する目的で行われます。Rhプラスの胎児の赤血球がRhマイナスの母親の体内にあると、母体によって抗体がつくられることがあり、次回以降の妊娠が危険になる可能性があるからです(ハイリスク妊娠: Rh式血液型不適合を参照)。2回目の診察は6週間後に行われます。また退院前には、これから体に起こりうる変化や、体力の回復後に使用できる避妊方法などについても説明があります。

母親も新生児も健康であれば、米国では通常、経腟分娩の場合は48時間以内に、帝王切開の場合は96時間以内に退院します。

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