メルクマニュアル家庭版
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産後の感染症

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分娩の直後には体温の上昇がよくみられます。分娩後12時間以内に38.3℃以上の熱がみられる場合は、感染を起こしている可能性があります。この場合でも多くは感染症ではありませんが、念のために医師や助産師の診察を受ける必要があります。一般に、分娩後24時間たってから、最低6時間の間隔を空けて2回の体温測定で、38℃以上の発熱がみられた場合に産後の感染症と診断されます。感染を予防し、感染の原因となりうる状態の治療にも十分な注意が払われているため、産後の感染症はめったに起こりません。しかし感染が起きてしまえば重症化するおそれがあるので、分娩後1週間以内に38℃以上の発熱がみられれば、ただちに医師に連絡します。

産後の感染症には、分娩に直接かかわる子宮やその周辺に起こるものと、直接関係のない腎臓、膀胱、乳腺、肺などに起こるものとがあります。

子宮の感染症

産後の感染症は多くの場合、子宮から始まります。分娩中に羊膜(胎児と羊水を包む膜)の感染によって発熱した場合は、子宮内膜の感染症(子宮内膜炎)、子宮の筋肉の感染症(子宮筋層炎)、子宮周囲の感染症(子宮傍結合組織炎)が起こる可能性があります。

原因と症状

健康な腟に常在している細菌が産後の感染症の原因となることがあります。感染を起こしやすくする要因としては、貧血、妊娠中毒症(子癇前症)(ハイリスク妊娠: 妊娠中毒症(子癇前症)を参照)、頻回の内診、破水から分娩までの遅れ(18時間以上)、長時間の分娩(遷延分娩)、帝王切開、分娩後子宮内に残存した胎盤組織片、分娩後出血などがあります。

主な症状は顔が青白くなる、悪寒、頭痛、けん怠感、食欲不振などです。心拍数が速くなり、白血球数が異常に増加します。子宮は軟らかく、腫れて圧痛があります。腟から悪臭のある分泌物がよくみられますが、量はさまざまです。

子宮傍結合組織炎では、子宮の周囲の組織が感染によって腫れ、その中に、軟らかく、腫れて圧痛のある子宮が固定されて動けなくなります。激しい痛みと高熱を伴います。

このほか、腹膜(腹腔と腹部臓器を覆っている膜)に炎症を起こして腹膜炎となることがあります。また、骨盤静脈に血栓が形成される骨盤血栓性静脈炎や、血栓が肺へ移動して肺の動脈を詰まらせる肺塞栓症が起こることもあります。感染を起こした細菌がつくる毒素(トキシン)の血中濃度が高くなると、トキシックショックと呼ばれる状態になり、血圧が急激に低下して心拍数が非常に速くなります。このトキシックショックは腎臓に重い障害を起こし、死に至る場合もあります。

診断と治療

感染症は、主に診察の結果から診断されます。原因菌を検出するため、尿、血液、腟分泌物を採取して培養検査を行います。

子宮の感染症の場合は、平熱の状態が48時間続くまで抗生物質が点滴されます。さらに、その後の数日間も抗生物質の内服薬が投与されることがあります。

膀胱と腎臓の感染症

膀胱炎は膀胱が感染を起こした状態で、分娩中や分娩後、尿がたまらないように膀胱にカテーテルが留置されていると起こることがあります。また、妊娠中から膀胱内に存在していた細菌が、産後になって症状を引き起こすこともあります。腎臓の感染症である腎盂腎炎(じんうじんえん)は、分娩後に膀胱内の細菌が腎臓に広がることが原因で起こります。

膀胱炎では発熱、排尿痛、頻尿などの症状がみられます。感染が腎臓に達していると、腰やわき腹の痛み、全身的な体調不良や不快感、便秘などがみられることもあります。

これらの感染症は主に抗生物質で治療します。感染が腎臓まで広がっていなければ2〜3日の投薬ですむこともあります。腎臓の感染が疑われる場合は、平熱の状態が48時間続くまで投薬が続けられます。原因菌を調べるため尿の培養検査が行われます。培養の結果から、その細菌に対してより有効な抗生物質に切り替えることもあります。腎臓の機能を助け、細菌を尿路から洗い流すため、水分を多く取るようにします。産後6〜8週間たったら再度尿の培養検査を行い、感染症が治癒しているかどうか確認します。

乳房の感染症

産後に、乳房の感染症である乳腺炎(乳房の病気: 乳腺炎と乳腺膿瘍を参照)が起こることがあります、主に産後6週間以内にみられ、そのほとんどが授乳中の人です。乳頭やその周囲の皮膚にひび割れができると、皮膚にいる細菌が乳管に侵入して乳腺炎を起こすことがあります。感染した乳房は腫れて赤くなり、熱感と圧痛があります。熱が出ることもあります。産後10日以上たってからの発熱は、膀胱炎が原因の場合もありますが、多くは乳腺炎によるものです。

乳腺炎は抗生物質で治療します。授乳をしている人が感染を起こした場合は、授乳を続けるべきです。授乳することによって乳腺膿瘍(にゅうせんのうよう)のリスクが低下します。乳腺膿瘍は乳腺内に膿(うみ)がたまるまれな病気で、抗生物質を投与するとともに、普通は切開して膿を排出します。

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