メルクマニュアル家庭版
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授乳

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正常な新生児は、乳探し反射と吸引反射が活発であり、出生直後から栄養を取ることができます。出生後すぐに母乳を与えなかった場合、通常は出生後4時間以内に授乳を始めるようにします。

ほとんどの赤ちゃんはミルクと一緒に空気を飲みこみます。赤ちゃんは自分ではげっぷができないので、親が空気を吐き出せるよう手助けします。赤ちゃんの体を真っすぐに立てて親の胸によりかからせるように抱き、頭を親の肩にのせて背中をやさしくたたきます。背中をたたかれることと肩によりかかる圧力とに促されて、音が聞こえるほどのげっぷが出ます。このときに少量のミルクを一緒に吐き出すこともあります。多くの専門家は、生後6カ月までの間は母乳か乳児用調合乳だけで栄養補給することを勧めています。

母乳栄養

新生児にとって母乳は理想的な栄養源です。母乳は必要な栄養を最も消化しやすく吸収しやすい形で与えるだけでなく、母乳の中には赤ちゃんを感染症から守る抗体や白血球も含まれています。母乳は便と腸内細菌叢(さいきんそう)のpHを適切な状態にするため、新生児を細菌性下痢から守ります。こうした母乳の防御的な特性により、母乳で育っている赤ちゃんは、人工栄養で育っている赤ちゃんよりも感染症にかかりにくい傾向があります。母乳を与えることは、母親にも利点があります。たとえば、人工栄養で育てる場合に比べ、子供とのきずなを強く感じることができます。米国では母親の約60%は母乳を与えており、この比率は着実に高まっています。仕事をもつ母親は家にいる間は母乳を与え、仕事に出ている間はほ乳びんに搾った母乳か乳児用調合乳を与える場合もあります。ほとんどの医師は、生後2カ月以降の母乳栄養児には、ビタミンDの栄養補助剤を毎日与えることを勧めています。

母乳が出るようになる前に、乳首からは「初乳」と呼ばれる黄色くて薄い液体が出ます。初乳はカロリーが高く、タンパク質と抗体が豊富に含まれています。抗体は赤ちゃんの胃から体に直接吸収され、多くの感染症から赤ちゃんを守ります。

授乳時の抱き方

授乳時の抱き方

母親は楽でくつろげる姿勢をとって座ります。このとき母親は座ってもよいし、ほとんど横になってもよいでしょう。何通りか異なった姿勢で赤ちゃんを抱いてみます。自分と赤ちゃんにとって最も合った姿勢がわかります。姿勢を何度か変えてみるのもよいでしょう。

一般的な姿勢では、母親と対面するように赤ちゃんを膝に抱きます。赤ちゃんが左の乳房を吸っている間、母親は左手で赤ちゃんの首と頭を支えます。乳房を赤ちゃんのところにもっていくのではなく、赤ちゃんを乳房の位置までもってきます。母親と赤ちゃんの支えが大切です。母親の背部や腕の下にまくらを置いてもよいでしょう。足台やコーヒーテーブルに足をのせておくと、母親が赤ちゃんの上に前かがみにならなくてすみます。母親が前かがみになると、母親の背中を痛めたり、乳首を痛める原因になります。まくらや折りたたんだ毛布を赤ちゃんの下に置くことも支えになります。

母乳による授乳を始めるときは、母親は快適でくつろげる姿勢をとり、座るかほとんど横になります。そして向きを変えて、左右の乳房をそれぞれ与えます。赤ちゃんは母親と対面するように抱きます。母親は、親指と人さし指を乳房の先端に、残りの指を乳房の下部にあてて支え、赤ちゃんの下唇に乳首をこすりつけます。この刺激で赤ちゃんは口を開け(乳探し反射)、乳房をつかみます。母親は乳首と乳輪を乳児の口に入れますが、そのとき乳首が中央にくるように気をつけます。そうすると乳首が痛むのを防げます。赤ちゃんを乳房から離すときは、母親は赤ちゃんの口に自分の指を入れて、赤ちゃんのあごをそっと押し下げ、吸いつきを断ちます。乳首が痛む場合は、乳首をくわえさせる位置に問題があるので、予防する方が痛んでしまってから治すよりも簡単です。

最初赤ちゃんは、それぞれの乳房から数分間ずつ母乳を飲みます。この結果、母親に生じる反射(催乳反射)が、母乳の産生を刺激します。母乳の産生は吸わせている時間が十分かどうかにかかっているので、母乳産生を完全に確立するためには、授乳時間をしっかりとる必要があります。最初の数週間は、乳児は授乳のたびに両方の乳房から飲ませるようにすべきです。しかし、先に吸わせた乳房で授乳しているうちに眠ってしまう乳児もいます。最後に吸わせた方の乳房を、次回の授乳では先に吸わせるようにします。第1子の場合、十分な量の母乳が出るようになるまで普通は72〜96時間かかります。第2子以降は、必要な時間はもっと短くなります。初日の晩に母親がかなり疲労しているようであれば、深夜の授乳の1回は水で代用してもかまいません。しかし適度な刺激を与えて母乳の出を良くするためには、最初の数日間は授乳の間を6時間以上あけるべきではありません。授乳は時間通りというよりは、赤ちゃんが欲しがったときに行うべきです。同様に毎回の授乳の長さも、赤ちゃんの要求を満たすように合わせてあげましょう。赤ちゃんの授乳は24時間に8〜12回とされていますが、この目安もかなり個人差があります。

母親は、特に第1子の場合、出産後3〜5日たったら新生児を連れて産婦人科を受診する必要があります。そうすれば医師は、授乳がうまくいっているかどうかを確かめ、育児についてのどんな質問にも答えてくれます。赤ちゃんが24時間以内に退院した場合や、授乳がうまくいっていない、あるいは両親に何か気になることがある場合は、もう少し早く受診した方がよいでしょう。赤ちゃんがどのくらいの量の母乳を飲んでいるか母親には正確にはわからないので、医師は授乳がうまくいっているかどうかは授乳回数と体重の増加から判断します。おなかをすかせていて1〜2時間ごとに授乳しているのに、月齢に比べて体重が増えておらず体格も小さい赤ちゃんは、十分な量の母乳を取っていないと考えられます。

母乳を与えるのをいつやめるか(離乳)は、母親と赤ちゃんの両方の必要性と要望に基づいて決めます。母乳だけで育てる時期は少なくとも生後6カ月まで、母乳と固形食の併用は12カ月齢までが最も理想的だとされています。離乳は、突然授乳をやめるよりも、数週間から数カ月かけてゆっくり行う方が、赤ちゃんにも母親にも楽です。離乳の最初の段階では、母乳による1日の授乳のうち1〜3回をほ乳びんやコップに入れた果物のジュース、搾った母乳、乳児用調合乳などに代えます。特に食事時間にあたる回は、固形食を与えるようにしていくべきです。コップから飲むのを覚えることは、発達上、非常に意味のあることです。10カ月齢までには、離乳を完了してコップで飲めるようになります。母親は母乳を徐々にそのほかのものに代えていきますが、多くの乳児は18〜24カ月齢までは1日に1〜2回は母乳を飲み続けます。中には、もっと長い期間母乳を飲む子もいます。母乳を飲む期間が長く続く場合も、同時に固形食を食べ、コップから飲めるようにしなくてはなりません。

人工栄養

病院では、一般に新生児には出生後すぐに授乳を行い、その後は、理想的には欲しがったときに授乳します。生後最初の1週間は、赤ちゃんは1回の授乳で約30〜60ミリリットル飲みますが、その後は徐々に量が増えて、2週目までには1回に約90〜120ミリリットルを、1日に6〜8回飲むようになります。新生児には、毎回一定量を飲みきるよう無理強いはしないようにし、おなかがすいて欲しがったときに好きなだけ与えるようにします。成長するにしたがって乳児が飲む量は増え、3〜4カ月ごろまでには約1回に約180〜240ミリリットル飲むようになります。ほ乳びんで授乳する場合、赤ちゃんはやや上体を起こすか座らせるのが適切な姿勢です。ミルクが鼻や耳管に流れこむことがあるので、あお向けに横たわった姿勢で赤ちゃんにほ乳びんから飲ませてはいけません。乳児が自分でほ乳びんを持って飲めるようになったら、ほ乳びんを持ったまま眠ることのないようにします。ミルクやジュースに触れたままにしておくと歯に悪い影響を与え、むし歯の原因となるからです。

市販の乳児用調合乳は、栄養素とカロリー、ビタミンがバランスよく配合されています。そのまますぐに飲ませられるもの、滅菌したびん入りのもの、缶入りの濃縮タイプで水で希釈するもの、粉のもの、などがあります。乳児用調合乳には、鉄剤が入っているものと入っていないものがありますが、多くの医師は鉄分を含む製品を推奨しています。濃縮された調合乳や粉乳を使う場合は、使用法の説明に従って正しく調製しなくてはなりません。多くの乳児用調合乳は牛乳からつくられていますが、牛乳に耐性がない乳児のために豆乳でつくられた製品もあります。どちらのタイプを使っても、乳児の長期的な健康に差はありません。ただし、生後1年間は牛乳そのものを与えることは適当ではありません。

乳児が微生物に接触するのを極力避けるため、調合乳は滅菌した容器で与えなくてはなりません。使い捨てのプラスチック製のライナーを使うと、哺乳びんを消毒する手間が省けます。ほ乳びん用の乳首は沸騰したお湯の中で5分間消毒します。調合乳は人肌まで温めます。調合乳を入れたほ乳びんや、使い捨てのライナーを使う場合の調合乳の容器は、お湯につけて人肌になるまで温めます。調合乳が熱すぎると赤ちゃんが重いやけどを負うので、ほ乳びんを静かに振って中の温度を均一にしてから、親は自分の手首の内側の皮膚の敏感な部分に数滴垂らし、適温であることを確かめます。人肌くらいの温度になっていれば、調合乳は温かくも冷たくも感じないはずです。電子レンジは加熱しすぎるおそれがあるので、調合乳やベビーフードを温める際には使わない方がよいでしょう。

ほ乳びんの乳首の穴のサイズは重要です。一般的には、ほ乳びんをさかさまにしたときに調合乳がゆっくり滴る程度にすべきです。月齢の高い乳児の場合は、飲むミルクの量も多いので、乳首の穴はもっと大きくても大丈夫です。

固形食の開始

固形食を始める時期は、乳児が固形食を必要としているか、また受け入れる準備ができているかどうかによります。一般的には、乳児が十分大きくなって、乳児用調合乳よりももっと高カロリーの食品を必要とするようになった時期に固形食が必要となります。目安としては、乳児がほ乳びんのミルクを飲み干しておなかがいっぱいになっても、2〜3時間以内にまたおなかをすかせるようになったときです。大体6カ月齢までに、このような段階に達します。これより小さい乳児では、中には食べものを舌の奥の方にのせてもらえば飲みこめる子もいますが、まだ固形食をうまく飲みこめません。親の中には、夜通し乳児を眠らせておこうとして、まだ小さい乳児に大量の固形食を食べさせる人もいます。こういう試みはたいていうまくいきませんし、早くから乳児に食べることを強いると、嚥下(えんげ)性肺炎を起こしたり、後に食事に関する問題が起きる原因となります。多くの乳児は、母乳や人工乳を飲んだ後で固形食を食べます。そうすると吸いたいという欲求と、早く空腹をいやしたいという欲求の両方が満たせるからです。

乳児は、年長の小児や成人よりも食物アレルギーや不耐性を引き起こしやすいものです。短期間に多くの種類の食物を与えると、もしこのような反応が起きた場合にどの食物が原因なのかをつきとめにくくなります。このため、新しい食物を与えるのは1回に1品にして、新しい食物は週に1品までにすべきです。乳児がその食物に耐性があるとわかったら、また新しい食物を与えます。

最初に1種類の穀物を与え、それから果物、野菜を与えます。肉類は良質のタンパク源ですが、約7カ月以降に与えます。多くの乳児は、最初は肉類を受けつけません。

乳児が新しい食べ方を学べるよう、食物はスプーンで与えます。6〜9カ月齢の乳児は、食物をつかんで自分の口に入れることができるようになります。そうなったら、自分で食べやすいように促してあげる必要があります。しかし、乳児は小さくて硬いかけら(ピーナツ、生のニンジン、あめ玉、小さなクラッカーなど)をのどに詰まらせやすいので、そのような食物は遠ざけておかなければなりません。市販のベビーフードよりも、家庭で煮て裏ごしした食物の方が経済的ですし、栄養も適切に摂取できます。

乳児は甘い食物を好みますが、砂糖は特に重要な栄養素ではないので、与えても少量だけにするか、あるいはまったく与えないようにします。ベビーフードの甘いデザート類は赤ちゃんに与えても何の利点もありません。はちみつは生後1年間は与えてはいけません。はちみつにはボツリヌス菌の芽胞が含まれている可能性があり、年長の小児や成人には無害ですが、乳児ではボツリヌス中毒を引き起こすおそれがあるからです。

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