メルクマニュアル家庭版
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消化管の異常

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先天異常は消化管に沿ってどこにでも、つまり食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門のいずれにも生じます。多くの場合は臓器が完全に発達していなかったり、位置の異常ですが、これがしばしば狭窄や閉塞を引き起こします。腹腔を取りまく内側あるいは外側の筋肉が弱かったり、穴が開いていたりすることがあります。腸につながる神経が発達せず欠損することもあります(ヒルシュスプルング病あるいは先天性巨大結腸症)。

腸、直腸、肛門に起こる閉塞は、周期的なけいれん性の腹痛、腹部の腫れ、嘔吐を引き起こします。

消化管の異常のほとんどは手術を必要とします。一般的に閉塞部は手術で開通します。腹腔周囲の筋肉が衰弱しているか穴がある場合はそこを縫って閉じます。

食道閉鎖症と気管食道瘻

正常な場合、長いチューブ状をした器官である食道は口と胃をつないでいます。食道閉鎖症では、食道は狭くなるか行き止まりになっています。食物は、食道から胃へ送られるのが遅くなるか、送られなくなります。食道閉鎖症がある新生児のほとんどは気管食道瘻(ろう)、つまり食道(狭くなっている部分より下)と気管が異常につながっている状態にあります。飲みこんだ食物と唾液が瘻(異常な導管)を経由して肺に入り、せきや息づまり、呼吸困難を引き起こし、ときには肺炎も引き起こします。肺に入った食物や液体は血液が酸素を受け取るのを阻害し、皮膚が青みがかった色になることがあります(チアノーゼ)。食道閉鎖症の新生児は、何かを飲みこもうとした後にせきとよだれが出るのが特徴です。食道閉鎖症と気管食道瘻を伴う子供の多くには、心臓の異常などそのほかの異常もみられます。

閉鎖と瘻:食道の異常

閉鎖と瘻:食道の異常

食道閉鎖とは、食道が狭くなっていたり行き止まりになっている状態です。この場合、食道は正常のときのように胃につながっていません。気管食道瘻とは、食道と気管が異常につながっている状態です(それは肺に至ります)。

食道の閉塞を発見するには、チューブを食道に挿入しながらX線写真を撮ります。

治療の最初の段階では口から食物を摂取することを中止し、よだれが肺に届く前にそれを持続的に吸い出すためのチューブを食道上部に設置します。乳児には静脈から栄養を与えます。食道と胃を正常に結合して、食道と気管の接合部をふさぐためにすぐ手術を行う必要があります。

肛門閉鎖症

肛門閉鎖症とは、肛門が狭窄したり閉じてしまうことです。肛門閉鎖症を伴う乳児の多くは、肛門と尿道、会陰(尿道と肛門の間の部分)、腟、膀胱などとの間に何らかの接合異常(瘻)が生じます。

肛門閉鎖症のある乳児は、生まれた後、排便が正常にできません。その結果、腸閉塞を起こします。しかし症状が出る前に、医師が赤ちゃんを生後初めて診察したときに肛門を見て異常に気づくこともよくあります。

X線検査を行うと、瘻の経路がわかります。肛門閉鎖症ではたいていの場合、便を出すための経路を設けて瘻を閉じるための手術をすぐに行う必要があります。一時的に人工肛門形成術(腹部に穴をつくって大腸とつなぎ、腹壁に取りつけたプラスチックの袋の中に便を出すための手術)が必要となる場合もあります。

腸の回転異常

腸の回転異常(腸管の異常な回転)は腸の発達が不完全あるいは異常な状態で、命にかかわる可能性があります。回転異常があると後に腸がねじれて(軸捻)、血液の供給を遮断してしまうことがあります。腸回転異常のある乳児は嘔吐、下痢、腹部の腫れなどの症状を急に起こします。これらの症状は出たり消えたりします。腸の中央部への血液供給が完全に遮断される(中腸軸捻)と、突然ひどい痛みと嘔吐が起こります。肝臓でつくられる胆汁が吐き出されるため、黄色や緑色、さび色をしています。やがて腹部が腫れてきます。X線検査は診断に役立ちます。しかし、軸捻はバリウムというX線でみえる物質を直腸に注入(バリウム注腸)した後のX線検査でだけみることができます。

治療としては、静脈内投与による水分補給と通常は緊急手術を数時間のうちに開始しなくてはなりません。ただちに治療しないと、腸の組織が失われたり死んでしまいます。

胆道閉鎖症

肝臓から分泌される液体である胆汁は肝臓の老廃物を運び去り、小腸で脂肪が消化されるのを助けます。肝臓内にある胆管が胆汁を集めて腸に運びます。胆道閉鎖症では、胆管が部分的あるいは完全に破壊されるので、胆汁が腸に届かなくなります。やがて胆汁は肝臓にたまり、その後血液中に流れこむために皮膚が黄色っぽく変色します(黄疸[おうだん])。胆道閉鎖症を治療しないと、「胆汁性肝硬変」と呼ばれる進行性で不可逆性の肝臓の瘢痕化が2カ月齢までに始まります。

胆道閉鎖症の乳児では、尿の色が濃くなって便の色が白っぽくなり、皮膚がしだいに黄疸を示してきます。生後約2週間ごろにこれらの症状と肥大して硬くなった肝臓に最初に気づくのが普通です。2〜3カ月齢になるころまでに、その乳児は成長が阻害され、かゆがり、興奮しやすく、腹部には大きくなった静脈が見え、脾臓も肥大します。

胆汁性肝硬変を予防するには、胆道閉鎖症の診断を2カ月齢になる前に行わなくてはなりません。診断には一連の血液検査を行います。超音波検査も診断に役立ちます。これらの検査をした後も胆道閉鎖症がまだ疑われる場合は、診断を下すための手術(肝臓と胆管の検査および肝生検を含む)を行います。

胆汁を肝臓から吸い出すための経路をつくる手術が必要となります。腸管に流れこむ胆管を再建するのが最善の方法ですが、乳児の40〜50%でこの種の手術は可能です。胆管再建をした乳児のほとんどは正常な生活が送れます。この手術が行えない乳児の場合、普通は2歳までに肝移植が必要となります。

横隔膜ヘルニア

横隔膜ヘルニアとは横隔膜に穴や弱まっている部分がある状態で、これにより腹部の器官の一部が胸部の中に突き出します。横隔膜ヘルニアは90%が体の左側に起こります。胃、腸管、そして肝臓や膵臓までがヘルニアの部分から突き出ることがあります。ヘルニアが大きい場合は、ヘルニアのある側の肺の成長が通常は不完全になります。横隔膜ヘルニアのある子供の多くは心臓の異常を伴います。

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横隔膜へルニア

横隔膜へルニア

生まれた後、新生児は泣き声を上げ呼吸するので、腸管はすぐに空気で満たされます。この急速に大きくなった腸が心臓を押し上げ、残りの肺に圧力をかけて重い呼吸困難を引き起こします。これは生まれた直後にしばしば起こります。通常は胸部X線検査で横隔膜ヘルニアを発見できます。出生前にも超音波検査を行うと見つけることができます。出生前に診断できると、治療の準備ができます。横隔膜を修復するためには手術が必要です。酸素を供給するために呼吸管や人工呼吸器が必要になることがあります。

ヒルシュスプルング病

巨大な臓器である腸管は、腸管壁内にある神経ネットワークによって律動的な収縮を同調させ、消化された内容物が便として排泄される肛門へと送っています。ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)では、この腸管のリズミカルな収縮をコントロールする神経ネットワークが巨大な腸の一部分で失われています。

ヒルシュスプルング病の子供には、腸の閉塞を疑わせる症状があります。胆汁の色がついた嘔吐をする、腹部が腫れる、食べるのを嫌がる、などです。侵された腸管の範囲がほんの少しの場合は子供の症状も軽度で、小児期の後半になるまで診断されないこともあります。このような子供は細長い便をし、腹部が腫れます。体重が増えないこともよくあります。症状が便秘だけということもありますが、まれです。新生児の胎便の排泄が遅れている場合は、ヒルシュスプルング病の疑いがあります。

ヒルシュスプルング病は命にかかわる中毒性腸炎も引き起こす可能性があり、これは突然の発熱、腹部の腫れ、激しく、ときには血の混じった下痢を起こします。

バリウム注腸はしばしば行われます。ヒルシュスプルング病を診断するのに信頼できる唯一の方法は、直腸生検と直腸内圧の測定(検圧法)です。

重症のヒルシュスプルング病は、中毒性腸炎を防ぐためにただちに治療しなくてはなりません。ヒルシュスプルング病の治療では、普通は手術を行って腸管の異常のある部分を切除し、正常な腸管と直腸と肛門をつなげます。子供の状態が非常に悪い場合などは、腸管の正常な部分の下端と腹壁につくった開口部をつなげます(人工肛門形成術)。これにより便はこの開口部を通って回収袋に出され、腸管を通る食物の正常な移動が再開されます。腸管の異常な部分は、残りの腸管とはつながないでおきます。子供が大きくなったら、腸管の正常な部分を直腸と肛門に再度つなぐことができます。

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