メルクマニュアル家庭版
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脳と脊髄の異常

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脳と脊髄に生じる可能性がある多数の先天異常のうち、神経管欠損として知られる異常は妊娠1週目のうちに起こります。そのほか、脳孔症と水無脳症などは妊娠後期に生じます。脳と脊髄の異常の多くは、目に見える異常として頭部と背中に現れます。

脳障害や脊髄障害の症状が現れるのは、先天異常が脳や脊髄の組織に影響を与える場合です。脳が損傷を受けると命にかかわる場合や、精神遅滞、けいれん、麻痺(まひ)などの軽症または重症の障害を引き起こす場合があります。脊髄が損傷を受けると麻痺、失禁、異常のある部分より下の神経がつかさどる部位の感覚喪失などが起こります(椎骨の損傷領域とその影響を参照)。CT(コンピューター断層撮影)検査とMRI(磁気共鳴画像)検査では、脳と脊髄の内部構造の画像から異常を発見できます。

肉眼で見える開口部や腫れを起こすような異常は外科的に修復できます。しかし、先天異常による脳や脊髄の損傷は通常は治りません。

神経管の異常

脳と脊髄は溝として発生し、それが合わさって管を形成します(神経管)。正常な場合は、この管由来の組織の層が脳と脊髄を覆います(髄膜)。ときどき、この神経管が正常に発達せず、脳、脊髄、髄膜が影響を受けることがあります。最も重症な神経管の異常では脳組織が発達せず(無脳症)、致死的です。別のタイプの異常では、神経管が完全には閉じずに、開いた溝のままであることもあります。これが最も軽度の場合は、開いた溝の異常による影響が骨にだけ現れます。たとえば潜在性二分脊椎(脊柱の隠された部分が2つに分かれているという意味)や脊柱の骨が閉じていない状態などがありますが、脊髄と髄膜に影響はありません。この異常はよくみられるもので、通常症状は現れません。ときには髄膜瘤が生じて、髄膜とほかの組織、つまり髄膜と脳組織(髄膜脳瘤)や髄膜と脊髄組織(髄膜脊髄瘤)が開口部から突き出すことがあります。またときには、髄膜を含まずに、脳(脳ヘルニア)や脊髄(脊髄瘤)が突き出すこともあります。組織が突き出した場合は、突き出さない場合に比べて、脳や脊髄が損傷を受けやすくなります。

二分脊椎:脊椎の異常

二分脊椎:脊椎の異常

二分脊椎では、脊椎の骨(椎骨)が正常に形成されません。二分脊椎の程度には幅があります。最も軽症なタイプが一番多いのですが、この場合、1つかそれ以上の椎骨が正常に形成されませんが、脊髄とそれを包む組織層(髄膜)は影響ありません。症状としては、欠損部を覆う皮膚の上に体毛の房やくぼみ、色素の沈着がみられることがあります。二分脊椎のさらに重症なタイプである髄膜瘤では、形成が不完全な椎骨から髄膜が突き出して、皮膚の下に液体で満たされた隆起を形成します。最も重症のタイプは髄膜脊髄瘤で、脊髄が突出します。患部は生々しく赤く見え、乳児は重い障害を伴う傾向があります。

潜在的な脊柱癒合不全の場合は、新生児は背中の下部に目に見える異常を伴って生まれます。これらにはあざ、過剰に色がついた部分(血管腫と火炎状母斑)、毛のかたまり、皮膚の開口部(皮膚洞)、小さなこぶなどがあります。下にある脊髄が体表面につながっている場合は、細菌にさらされるため髄膜炎を起こすリスクが非常に高くなります。子供が成長するにつれ、脊髄の神経が損傷を受けることがあります。あるいは、脊髄の上に脂肪性の腫瘍(脂肪腫)ができて神経を損傷することもあります。したがってこれらの異常がある新生児には、超音波検査やMRI検査を行って下部の軟組織と脊髄を調べなければなりません。

遺伝的要因でも神経管の異常が起こりやすくなります。女性が妊娠に気づく前にこれらの異常が発生することがよくあります。神経管の異常による症状の多くは、脳や脊髄が損傷を受けたことが原因です。異常の程度は、決して気づかれることのない取るに足らないものから、致死的な重症のものまでさまざまです。髄膜脳瘤と髄膜脊髄瘤は重度の障害を起こします。水頭症、学習障害、骨と関節の異常を伴う麻痺、皮膚の感覚喪失、腸と尿の異常などです。

神経管の異常の多くは出生前に診断できます。女性の血液や羊水中のアルファ‐フェトプロテイン値が高いことは、胎児における神経管の異常を示しています(遺伝病の検査: 神経管欠損を参照)。妊娠後期に超音波検査を行うと、この異常や特徴的な奇形を発見できます。妊娠直前から妊娠初期3カ月の間に女性が葉酸を摂取すると、神経管の異常のリスクを最大70%まで減らせます。神経管の異常は普通は外科的に閉じます。

水頭症

脳の周囲にある液体(脳脊髄液)は「脳室」と呼ばれる脳の中にある空間で作られます。この液体は別の部分に排出され、そこで血液中に吸収されます。この液体が排出されないと水頭症(脳水腫)が起こります。水頭症では多くの場合、脳室内の圧が上昇し、脳を圧迫します。先天異常、脳内出血、脳腫瘍など多くの原因により、脳脊髄液の排出は妨げられ、水頭症を引き起こします。

水頭症の症状として、頭部が異常に大きくなることがあります。このような乳児は通常、正常に発育しません。頭部のCT検査、超音波検査、MRI検査などを行うと、水頭症が診断でき、脳がどの程度圧迫されているかがわかります。

治療の目標は、脳内の圧力を正常に保つことです。永久的に脳脊髄液を排出する代わりの経路(シャント)を設けることで、脳内にある液体の圧力と量を軽減できます。シャントを脳室内に設け、皮下を通して脳から別の部位へ、普通は腹部へとつなぎます(脳室腹膜シャント)。このシャントには、圧力が高まりすぎた場合に脳内の液体を外に出すための弁がついています。一部の子供は成長するにしたがってシャントを使わなくてもすむようになりますが、シャントが外されることはまれです。

必要に応じて、シャントを設けるまでの間、脳内の圧をアセタゾラミドやフロセミドなどの薬剤を使ったり、脊椎穿刺(腰椎穿刺)を繰り返すなどして一時的に下げることもあります。

水頭症でも一部の子供は正常な知能の発達をします。そのほかの子供は、精神遅滞や学習障害を伴います。

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