メルクマニュアル家庭版
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はじめに

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染色体は細胞の中にある構造体で、遺伝子を含んでいます。染色体異常は常に遺伝性の異常です。遺伝性の異常には、遺伝子に影響しても染色体の構造は変えないものもあります(遺伝と遺伝子: 遺伝子の異常を参照)。ですから染色体異常を広義の遺伝性異常とは分けて論じることもよくあります。鎌状赤血球症や嚢胞(のうほう)性線維症などの遺伝性異常は非常によくみられます。

普通人間は23対の染色体をもち、それぞれの染色体には数百個の遺伝子が含まれています。性染色体は、これらの対をなす染色体の1つです。正常な人間には2本の性染色体があり、1本の性染色体はX染色体かY染色体のどちらかです。正常な女性は2本のX染色体をもち(XX)、正常な男性はX染色体とY染色体を1本ずつもっています(XY)。

染色体異常は、性染色体も含めてどの染色体にも起こります。染色体異常や遺伝性異常は、染色体の数、特定の染色体の構造、染色体の配置(たとえば1つの染色体の遺伝物質がほかの染色体にくっつくなど)に影響します。各細胞に存在するとされる量の遺伝物質があるならば、染色体中の遺伝物質は安定しており、異常は発生しません。しかし、細胞内の遺伝物質が多すぎる場合(余剰)や少なすぎる場合(欠失)は異常が発生します。これらの異常は身体的にも大きな影響を及ぼします。

妊婦の年齢が高くなるほど、胎児に染色体異常が発生する可能性は高くなります(遺伝病の検査: 染色体異常を参照)。父親の年齢が高くなっても、胎児の染色体異常の可能性にはほとんど影響しません。近親婚はある種の遺伝性異常の発生率を高めますが、通常、染色体異常ではありません。

染色体異常は広範囲に異常や影響を引き起こし、普通、先天異常(先天異常: はじめにを参照)や出生前の胚や胎児の死亡が起こります。遺伝性異常は先天異常や先天性疾患(たとえば鎌状赤血球症など)を引き起こし、またさまざまな影響を及ぼします。

人間の染色体は血液サンプルで分析できます。たとえば羊水穿刺(ようすいせんし)や絨毛穿刺(じゅうもうせんし)を行って、出生前に胎児の染色体異常を検査することも可能です(遺伝病の検査: 絨毛検査を参照)。胎児が染色体異常をもつと判明した場合は、さらに検査を行って、特定の先天異常があるかどうか調べます。染色体異常を治療することはできませんが、一部の先天異常はときに予防や治療ができる場合もあります。

染色体の一部が欠けたとき

染色体の一部が欠けている乳児では、さまざまな症候群が発症する可能性があります。これらの症候群は、染色体欠失症候群と呼ばれます。

ネコ鳴き症候群(5p欠失症候群)はまれな病気ですが、5番染色体が欠けています。この症候群の乳児は通常、出生時に低体重で頭が小さいことに加え、丸い顔、小さいあご、広い鼻、広く離れた眼、頭の低い位置についている耳など、外見上の異常が多くみられます。さらに、子ネコが鳴いているような甲高い泣き声を上げます。乳児はしばしば片足を引きずるようにみえることもあります。甲高い泣き声は出生直後から始まって数週間続き、その後なくなります。心臓の異常もよくみられます。精神と体の発達は著しく遅れます。これらの異常にもかかわらず、ネコ鳴き症候群の子供の多くは成人になるまで生存します。

もう1つの染色体欠失症候群であるプラダー‐ウィリー症候群では、精神遅滞がよくみられます。症状の多くは、子供の年齢によって幅があります。この症候群の新生児は片足を引きずるようにみえ、ほ乳が不良で体重が少しずつしか増えません。これらの症状はいずれ消えます。その後、1〜6歳の間に食欲は増し、貪欲なまでになります。強迫神経症的な行動がよくみられます。体重増加は過剰になり、そのためほかの健康上の問題が起こります。胃のバイパス手術が必要になるほど肥満がひどくなることがあります。

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