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性的成熟の遅れ

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性的成熟の遅れとは、思春期の始まりと性器の発達が遅れることをいいます。

脳の一部である視床下部が、脳の別の部分である脳下垂体に化学信号を送ったときに、性的成熟は始まります(思春期)。この信号は脳下垂体に性器(男子では精巣、女子では卵巣)の成長を促す「ゴナドトロピン」というホルモンを出すよう伝えます。これらの器官が成長すると、テストステロン(男子)やエストロゲン(女子)などの性ホルモンを分泌します。この性ホルモンは、男女ともに陰毛とわき毛、男子にひげと筋肉、女子に乳房のふくらみなどの性的特徴と、性的願望(性欲)の発達を引き起こします。

青年期の若者の中には、通常の年齢で性的発育が始まらない者もいます。遅れていてもまったく正常で、遺伝的に性的成熟が遅い傾向にある場合もあります。このような若者は、思春期前の成長率は普通正常で、そのほかの点では健康にみえます。成長が加速される時期と性的成熟が遅れていても、いずれは正常に発達します。

性的成熟は、糖尿病、炎症性腸疾患、腎臓病、嚢胞(のうほう)性線維症、貧血などのさまざまな病気が原因で、遅れたり止まったりすることがあります。放射線療法や癌(がん)の化学療法を受けたことが原因で、遅れることもあります。特に女子は、過度な運動や過激なダイエットのために性的成熟が遅れることがよくあり、無月経などが起こります。

性的成熟の遅れの原因として、まれにみられるものもたくさんあります。染色体異常(女子のターナー症候群(染色体異常と遺伝性異常: ターナー症候群を参照)や男子のクラインフェルター症候群(染色体異常と遺伝性異常: クラインフェルター症候群を参照)など)やそのほかの遺伝性疾患は、ホルモンの産生に影響します。脳下垂体や視床下部に損傷を与える腫瘍(しゅよう)は、ゴナドトロピン量を低下させたり、このホルモンの産生を止めてしまうことがあります。おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は精巣に損傷を与えて、思春期の始まりを妨げることがあります。

症状と診断

男子では、性的成熟の遅れを示す症状として、13歳半までに睾丸が大きくならない、15歳までに陰毛が生えない、性器が大きくなり完全に成長するまでに5年以上かかる、などがあります。女子では、性的成熟の遅れを示す症状として、13歳までに乳房がふくらみはじめない、乳房がふくらみはじめてから初潮がくるまでに5年以上かかる、14歳までに陰毛が生えない、16歳までに初潮がこない、などがあります。身長が低いこと(低身長)は、男女ともに成熟の遅れを示している場合があります。

青年期の若者は仲間と違うことに気まずさを感じるのが普通ですが、特に男子は思春期の遅れに対し、心理的ストレスや恥ずかしさを感じやすい傾向にあります。女子は友人より小柄で性的成熟が遅れていても、すぐには非難されません。

青年期の若者が健康でどんな病気の徴候もみられず、加えてほかの家族に成熟が遅い傾向がある場合は、精密検査の実施を6〜12カ月待つことがあります。その後、骨の成熟を調べるためにX線検査を行います。骨の成熟が遅れている場合は、全体的な発育の遅れだと考えられます。骨が年齢相応に成熟している場合は、性的成熟が遅れている可能性があります。その場合は、さまざまなホルモンのレベルを調べるための血液検査と、糖尿病や貧血など性的成熟を遅らせる原因となる病気の検査を行います。染色体を分析することもあります。CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査で、脳腫瘍の有無を確認することもあります。

治療

性的成熟の遅れに対する治療は、その原因ごとに異なります。慢性疾患が原因の場合、それを治療すると成熟が進みます。発達が自然に遅れている場合は、治療は必要ありませんが、青年期の若者が成熟の遅れを非常にストレスに感じていたり、遅れの度合いが著しい場合は、成熟を促す性ホルモンを投与することがあります。遺伝性疾患は治療できませんが、ホルモン補充をすると性的発育に役立つことがあります。腫瘍がある場合は、手術が必要です。

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