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リウマチ熱

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リウマチ熱とは体の器官系、特に関節と心臓に起こる炎症で、レンサ球菌によるのどの感染症の合併症として起こります。

リウマチ熱はレンサ球菌感染症の後に起こりますが、感染症ではありません。むしろ、感染症に対する炎症反応です。リウマチ熱にかかった人の大半は回復しますが、少数の人では心臓が永久的な損傷を受けます。

米国では、4歳以前の子供と18歳以降の人にはリウマチ熱はほとんどみられず、開発途上国に比べるとかなり頻度は低くなります。これはおそらく、早い段階でレンサ球菌感染症の治療に広く抗生物質が使われているためです。しかし、リウマチ熱の発生率が特定の地域でときに増減することがあり、その理由は不明です。過密な住環境がリウマチ熱のリスクを高めるようであり、遺伝的要因もかかわっているようです。米国では、のどのレンサ球菌感染症にかかっている子供が治療を受けなかった場合、リウマチ熱を発症する可能性はわずか0.4〜1%です。過去にリウマチ熱にかかったことがある子供の約半数は、再びのどのレンサ球菌感染症にかかり、リウマチ熱を再発します。リウマチ熱はのどのレンサ球菌感染症に引き続いて発症しますが、皮膚(膿痂疹)や体のそのほかの部位のレンサ球菌感染症の後には起こりません。この理由は不明です。

症状

リウマチ熱は関節、心臓、皮膚など体のさまざまな部位を侵します。リウマチ熱の症状は多岐にわたり、体のどの部位に炎症が起きたかによって異なります。典型的には、レンサ球菌咽頭炎が治まった数週間後に症状が始まります。リウマチ熱で最もよくみられる症状は、関節痛、発熱、心臓の炎症により生じる胸痛や動悸(どうき)、けいれん的な不随意運動(シデナム舞踏病)、発疹、皮下のこぶ(小結節)などです。子供では症状が1つから複数みられます。

関節痛と発熱は、最もよくみられる最初の症状です。1つあるいは複数の関節が突然痛み出して、触れると痛みがあります。それらの関節は赤くなり、熱をもち、腫れたり、中に液体がたまることもあります。足首、膝(ひざ)、ひじ、手首によく症状が現れます。肩、股関節(こかんせつ)、手と足の小関節も侵されます。1つの関節の痛みがよくなると、ほかの関節が痛みだします(移動性関節痛)。関節痛は軽度から重症まであり、普通は2〜4週間続きます。リウマチ熱による長期的な関節の損傷は起こりません。

ときどき、心臓に炎症を起こした子供に何の症状も現れないことがあり、何年もたってから心臓の損傷が見つかったときに、過去の炎症に気づく場合があります。心臓の鼓動が速くなったと感じる子供もいます。心臓の周囲にある嚢の炎症により胸痛が起こる者もいます。心不全を発症して、吐き気、嘔吐、胃痛、しきりに出る空せきを伴う疲労感と息切れが現れる子供もいます。

心臓の炎症は普通は5カ月以内に徐々に消えます。しかし、心臓の弁に永久的な損傷が残ることがあり、リウマチ性心疾患が生じます。リウマチ性心疾患を発症するかどうかは、最初に起きた心臓の炎症の程度によります。リウマチ性心疾患を発症する割合は、心臓の炎症がなかった人で約1%なのに対し、軽度の炎症があった人では30%、重度の炎症があった人では70%です。リウマチ性心疾患では、左心房と左心室の間の弁(僧帽弁)が最もよく損傷されます。この弁が漏れやすくなったり(僧帽弁逆流)、異常に狭まったり(僧帽弁狭窄)、あるいは両方が起こったりします(心臓弁障害: 僧帽弁逆流を参照、心臓弁障害: 僧帽弁狭窄を参照)。弁の損傷は特徴的な心雑音を生じさせ、これがリウマチ熱の診断を可能にします。通常、中年期になると、弁の損傷が心不全(心不全を参照)や不整脈の1種である心房細動(不整脈: はじめにを参照)を引き起こすことがあります。

そのほかの症状が軽快するにしたがって、波打ったような辺縁をもつ平らで痛みのない発疹(輪状紅斑)が現れます。この発疹はごく短い間だけ存在し、1日たたないうちに消えることもあります。心臓に炎症を起こしている子供では、皮下に小さくて硬い結節ができます。この結節は通常痛みを伴わず、治療をしなくても消失します。

リウマチ熱の子供には、けいれん性の不随意運動(シデナム舞踏病)が徐々に現れることがありますが、普通はほかのすべての症状がよくなった後にのみ始まります。この不随意運動が強くなって子供が受診するようになるまで、1カ月ほどかかることがあります。そのころまでに典型的には、子供は速くて無意味な散発的に起こる体の動きが生じていますが、これは睡眠中には起こりません。この運動は、眼の筋肉以外のすべての筋肉に起こる可能性があります。顔をしかめる動きがよくみられます。軽度の例では、子供は不器用であるかのようにみえ、服を着たり食事をしたりするのにやや困難を感じるようになります。症状がひどい場合は、子供が腕や脚をぶつけてけがをしないように保護する必要があります。この舞踏病は4〜8カ月間続きます。

診断

リウマチ熱の診断は、主に特徴的な症状の組み合わせに基づいて行います。血液検査で、レンサ球菌に対する抗体量が多い場合は診断の参考になりますが、この抗体はリウマチ熱でない子供の多くに少量存在します。心電図(ECG:心臓の活動電位の記録)検査では、心臓の炎症が原因で起こる心リズムの異常がわかります。心臓の弁の異常を診断するため、心臓超音波検査(心エコー:超音波による心臓の構造物の画像)検査を行うこともあります。

予防と治療

リウマチ熱を予防するのに最適な方法は、レンサ球菌によるのどの感染症を抗生物質で迅速かつ完全に治療することです。さらに、過去にリウマチ熱を経験している子供の場合は、もう一度レンサ球菌感染症にかかるのを予防するために、ペニシリンを経口で毎日投与するか、または筋肉注射で毎月投与します。この予防的治療は成人するまで継続する必要があり、生涯続けるべきだと考えている医師も一部います。

リウマチ熱の治療には3つの到達点があります。1つ目は治っていないレンサ球菌感染症を治すこと、2つ目は炎症を軽減すること(特に関節と心臓の炎症)、3つ目は炎症を起こした組織をさらに悪化させるような体の活動を制限することです。

リウマチ熱の子供には、治っていない感染症を根治するために長時間作用型のペニシリンの注射をします。また、特に炎症が関節と心臓に達している場合は、炎症と痛みを軽減するために高用量のアスピリンを投与します。ほかの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がアスピリンと同等の効果をもつかどうかはわかっていません。コデインなどの鎮痛薬をアスピリンに加えて使うこともあります。心臓の炎症が重症の場合は、炎症をさらに軽減するため、プレドニゾロンなどのステロイド薬を投与します。

安静にすることが、痛みと炎症を起こしている関節に負荷がかかるのを防ぐ場合があります。心臓が炎症を起こしている場合は、より安静にしていることが大事です。

心臓の弁が損傷している場合は、生涯にわたって心臓の弁の感染症(心内膜炎)を発症するリスクがあります(感染性心内膜炎を参照)。心臓に損傷がある人は、歯科手術を含めどんな手術であっても、それを受ける前に必ず抗生物質を服用しなくてはなりません。これは成人になっても同様です。

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