メルクマニュアル家庭版
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尿路感染症

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尿路感染症(UTI)とは、膀胱(ぼうこう)の細菌感染症(膀胱炎)、または腎臓の細菌感染症(腎盂腎炎[じんうじんえん])のことです。

尿路感染症は子供によくみられます。ほとんどすべての尿路感染症は、尿道口から侵入して、さらに膀胱やときには腎臓まで上がってきた細菌によって起こります。乳児の場合、男児の方が尿路感染症を起こしやすい傾向があります。乳児期以降は、女児の方がずっと尿路感染症を起こしやすくなります。尿路感染症が女児に多くみられるのは、尿道が短く細菌が侵入しやすいためです。割礼を受けていない男の乳児(包皮の下に細菌がたまりやすい)や重い便秘がある幼児も、尿路感染症にかかりやすくなります。

小学校高学年から青年期にかけての尿路感染症は、成人の尿路感染症(尿路感染症: はじめにを参照)とほとんど変わりません。しかし、月齢の低い乳児や小児の尿路感染症は、泌尿器系にさまざまな発達異常がある場合が多く、これが尿路感染症にかかりやすくしています。このような異常には、膀胱尿管逆流(腎臓と膀胱を結ぶ管の異常で、尿が膀胱から腎臓に逆流する)など、尿の流れを阻害するさまざまな状況があります。これらの異常は、尿路感染症がある新生児と乳児の50%、尿路感染症がある学童の20〜30%にみられます。

尿路感染症にかかっている乳児と園児の65%までが膀胱と腎臓の両方に感染症があり、特に発熱を伴う子供にこの傾向があります。腎臓が感染し、重度の逆流現象がある場合、50%までの子供で腎臓の一部が瘢痕化(はんこんか)します。尿の逆流がほとんど、あるいはまったくない場合は、腎臓の瘢痕化が生じる子供はほとんどいません。瘢痕化すると成人期になって高血圧や腎機能の低下を招くことがあるため、瘢痕化は懸念事項の1つです。

症状と診断

尿路感染症の新生児と乳児は、熱以外には症状がないことがあります。ほ乳の不良、不活発(嗜眠[しみん])、嘔吐、あるいは下痢がみられる場合もあります。年長の小児で膀胱の感染症がある場合は、普通、排尿時に痛みや焼けつくような感覚がある、排尿頻度が増す、膀胱近辺に痛みがあるなどの症状が現れます。腎臓に感染症がある子供では、侵された腎臓の側のわき腹や背中に痛みがあり、発熱、全身のだるさ(けん怠感)などが現れるのが典型的です。

尿路感染症の診断では、尿の検査を行います。トイレの訓練ができている子供の場合は、尿道口をくまなく清潔にした後でコップの中に排尿させ、尿サンプルを採取します。幼児と乳児の場合は、滅菌した細くて柔軟性のある管(カテーテル)を尿道口から膀胱に入れて尿を採取します。乳児の場合は、恥骨の上の皮膚を通して針を挿入し、膀胱から尿を採取することもあります。子供の性器周辺に装着したビニール袋の中に集めた尿は、皮膚に付着している細菌やそのほかの物質で汚染されていることが多いため、役に立ちません。

尿路感染症では尿の中に白血球や細菌がみられますが、それらを検出するため尿を顕微鏡で調べ、数種類の生化学検査を行います。尿中に存在する細菌を増やし、特定するために、尿の培養検査も行います。培養検査はこれらの検査の中で最も重要です。

一般に、すべての年齢の男児と2〜3歳未満の女児で、1回でも尿路感染症にかかったことのある子供は、泌尿器系の構造異常を調べるための検査が必要です。年長の女児でも、感染症を繰り返す場合はこのような検査を行います。検査には、腎臓の異常と閉塞を調べるための超音波検査と、腎臓、尿道、膀胱の異常をさらに調べるための排尿時膀胱尿道造影があります。排尿時膀胱尿道造影では、尿の部分的な逆流がいつ起こるかも確認することができます。排尿時膀胱尿道造影では、カテーテルを尿道から膀胱へと挿入し、カテーテルを通して造影剤を入れてから排尿前と排尿後にX線撮影をします。もう1つの検査として、放射線コントラスト膀胱尿道造影があります。これは排尿時膀胱尿道造影と似ていますが、膀胱に放射性物質を入れて、核医学画像検査装置で画像を撮る点が異なっています。この方法では、子供の卵巣や精巣がさらされる放射線の量が排尿時膀胱尿道造影よりも少なくてすみます。しかし、X線輝度膀胱尿道造影では構造物の輪郭がよく撮れないので、尿逆流の初期診断よりも、尿逆流の治癒過程の追跡に有用です。腎盂腎炎の診断を確定したり、腎臓の瘢痕化を調べるためには、別のタイプの核医学検査を行うこともあります。

予防と治療

尿路感染症の予防は困難ですが、衛生状態を適切に保つと役立ちます。女児には、尿道口に細菌が侵入する機会を最小限にするため、排便後は前から後ろ方向(後ろから前ではなく)に向かってふくように教えなくてはいけません。尿路感染症にかかるリスクのある男児も女児も頻繁にバブルバスでの入浴をすると、尿道口付近の皮膚に刺激となります。男児の割礼は、幼児期に尿路感染症にかかるリスクを約10分の1に減らしますが、これだけで割礼をするための十分な理由になるかどうかは不明です。規則正しい排尿と排便は、尿路感染症のリスクを減らします。

尿路感染症のある子供には抗生物質を投与します。容体がかなり悪い子供とすべての新生児には、抗生物質を筋肉内注射か静脈内注射で投与します。そのほかの子供には抗生物質を経口投与します。治療は通常7〜14日間続けます。発達異常の診断をするために検査を受ける必要がある子供は、しばしば検査が終わるまで低用量の抗生物質による治療を続けます。

尿管に構造上の異常がある子供の一部は、それを治すための手術が必要となります。そのほかの子供は、感染症予防のため抗生物質を毎日服用する必要があります。軽度の異常の一部は自然になくなるので、治療は必要ありません。

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