メルクマニュアル家庭版
印刷用画面

セクション

ポリオ

-
-

ポリオ(急性灰白髄炎)は非常に感染性が強く、ときには致死的なウイルス感染症で、神経を侵して永久的な筋力低下や麻痺、ほかの症状を引き起こします。

ポリオはエンテロウイルスの1種であるポリオウイルスにより引き起こされ、このウイルスに汚染されたものを飲みこむことによって広がります。この感染症は、腸から筋肉を制御する脳や脊髄の部分へと広がります。

20世紀初期に、ポリオは米国全土に広がりました。今日では、予防接種が広く行われているため、ポリオの突発的な流行はほとんど起こらなくなり、新たなポリオ感染症を一度も診たことのない医師が大半になりました。米国で野生のポリオウイルスによる感染症が最後にみられたのは1979年でした。西半球では、1994年にポリオの根絶を認定しています。世界的なポリオ根絶プログラムは現在も進行中です。免疫がないどの年齢の人も、ポリオにかかる可能性があります。過去には、ポリオの突発的な流行は主に子供と青年期の若者の間で起きましたが、それは多くの年長の人々がすでにこのウイルスにさらされたことがあり、免疫があったためです。

症状と診断

何らかの症状が現れるのは、感染した人100人のうち1人未満です。症状がある人の中で80〜90%は、発熱、軽い頭痛、のどの痛み、全身のだるさ(けん怠感)などにとどまります。このように軽症の場合は、24〜72時間のうちに完全に回復します(訳注:小ポリオ)。残りの10〜20%の人では、それより症状が重くなります(大ポリオ)。大ポリオは年長の小児と成人に多い傾向があります。症状は通常感染の7〜14日後に現れ、発熱、激しい頭痛、首と背中のこわばり、筋肉の深部痛などが生じます。ときどき皮膚の一部に異様な感覚が現れ、ピンや針で刺されたように感じたり、痛みに極度に敏感になったりします。脳と脊髄のどの部分が侵されたかによって、病気はそれ以上進行しないこともありますが(訳注:非麻痺型大ポリオ)、特定の筋肉に脱力や麻痺が現れることもあります(訳注:麻痺型大ポリオ)。そのような人は、ものを飲みこむのが難しくなったり、唾液、食物、液体がのどに詰まったりします。ときには液体が鼻の中にまで上昇し、鼻にかかったような声になることもあります。またときには呼吸をつかさどる脳の部分が侵されて、胸の筋肉の脱力や麻痺が起こることもあります。まったく呼吸ができなくなる人もいます。

医師はその症状からポリオを診断することができます。便のサンプルの中にポリオウイルスを検出したり、このウイルスに対する血液中の抗体価が高い場合は、診断が確定します。

予防

ポリオワクチンは、小児期の定期接種の中に含まれています(乳児と小児の予防接種スケジュールを参照)。世界的に2種類のワクチンが利用できます。1つは注射で投与する不活化ポリオウイルスワクチン(ソークワクチン)で、もう1つは経口で投与するポリオウイルス生ワクチン(セービンワクチン)です。経口生ワクチンの方が免疫がよくつきますが、子供240万人に約1人の割合で、突然変異を起こしてポリオを引き起こします。米国では、生きているポリオは根絶されたので、子供には注射用のワクチンしか勧めていないため、このようなことは非常にまれです。世界のほかの場所では、局所的な流行の際に免疫のない人に対する迅速な治療のために経口ワクチンが使われています。

米国では、成人がポリオにかかるリスクは非常に低いため、18歳より上の人が初めてワクチン接種を受けることは通常は勧められていません。成人で今まで予防接種を受けたことがない人や、ポリオにかかる危険が依然ある地域に旅行する人は、予防接種を受けるべきです。どの地域にポリオが存在しているかについては、地方自治体や国の保健局が情報を提供しています。

治療と経過の見通し

大ポリオの約50%の人は、麻痺を起こさずに回復します。残りのうち25%では軽度の永久的な障害が、あとの25%では永久的な重症の麻痺が残ります。一部の小児では、明らかに完全に回復していても、発病から15年やそれ以上たってから筋力低下が再び現れたり、悪化したりすることがあります。このような状態(ポリオ後症候群)では、重い障害がしばしば残ります(末梢神経の障害: ポリオ後症候群を参照)。

ポリオは治すことができず、既存の抗ウイルス薬も病気の経過に影響を与えることはできません。呼吸に使う筋肉の筋力低下がある場合は、人工呼吸器が必要となる場合があります。人工呼吸器が必要となるのは、だいたい一時的です。

個人情報の取扱いご利用条件